大塚裕土(アルティーリ千葉)、「B2で2年連続3P成功率No.1」の結果が語るもの
アルティーリ千葉のキャプテンを務める大塚裕土が、2年連続でB2の3P成功率1位の座に就いた。スターターから控えに回り、出場時間が減った今季は、確率的には「そこそこ」を維持してはいたが、リーグ規定(85%以上の試合に出場し、平均1.5本以上の成功数)に届かず、4月6日に第30節の青森ワッツ戦を終えた時点までは長くランキング外。しかし翌週、第31節の福島ファイヤーボンズ戦を終えたところでランキングをチェックすると、突如として大塚の名がトップに躍り出ていた。
この時点で、アテンプト総計が222に対し成功数総計が87本、1試合当たりの平均成功数がリーグ規定ギリギリの1.5本で成功率39.2%。4月19日、20日に信州ブレイブウォリアーズをホームの千葉ポートアリーナに迎えて行われたレギュラーシーズン・フィナーレは、コンディションに問題がなければ2試合ともコートに立たないことはないだろう。となれば最低でも3本成功させればランクインが確定する。あとは確率の勝負だが、どうなるか?
ゲーム1はアテンプト1本の成功なしで終了。この時点では再び規定を割っており、ランキングに返り咲くためには、最後の60試合目――大塚個人としても全60試合出場を果たす一戦であった――で、3本以上成功させる条件は前日から変わっていない。
プレーオフで再度戦う可能性がある信州ブレイブウォリアーズを相手に、しっかり勝っておきたいこの一戦は間違いなくビッグゲームだ。それだけではなく、勝てばチームとしてリーグ最高勝率記録を2年連続で塗り替える57勝3敗(勝率.950)、前人未到のホーム30勝無敗、クラブ記録に並ぶ1シーズン中の18連勝を同時に達成という歴史的快挙がかかっていた。
自らの力と存在意義を見せつける絶好機。前日もそうだったのだが、大塚は試合前にほかのメンバーたちがロッカールームに戻ったタイミングで、一人コートに残ってシューティングに精を出していた。どんな意識がそうさせたのかは確かめていないが、シューターとして最高のパフォーマンスを来場したA-xx(アックス=アルティーリ千葉ファンの愛称)に披露するというプロフェッショナルな姿勢が伝わるウォームアップだった。
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その取り組みが実る時がやってきた。大塚はそれを逃さなかった。
24-25と1点差を追う2Q残り5分22秒、自らの好ディフェンスでエリオット・ドンリーのチャージングを誘って得たポゼッションで1本目の3Pシュートを成功させると、その29秒後にももう1本。この2本目は、素速いトランジションでやや乱れたパスをデレク・パードンが懸命につないだ好プレーから生まれた、ダメージのデカい一撃だった。信州の勝久マイケルHCはたまらずタイムアウト。千葉ポートアリーナをブラックネイビーに染めたA-xxから、大歓声が沸き起こる。
タイムアウト明け、大塚はさらに攻めて3連続を狙う。これは決まらなかったが、勢いが止まらないアルティーリ千葉はブランドン・アシュリーが速攻からダンクをぶち込み、黒川虎徹のレイアップとたたみかけた。
そしてこのクォーター残り2分25秒、大塚の3本目がズドン! 1本目の成功から約3分間の13-3のランで、アルティーリ千葉は1点ビハインドから37-28の9点リードに。
試合は最終的に、この時点と同じ9点差の82-73でアルティーリ千葉が勝利。大塚自身この流れでの9得点がこの試合での全得点だった。言ってみれば「大塚分だけ勝ち」だったわけだ。
あたかも、キャプテンである大塚が、本来のシューターとしての存在感でチームを引っ張っていることを象徴するようなレギュラーシーズン・フィナーレ。自分たちが昨季生み出した歴代最高勝率記録の更新をはじめとするチームとしての快挙達成と同時に、大塚はこの時点で再び3P成功率ランキングのトップに立っていた。アテンプト227に対し90メイクの成功率39.6%。翌日の神戸ストークスvs鹿児島レブナイズが終わるまで確定ではないとはいえ、3P王の称号はこの時点でほぼ大塚が「当確」だった。
「シーズン中は正直、心の波が相当上下しました。いつコートに出るか分からないし。昨日もアテンプト1本だけ。スペースを広げる意味で仕事はできたと思いますけど、突然出てすぐ下がってということがシーズン中かなりあったので、力を発揮するのが難しかったです。でも、その中でも打っていかないといけません。アルティーリ千葉の3P成功率を引っ張っていくのも自分の役目。ペイントでの得点が多いチームですけど、自分の確率がチームに直結するんだと自分にプレッシャーをかけてやってきて、プレーオフ前に確率を上げられてよかったです」
大塚は試合後、長いシーズンを振り返ってそう話した。
有言実行を貫いた2024-25シーズン
「シューター大塚」の昨季と今季を、数字で振り返ってみよう(以下、矢印の左が昨季、右が今季の数字)。
出場試合数 56→60
スターター 53→0
総出場分数 1139分43秒→851分44秒
3P成功率 44.0%(124/282)→39.6%(90/227)
出場10分あたりの3P成功数 1.09→1.06
※総出場分数を昨季1139.72分、今季851.73分として計算
+/- 平均6.8(381)→平均7.3(436)
3P成功率が4.4ポイント落ちているところには、新たな役割との格闘や心の葛藤、さらにはリーグ全体のレベルアップも影響していることだろう。しかし、10分出れば1本は3Pショットを決めるというシューターとしてのクォリティーは、実質的に保たれていたのだ。
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また、それにも増して非常に価値が高いのは、全試合に出場して+/-が向上していることだ。自らの得点だけではなく、スペーサーとして機能することでチームオフェンスが威力を増したことが、この数字からうかがえる。
大塚はかねがね、「カテゴリーが変わっても年を重ねても、B1でやっていたのと同じスタンダードを落とさないよう心がけています」と言っていた。「役割が変わっても、コーチ陣が自分を使わずにはいられないような実績を出していく」とも。みごとな有言実行と言っていい数字ではないだろうか。
これだけの結果を残せたことについて、大塚はこう話している。
「プレータイムが減った中で、個人として結果を残せたのは非常によかったです。スタッツに残らないところをしっかりしなければいけないのはもちろんですけど、自分の存在を証明するのはやっぱり3Pシュート。虎徹や渡邉伶音(3月まで特別指定選手としてチームに在籍、現・東海大1年)にシュートを教えていた立場でもあったので、彼らに対する説得力にもなると思います。(自分が伝えていることの正しさは)自分の力で証明していかないといけないですが、その意味で自信になりました」
アルティーリ千葉はチームとしても、37.1%の3P成功率がリーグトップだ。そのけん引役のキャプテンが個人としてリーグトップの座に君臨し、夏場その大塚に教えを乞うた黒川が規定外ながら大塚上回る44.9%(57/127)。「すごく成長したと思います」と話す大塚の表情は自信に満ちていた。
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さて、大塚が3P王のタイトルをかっさらい、熊本ヴォルターズが後半戦の快進撃でワイルドカード下位に滑り込んだことにより、来る5月3日(土)から千葉ポートアリーナで開催されるクォーターファイナルは、奇しくも今季の3P成功率ランキングにおける1-2フィニッシャー――1位の大塚 vs 2位の山田安斗夢――が激突する舞台にもなった。両チームがプレーオフにおいて、これ以上ない悔しさを味わってきた歴史を持つ者同士であることは、この記事を読んでいる人ならば両チームのファンならずともご存じだろう。悲願のB1昇格をかけて戦うセミファイナル進出を手繰り寄せるのは、どちらかの手から放たれるレインボースリーかもしれない。果たしてどんな結末が待っているだろうか? 間もなくその答えがわかる。
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大塚裕土2024-25シーズンハイライト
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