劇的幕切れで初のCS進出「やっとここまで来れた」群馬を支えるトレイ・ジョーンズ
◆■価値ある連勝でクラブ初の悲願達成
スコアは81-81の同点。残り9.8秒からのラストプレーが、新たな歴史を切り開いた。
「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズン」のB1第35節、群馬クレインサンダーズは東地区王者の宇都宮ブレックス相手に2連勝。ブレックスアリーナ宇都宮での戦いを強いられながらも、自力で「りそなグループ B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2024-25」進出を決めた。
今シーズンの宇都宮は、ここまで同一カードでの連敗は敵地で行われた開幕節のみ。ホームでの連敗はなかった。GAME1はキャプテンの辻直人がチームに火をつけて16点差で快勝。CS出場までマジックを「1」として運命の第2戦に臨んだが、カイル・ミリングヘッドコーチは慎重だった。
「選手たちには、ブレックスのような相手に2連勝するのはすごく難しいことだと話をしました」
試合はGAME1と同様に好スタートを切り、第1クォーターで21-9と主導権を握った。しかし、終盤になるに連れてじわじわと差を詰められ、第4クォーター残り1分36秒にこの日初めてリードを許す。直後に辻の3ポイントで再び前へ出たが、残り9.8秒に同点弾を献上した。
ミリングHCは最後のタイムアウトを請求。選手たちへは「スコアをしてくれ」とシンプルに伝え、トレイ・ジョーンズにウィニングショットを託した。

決勝の3Pシュートを放つトレイ・ジョーンズ[写真]=B.LEAGUE
スローインからの最後の攻撃。細川一輝からリターンパスを受け取ったジョーンズは、3ポイントラインの外から迷いなくシュートを放ち、激闘に終止符を打った。見事に采配を的中させたミリングHCは、笑みを浮かべながら振り返った。
「トレイはビッグショットを決めることが仕事でもありますし、彼がボールを持てば良いことが起きることが多いです。ですので、まずはトレイにボールを持たせることを指示しました。トレイはこの5年間の群馬の歴史を知っている選手でもあるので、そういった選手があの場面で、あのようなスコアを決めれたことは私としてもすごく良かったかなと思っています」
◆■群馬の歴史を知る男「5年かかりましたけど…」
「あの場面は自分が決めなければいけない時間帯でしたし、タイムアウトでコートに戻る時から『自分がやらなきゃいけない』と思っていました。その中でしっかり決めることができてよかったと思っていますし、あのショットがプレーオフ進出を決めるショットになったことに関してもうれしく思います」
この日のジョーンズは計13得点9アシストの活躍を見せたが、3ポイント成功率は5分の1。度々リングに嫌われようとも、重要な場面の1本を決めきるエースとしての責務を果たした。

B2時代の群馬を知るトレイ・ジョーンズ[写真]=B.LEAGUE
現在34歳のスコアラーは、2020-21シーズンから群馬でプレーしている。当時の群馬はB2に所属していたが、ジョーンズが加入した初年度にリーグ優勝と悲願のB1昇格を達成。その後はシーズンを追うごとに豊富な戦力をそろえ、今ではリーグを代表する辻や藤井祐眞、ドイツ代表のヨハネス・ティーマンなど豪華な顔ぶれが並ぶ。本拠地も市民体育館から5000人収容のオープンハウスアリーナ太田へ移り、チームを後押しする熱烈なファンも増え続けている。
マイケル・パーカーとともにB2時代から群馬を引っ張ってきたジョーンズにとっては、在籍5年目で初のチャンピオンシップ進出。かつては千葉ジェッツでプレーしていたものの、個人としてはCSのコートに立てていない。それだけに、喜びもひとしおだった。
「5年かかりましたけど、自分たちが1シーズン毎に何をすべきかをファンの皆さんに示してきた自負はあります。5年前に比べたらファンの数も相当増えていますし、やっとここに来れたことをとてもうれしく思っています」

群馬の主軸としてCSでも活躍が期待されるトレイ・ジョーンズ[写真]=B.LEAGUE
群馬クレインサンダーズは、トレイ・ジョーンズなしでは語れない。クラブが成し遂げた快挙の中心には、気づけばいつも背番号4がいる。
文=小沼克年