僕のことを話そう~アルバルク東京 田中大貴
選手が自分の言葉でクラブのこと、B.LEAGUEのこと、自分自身のことを語る連載、2番目の登場は激戦区と言われる東地区でトップを争うアルバルク東京の田中大貴選手だ。プロ選手となって3年、今ではアルバルク東京の揺るぎないエースとなった彼がこれから目指すもの、そして、意外な素顔とは?
取材・構成◎Takami Matsubara
■ 現在のチーム状況
2月に外国籍選手が2人入れ替わりましたが、新しく加入したジェフ・エアーズ、トレント・プレイステッドはともにとてもいい選手です。中でもNBAでプレーしていたジェフにはリーダーシップがあり、練習や試合を通して自分にも「ああしてほしい」「こうした方がいい」と声をかけてくれます。参考にもなるし、すごくありがたいですね。チームが劣勢になったとき、自分のことを考えながらチームを上げていく力が自分にはまだ不足しているので、そんなとき、正中(岳城)さん、(菊地)祥平さん、(竹内)譲次さんといったベテラン選手がチームを引っ張ってくれることにも助けられています。そうした力があるからこそ自分は結構好きにやらせてもらえてるというか。その分、プレーでしっかり応えたいという気持ちが強いです。今、チームの雰囲気はすごくいいし、(チームとして)もっとレベルアップしていける予感がします。
■ 変化したリーグ、変化した自分
バスケットボール界にとっては『B.LEAGUE発足』というのがなんといっても一番大きな変化ですが、その中で自分もまた変化しているという感覚はあります。アルバルクに入って3年目を迎え「自分がやらなきゃいけない」という意識が強まりました。負けた試合を振り返ると、どれも自分のパフォーマンスが良くなかったものばかりなんですね。もちろんチーム全体として見れば、たとえばディアンテ(ギャレット)がボールを持ち過ぎていたとか、ディフェンスのハードさが足らなかったとか、いろんな反省点はあると思いますが、敗因として共通するのは自分の不調です。「自分は好調なのに負けた」という試合は1つもありません。そういう意味でも自分はもっとやらなきゃいけない。同時にもっとやれるはずだと思っています。今シーズンは今まで以上にボールを要求し、ゴールにアタックしているのも自分の変化の1つ。言葉を変えれば成長かなあという気がします。
■ シャイだけど根は明るい!
自分の性格を自分で語るのは難しいですね。シャイなのは間違いないですが、いろんな取材を受けたり、いろんな経験をすることで、前よりは少し自分を出せるようになったのではないかと思います。コートの上でプレーすることだけが自分の仕事ではないし、自分の立ち位置とか役目とかそこから生まれる責任についても考えるようになりました。もともと暗い性格ではないんですよ(笑)自分では結構明るい人間だと思っています。ただ、初めての会う人の中に自分からバァーンと入っていくことは苦手なんですよね。自分から行けば周りは受け入れてくれるだろうというのはわかっているんです。わかってはいるんですけど、逆に「田中大貴だ」と構えて待ってられると余計行き辛いというか。勇気がないんじゃないですかね。慣れればなんともないんですが、そこまで行くのに臆病というか、そういうところに関しては自分、臆病者なんです(笑)。
あとは、そうですね。わりと几帳面な性格だと思います。朝、起きるとまず部屋の掃除をしますし、なんでもきちんと片づける方ですね。たとえば洗濯物を取り込んだとしたらすぐその場で畳んで片づける。後回しにすることはないです。使ったものは元の位置に戻すし、いつも同じものが同じ場所にあるので部屋の中に動きがない(笑)。あまり生活感がない部屋かもしれません。
■ 好きなもの、苦手なもの
好きな色は黒。赤も好きですが、やっぱり一番好きなのは黒で、着る物も身の回りのものも黒が多いですね。自分はなんでもシンプルなものが好きなので黒を選ぶことが多いです。好きな食べ物は肉と寿司。季節は暑くもなく、寒くもなく、食べ物がおいしい秋が好きです。あと好きなものは、うーん、故郷、長崎の稲佐山から見た夜景ですかね。すっごくきれいですよ。今も長崎に帰ったときはたまに見に行きます。お勧めです。
嫌いな食べ物はレバーとアボカド。あと高い所が苦手で、飛行機も極力乗りたくないですね。飛行機の移動があるときは仕方なく、いつもいやいや乗っています。
■ リラックスタイム
友だちとご飯を食べに行ってわいわいやるのも楽しいですが、やっぱり一番リラックスできるのはお風呂に入ってるときかなあ。お風呂の中で本を読んだり、NBAの動画を見たりするので毎日1時間近く入ってます。長いお風呂と出たあとのストレッチが日課ですね。本はわりと読みますよ。リクさん(東海大学・陸川章監督)の影響で斎藤一人さんとか松下幸之助さんとかの本をよく読んでいます。小説よりそうした自伝っぽいものが好きですね。生き方に共感するところがあるとすぐ影響されます。いいかもしれないと思うことはすぐに真似するタイプです。前はイチロー選手の朝カレー(イチロー選手の朝食が毎日カレーだという話)に影響されてしばらく朝はずっとカレー食べてましたもん(笑)
■ B.LEAGUE チャンピオンシップ 2016-17(以下、B.LEAGUE チャンピオンシップ)に向けて
現在東地区1位の栃木ブレックス、中地区1位の川崎ブレイブサンダース、西地区1位のシーホース三河、どれも強豪チームです。優勝するためにはこれらのチームを倒さなければならないわけですが、上のレベルの戦いになると個人技がどうこうではなく、やはりチーム力ですよね。その日、誰かがものすごく当たっていたりとか、そういうことも勝つ要素の1つかもしれませんが、確実に勝つのは40分間チームとして集中力を切らさず、自分たちのプレーを徹底できたチームだと思います。今年の天皇杯でうちはそれができず後半に失速しました。そのことはみんなわかっています。さっきも言ったように今のチームの雰囲気は本当に良くて「自分たちのスタイルを徹底して最後まで戦うんだ」という意識が固まってきました。優勝への手応えは十分あります。
■ これから目指すもの、これから目指す自分
まずはリーグ戦をしっかり戦うこと。もちろん最終目標は優勝ですが、それと同時にリーグ戦を戦いながら成長することが大事だと考えています。それはその後の(日本)代表活動にもつながっていくことですから。練習ではNBAから来た選手に認められたいという気持ちがありますね。たとえばジェフに「今日のプレーは良かった」と言われればやっぱりうれしいし、それがモチベーションにもなります。もっともっとうまくなって「こいつはやれる」と思われたい(笑)。初心に返ってというのはおかしいかもしれませんが、とにかく毎日フレッシュな気持ちで練習に取り組むことを大切にしています。残りのリーグ戦をしっかり戦うことは、B.LEAGUE チャンピオンシップに向けての『準備の積み重ね』だとも思うので、その先にある優勝を目指して全力を尽くすつもりです。