僕のことを話そう~三遠ネオフェニックス 鈴木達也
選手が自分のことばで自分自身について語る『僕のことを話そう』~シリーズ4人目は三遠ネオフェニックスのポイントガード鈴木達也だ。負けん気の強さはチーム随一、縦横無尽にコートを走り回り、味方を生かす的確なアシストパスと勝負強いここ1本のシュートでチームをB.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2016-17への出場に牽引した。169cmの身長を言いわけにしない頼れる男。ネオフェニックスの小さな闘将が語る『自分にとってのバスケット』とは?
取材・構成◎Takami Matsubara
■ 同じ方向を向いている。
NBLとbjリーグがやっと1つになってB.LEAGUEが発足すると聞いたときはすごくうれしかったです。ただ正直に言えば、始まる前まではbjリーグよりNBLのレベルの方が高いと思っていたので若干の不安はありました。関東大学リーグ1部でもエースと言われる選手たちはみんなNBLに行くのがあたりまえという感じだったし、それだけ見てもレベルはNBLの方が高い気がしました。多分そう思ってる人は僕だけじゃなかったと思います。でも、B.LEAGUEが開幕していざ戦ってみると、川崎(ブレイブサンダース)に連勝していいスタートを切れたこともありますが、勝負できる手応えを感じられてそれが自信にもなりました。確かにフィジカルの強さとか、サイズの大きさはNBLの方が(bjリーグより)勝っていたかもしれませんが、それ以外の面でうちが勝負できるところはあると感じたんです。たとえばコーチ陣の戦略、戦術、選手のディフェンスの遂行力、勝ちにいくんだという強い気持ち、そういったものはどこにも負けていません。なによりうちはチーム全員が同じ方向を向いている。それが最大の強みだと思っています。
■ 自分の役割
僕の持ち味は速い展開のバスケットを演出することです。そのために必要なのはまずディフェンスを頑張ること。食らいつくディフェンスは学生時代からずっと意識してやってきました。身長が低い分、動いて、粘って、走る。自分のプレーでチームにエナジーを与えたいし、それは自分の役割でもあります。それと今課題にしているのは『ツーポイントの確率を上げる』ことです。ピック&ロールからのジャンプシュートやレイアップシュートの状況判断がもっと良くなれば選手としてもう一段上に行けると思うので、練習でも積極的に取り組んでいます。
■ 苦労しながら学ぶことは多い
当然ですけど楽な試合はないですね。特に今上位にいる4チーム~6チームは高さがあり、身体のぶつかり合いにも強いので毎回苦労しています。でも、苦労して戦いながら学べることはたくさんありますよ。たとえば田臥(勇太・栃木ブレックス)さんとマッチアップしたときはやっぱりうまいなあと思いました。ゲームをクリエイトする力というか、プレーの組み立て、選択、判断、どれをとってもさすがだなあと思います。でも、それも実際に戦ったからこそ実感できたことで、同じコートの上に立たないとわからないことじゃないですか。そういう意味でもB.LEAGUEという新しい舞台は自分にとってプラスになっていますね。いい経験が積めていると思います。
■ 好きなもの、苦手なもの
好きな食べ物は迷うことなく寿司です!どんなネタでも好きですね。季節は暑くもなく、寒くもない秋がいい。好きな色は「チームカラーのフェニックスレッドです!」と答えなきゃいけないところですが、実は青が好きです。一番ホッとする時間はチームメイトとしゃべっているときかなあ。話の内容はいつも他愛ないものですが、そういうどうでもいいことをあーだこーだと話している時間が楽しいですね。うちにはいいキャラの人がいっぱいいて、いつも笑わせてもらっています。中でも鹿野(洵生)さんの存在は際立ってますね。なんせ自分から進んでいじられにいく人ですから。いじられてもいいから笑いを取ろうという姿勢がすごいです(笑)。1人でいるときはなにしてるかなぁ。取り立てて趣味と呼べるものはないんですよ。ただ映画は結構見ますね。アニメ系が多くて、お気に入りは『はじめの一歩』です(笑)。苦手なものはなんだろう。パッと思いつくのはセロリ。あと寒いのも嫌いですね。三遠に移籍して、引っ越してきたときは「あったかい所で良かったぁ」と思いました。温暖な気候の土地で暮らしていると性格もおっとりすると言いますが、それは当たっているかもしれませんね。代表例としてはアツさん(太田敦也)を挙げておきます(笑)。
■ サイズに負けたくない!
僕がバスケットを始めたのは小学2年生のときで、ミニバス(クラブ)の練習がない日でも学校で友だちとバスケをするぐらい熱中してました。中学、高校とバスケを続け、大学では関東1部の拓殖大でプレーしましたが、そのときはまだプロ選手になるということは考えてなかったです。心のどこかに「169cmでは厳しいかな」という思いがあったのかもしれません。だから、卒業後は会社員としてバスケットを続ける道を選んだんですが、すぐに後悔しました。やっぱり自分はバスケットを中心とした生活がしたいという気持ちが膨らんで、そのとき、初めてプロを目指す覚悟ができました。それでbjリーグのトライアウトを受けて、そこからプロ選手としての生活が始まったわけです。ああ、もっと身長があったらなぁと思ったことはありますよ。特に大学に入ったころは周りにでかくて能力がある選手がいっぱいいたので、それがすごくうらやましかったです。でも、いくら身長が欲しくてもないものはしょうがない(笑)。自分はこのサイズで勝負するしかないと決めたときから、小さくてもでかい選手を上回るパフォーマンスするためには何が必要かを考えるようになりました。バスケットをやるにはサイズがあるに越したことはありません。同じレベルの選手ならサイズがある方がいいに決まってます。けど、それはあくまで『同じレベルなら』です。ならば自分はその上のレベルを目指そうと思いました。小さくてもあいつを使いたい、あいつなら任せられると思ってもらえる存在になりたかったです。今の自分は選手としてまだまだ足りないものがたくさんありますが、それでもB.LEAGUEのコートに立って戦い、今年は日本代表候補重点強化選手にも選んでもらいました。だから、今、身長が低くて悩んでいる中高生の選手たちには「あきらめるな」と言いたいですね。小さくても自分を生かす道は必ずあると信じて頑張ってほしいです。それに小さいことは悪いことばかりじゃないですよ。僕は「でかいやつらに負けたくねー!」といつも思ってやってきたせいで人一倍負けん気が強くなりました(笑)。169cmの身長が強いメンタルを育ててくれたような気がします。
■ 優勝するチャンスはあると信じている
B.LEAGUEの初代王者、なりたいですねぇ。てっぺんまで上りたいです。チャンピオンシップ出場を決めた他のチームには日本を代表する選手が多くいますし、正直個々のタレント性ではうちは若干劣るかもしれません。けど、うちにもインパクトがある外国人選手がいるし、シュート力がある選手もたくさんいます。さらに全員に共通しているのは『チームとして頑張れる』ということです。よくチャンピオンシップ(プレーオフ)はレギュラーシーズンとは別の舞台だと言いますが、まさにそのとおりで一発勝負の戦いには何が起こるかわかりません。うちにも優勝のチャンスは十分あります。さっきも言った『全員が同じ方向を向いている』のが、うちのチームの誇れるところでもあり、僕はそんなチームでプレーできていることを幸せだと思っています。ほんとにこのチームが大好きなんですよ。だから、最後はみんなといっしょに笑いたい。優勝できたら泣いちゃうかもしれないけど、みんなで泣きながら笑えたら最高ですね。その場面を想像したらさらなる闘志が湧いてきます。