「社会を変革していく団体でありたい」、B.LEAGUE Hopeを行う理由 葦原一正(B.LEAGUE事務局長)
シーズンも後半戦に入り、さらに盛り上がりが増しているB.LEAGUE。リーグ最高勝率を巡るトップ争い、B1チャンピオンシップ出場権を巡るワイルドカード争い、B1残留プレーオフへの回避を巡る争い、B2プレーオフ進出をめぐる各地区での攻防など様々な見所があり、関心の高さは昨季に比べて観客動員数が大きく増加していることが何よりも示している。質の高いアリーナスポーツエンターテイメントを提供するため、リーグ、各チームは今も様々な創意工夫を行っているが、それと同時に力を入れているのが社会的責任活動だ。
B.LEAGUE Hopeと名付け、Planet(地球)、Peace(平和)、People(人類)と3つの領域を対象とするこのプロジェクトが、どんな経緯で生まれ、そしてどのような方向を目指しているのがB.LEAGUE事務局長である葦原一正に語ってもらった。
文◎鈴木栄一
「今回、いろいろな方のご協力のおかげでリーグの売り上げが向上しました。しかし、お金を稼ぐことは目的ではなくてあくまで手段です。日本代表や、各チームが強くなることも手段であって、目的とは違うと考えています。そしてとある人に『B.LEAGUEはどんな団体なの?』と聞かれた時、社会を変革していく集団でありたいと強く思いました」
「リーグにはそれぞれバスケットボール団体、スポーツ団体、公益法人としての使命があると思います。その中で我々としては、公益法人として社会課題に積極的に取り組んでいきたいという思いを強く持っています。また、選手たちが例えば寄付などを呼びかけると、やはり一般の人に比べると反響はとても大きいです。スポーツ団体の社会的責任といえば、地元の人たちとのふれ合いなどがよく取り上げられます。ただ、世の中にはいろいろな社会問題があり、スポーツの力によって少しは影響を与えることができるのではないか。リーグとして、世の中に自分たちの存在意義を出していきたいという思いがあります」
このように葦原は、B.LEAGUE Hopeが誕生した経緯について振り返る。さらに「この40年、50年の中でスポーツの価値は大きく変わってきていると思います。かつては贔屓のチームが試合に勝つことで喜びや嬉しいという勝ち負けの価値観があり、そこにエンターテイメント性、地域のチームと盛り上がるという価値観が加わりました。さらにB.LEAGUEではスポーツで社会を少しでも変えていける、という価値観を与えられるようになっていきたいです」と、スポーツ選手であり、スポーツが持つ力を社会に還元していきたいと語る。
B.LEAGUE HOPEの取り組みとして、すでに紹介しているがオールスターゲームでは小児難病を抱えている子供たちとその家族を紹介し、試合観戦に加え、選手たちとふれ合っていただいた。
こういった活動を通して葦原が感じたのは、周囲のポジティブな反応だ。「オールスターゲームでの活動は、あまり派手に打ち上げることもなく粛々と行いました。それでも周囲からいろいろな声が聞こえてきますので、こういうことを意識している方が多いと感じました。チームスタッフ、選手、パートナー企業さんに協力していただきましたが、みなさん新しいことを築いていこうというマインドが強く、予想以上に良い反響があったと思います」
これからについては、「社会的課題は星の数ほどあるなかで何を優先していくのか。具体的にクラブを巻き込んで何をやるのかは、今後の重要事項になります。ただ、実際にオールスターで取り組んでみた発見は、みなさん、こういった活動に好意的であること。クラブのみなさんは収益を上げることで大変なはずなのに、もっとやっていこうと言ってくれていることはとても嬉しいことです」と述べ、各チーム、選手たちの声を聞きながら進めていく考えだ。
葦原が強調するのは、あくまでリーグとして自分たちがやりたい活動を決め主体的に動くこと。「今までのスポーツ界では、どちらかというとスポンサーさんの意向に基づいての社会的責任活動が少なくなかったと思います。しかし、そうではなく我々のやりたいことが明確になり、そこに賛同していただくスポンサーさんを募って活動していくようにならなければだめだと思います。なぜなら、そうしないと活動の目的や大義がスポンサーさん依存になってしまい、自分たちに強い思いが不足しているので長く続いていかないことが多い。B.LEAGUE Hopeのような活動は永続性こそが一番重要だと考えています」
「スポンサーありきではなく、あくまで活動を行うスポーツ団体が強い意識をもって進めていき、その理念に賛同してくれたスポンサーさんが協力していく。この形をしっかり維持して進めていかなければいけないと思います。
そして、リーグとしては各チームの活動もしっかりとフォローして伝えいくことが大事と続ける。「大事なことは大義であり、過剰にPRすることなく粛々となっていくだけです。ただ、リーグとしても各チームが行っていく貢献活動をリーグとしてもしっかりクラブとリーグが一緒になって伝えていく。こういう活動は啓蒙活動でもあり、各チーム、選手たちが行っているものはうまくリーグのプラットフォームに載せて紹介していきたいです」
スポーツ界の枠を越え社会全体にポシティブな影響を与えていけるスポーツ団体になる。この強い理念を持ってB.LEAGUE Hopeはこれからも地道にコツコツと活動を続けていく。