僕のことを話そう~シーホース三河 比江島慎
選手が自分の言葉でクラブのこと、B.LEAGUEのこと、自分自身のことを語る連載第3弾は、3月26日にB.LEAGUE B1 西地区優勝を決めたシーホース三河の比江島慎選手に登場してもらった。「口下手なので話すことは本当に苦手」という比江島選手だけに、1つの質問に「う~ん」と考える時間は長い。だが、それはちゃんと自分のことばで伝えようとする誠実な「う~ん」のように感じられた。笑顔があふれた『自己分析』から表情が引き締まった『大きな目標』まで、ことばを選びながらていねいに『自分の今』を語ってくれた。
取材・構成◎Takami Matsubara
■ 戦うことで甦った『シーホースのバスケット』
正直、B.LEAGUE開幕当初はチームとして噛み合っていない部分も多かったと思います。主力の何人かが(日本)代表に選ばれていて、チームを離れる時間が長かった影響もあるかもしれません。それぞれ気を抜いているわけではないのに、どこかちょっと自分の役割を忘れて空回りしちゃっているようなところがありました。でも、一試合一試合戦っていく中でだんだん自分たちのバスケットを思い出してきて、うちらしい戦いができるようになっていった気がします。その結果として西地区1位を獲得できたのはよかったです。僕個人について言えば、もちろんいいときも悪いときもありますが、たとえばオフェンスが今ひとつでもその分ディフェンスで頑張るとか、悪いときは悪いときなりに自分の役割を考えてプレーできているので、そこはまあいいんじゃないかと(笑)。座右の銘っていうほど大げさではないですが、僕がいつも心がけていることは『冷静沈着』で、どういう場面でも冷静な判断ができることを目指しています。その部分は自分でも少しは成長できているかなと思っていますが、どうでしょう。これは今後も変わることなく自分の課題にしていくつもりです。
■ 頼りになる新しい仲間
今シーズン、うちには狩俣(昌也)さん、森川(正明)という新しいメンバーが加わりました。2人ともすぐにチームに溶け込んでいい仕事をしてくれています。中でも狩俣さんは苦労人というか、これまでいくつかのチーム(千葉ジェッツ→琉球ゴールデンキングス→福島ファイヤーボンズ)でプレーしてきた経験値を持った選手です。足も速いし、ディフェンスも抜ける。今、ポイントガードの(橋本)竜馬さんがケガで試合に出られない状況ですが、それをしっかりカバーしてくれているのが狩俣さんで、もともとあった実力を発揮するチャンスを得て、それに応える活躍をしているという感じです。リーグ戦は長いので、当然途中でケガ人が出ることもありますが、それをみんなでどれだけカバーして戦えるのか、そこで試されるのがチーム力ですよね。狩俣さんがそうであるように、代わりに出る選手が自分のチャンスだと思って力を発揮できればケガした選手が復帰したときチームの層は前より厚くなるはずです。竜馬さんの離脱が大きな痛手であることには違いありませんが。それをみんなで『マイナス』にしないよう頑張れば、違う意味での『プラス』が生まれると思っています。
■ 好きなもの 苦手なもの
好きな色はいっぱいあって1つを選ぶのは難しいけど、そうですね、う~ん、1番と言われれば青かなあ。好きな季節は春か夏。自分は8月生まれなのでここはやっぱり夏にしときます。寒い季節が嫌いなわけじゃないですよ。でも、夏は服も簡単でいいし、あんまり考えなくてもいいじゃないですか。面倒くさくないのがいい(笑)。好きな食べ物はチキン南蛮とカレー。これはいつも言ってますから結構知られてますね。ほんとに好きなんですよ。嫌いな食べ物はアレルギーがある甲殻類は別として、う~ん、これといってないですね。強いて言えばレーズンぐらいかなあ。苦手なものは細かく言えばいろいろありますけど、たとえばゴキブリが嫌いだとか。でも、ゴキブリを好きな人っていませんよね(笑)。苦手なもの…苦手なものってなんだろう。高い所も平気だし、絶叫マシーンも好きだし、う~ん、特にこれがダメっていうのはないかもしれません。わりとなんでも大丈夫です。あっ、待ってください。ありました!初めて会う人と話すのが苦手です。めちゃくちゃ人見知りなので初対面の人と話すのはいつも緊張します。インタビューでも普通に話すだけならまだいいんですが、カメラが回っていたりするとダメですね。ガチガチになります。考えてみたらこれが僕の1番苦手なことですね。間違いありません。
■ 26歳にしてガキンチョ
自分の性格を一言でいえば『大ざっぱ』です。めんどくさがり屋だし、ガキンチョです。『天然』だと思っている人もいるみたいですが、天然ではないですね。ただ単に精神年齢が低いだけです(笑)。口下手なのであまりしゃべらない印象があるかもしれませんが、別に暗いわけではないですよ。そりゃ落ち込むこともありますし、1人であれこれ考え込むこともありますが、たいてい一晩寝れば切り替えられます。一番楽しいなあと思う時間はほんとに仲がいい友だちと会ってわいわいやっているときですね。よくインタビューで「趣味はなんですか?」と聞かれるんですが、僕にはほんとに趣味がないんです。だから、1人でいても何かに没頭するということもないし、友だちと過ごす時間が一番ホッとします。こういう性格なのでイジられもしますけど、それもまた楽しいです(笑)。
■ 自分の武器となるもの
よく「比江島の動きは独特だ」とか言われますが、プレーのリズムが独特であることは自覚しています。それをことばで説明しろと言われてもうまく言えませんが、少なくとも学んで身に付けたものではなくて、『天性』なんていうとかっこよすぎますが、多分そういったものなんじゃないかと自分では思っています。それを活かした1対1は自分の得意分野だと思うし、自分の武器となるものなので、やっぱり誰にも負けたくありません。B.LEAGUEが始まる前から楽しみにしていたのはアルバルク東京との対戦なんですが、その理由の1つは(ディアンテ)ギャレット選手とマッチアップできることでした。ギャレット選手も独特のリズムを持った選手ですよね。それだけではなくて全ての技術にさすがと思わせるものがあって勉強にもなったし、同時に闘志も湧きました。外国人選手と言えばほとんど4番、5番のポジションの中、ギャレット選手の存在は貴重だし、マッチアップできるのはすごくありがたいことだと思っています。
■ 2020年を視野に入れて
僕の大きな目標は2020年の東京オリンピックに出場することです。これはもうほんとに、必ず、絶対出たいと思っていて、そのためにはどんな努力も惜しまない覚悟があります。あと3年ですよね。日本が出場できるかどうかはこれからにかかっていますが、とにかく出場権を勝ち取れるよう、そのチームの中で自分が必要な存在になれるよう頑張るのみです。B.LEAGUEというのは自分が成長できる大切な場所だと思っているので、まずはそこで100%の力を出し切って優勝すること。NBLのラストシーズンに大逆転負け(ファイナルで東芝ブレイブサンダースに2勝して王手をかけた後、3連敗を喫した)した苦い経験があるので、最後まで気を引き締めて戦い抜きたいです。リーグ全体を見ると、今シーズンは(力的に)抜けているチームがなくて横一戦という感じがします。それだけどこにでも優勝するチャンスはあるということ。でも、そのチャンスをものにするのはうちです。最後に笑うのはうち、シーホース三河だと信じています。