2025.04.08
アリゼ・ジョンソンは新生・川崎の“らしさ”発揮のカギを握るか「まだ能力の少ししか見せられていない」
今季の川崎は、ニック・ファジーカスの引退やクラブ史上初の外国人指揮官ロネン・ギンズブルグの招へい。藤井祐眞やジョーダン・ヒースといった長くチームに貢献してきた主軸の退団が重なり、再建に舵を切った。戦術もハーフコート主体のこれまでとは真逆のトランジションバスケを採用し、ケミストリーも経験もイチから再構築中。その結果、このシリーズを終えて戦績は14勝35敗の中地区最下位、リーグ全体でも下から4番目となっている。
だが、勢いに乗った時間帯にはどのチームとも張り合える爆発力を備えているのは、FE名古屋との連戦でも示したとおり。特にゲーム1では、1Q中盤から敷いたアリゼ・ジョンソン、ロスコ・アレン、米須玲音、飯田遼、野﨑零也のラインナップが機能。ジョンソンや米須のプッシュからアレンのダンク、あるいはペイントタッチからキックアウトしてシューター陣が3Pシュートを射抜くなど、目指すスタイルのバスケを体現した。
ジョンソンに求められる
一貫性のあるプレー

今季の川崎はジョンソンがボールプッシュ、あるいはペイントアタックをうまく仕掛けられている時間帯に、目指すアップテンポな展開を作れていることが多い印象だ。逆に、彼がむやみなアタックやターンオーバーを重ねてうまく機能しないときは、チーム全体がマイナスな方向に引っ張られる。波の激しさはジョンソンの課題だが、他方で彼が機能しているときは強力なオプションになっているのも事実。そこに一貫性が生まれればチームとしての天井は高くなる。
ジョンソン自身もそれを理解しており、「もちろん自分はファストブレイクが強みだと思っているので、ボールプッシュをできていれば良いバスケができていると思いますが、できていなければ難しい状況になると思います」と、自らが正しくボールをプッシュすることでチームを活性化できると理解している。彼が“つなぎ役”に徹してボールを散らし、献身的にリバウンドに飛び込んだとき、チームもやりたいバスケができている。「それは自分の強みだと思うし、このチームでの役割だと思っています。どんな状況でもチームが勝てるように、できることがあればそれをしようと思っています。それが自分のやり方です」
一方で、まだ完全にアジャストするのには時間が必要だとも言う。「ネノコーチが自分に何をしてほしいのかをまだ探っているところです。役割は状況にもよると思いますが、コーチが自分に点を取ってほしいのか、つなぎ役になってほしいのか、ディフェンスをしてほしいのか。いろいろなチームでいろいろな役割をこなしてきた経験がありますが、僕の能力の少ししかまだ見せられていないと思います」。長くアメリカでプレーしてきた彼にとって、Bリーグを含む海外でのプレー自体が2年目。1シーズンでチームも個人も結果を出すことは容易ではない。
ギンズブルグHCは敗戦にも、「チームは徐々に良くなってきている」と手応えを話しており、ジョンソンのフィットも含めて最終盤を戦っていく構えだ。
渡邊雄太とのNBA時代の縁
「お互い切磋琢磨してきた」

そもそもジョンソンは元NBAプレーヤーという大きな期待を背負って川崎に迎え入れられた。新加入選手発表会見では北卓也GMも「ご存じのとおり彼は元NBAプレーヤーで、クリエイトする力とリバウンド力がある。身体を張ってボールが落ちる場所を予測してリバウンドを取ることができます」と、その万能さに期待を寄せていた。
ラプターズ時代には渡邊雄太とも親交を深め、渡邊はジョンソンの川崎加入を受けて自身のSNSで「アリゼ日本でプレーするのえぐい」とリアクションしていた。第28節で千葉ジェッツとの連戦が組まれた際には、ケガで欠場中の渡邊と談笑しているシーンがBリーグ公式SNSにも投稿されている。そのシーンで何を話していたのかジョンソンに尋ねると、彼はこう話した。
「それぞれBリーグでは1年目なので、彼の生活や、アメリカにずっといたところから日本に帰ってきてどうなのかといった話をしました。今までは僕が(母国の)アメリカにいて雄太にアメリカのことを教えていましたが、『今度は逆になったな』という話をしたり。(ラプターズでは)お互いにトレーニングキャンプから一緒でしたし、どちらかがカットされるところも一緒でした。そのときは雄太が2ウェイ契約を獲得して、僕はブルックリンに行きました。Gリーグでも対戦しましたし、NBAでもどこかしらでマッチアップすることが多かったです。彼とは同じようなレベル、ポジションで、ギリギリNBAに行けるかを争っていたので、お互い切磋琢磨してきた関係です」
渡邊がラプターズで初めての本契約を手にした傍ら、ジョンソンもネッツで過ごした2020-21シーズンには、21年4月29日のペイサーズ戦で20得点、21リバウンドの驚異的なダブルダブルをマークしたこともあった。(この試合はケビン・デュラントの42得点パフォーマンスもあり、ネッツが130-113で勝利)
それでも、ネッツに定着することはできず、翌シーズンはブルズ、ウィザーズ、ペリカンズと所属先を転々とすることに。「本当にそれはビジネスなので。チームが勝つためにどういうことをしたいのかだと思います。そのときのブルックリンは僕とは違う方向に進むことを考えていたということ」と、ジョンソンは冷静に振り返っていたが、改めてNBAで生き残るにはタイミングも重要であることが彼の言葉からうかがえた。
NBAでの苦労と、初めてプレーする日本での苦労は全くの別物だ。だが、そうした経験を持った選手が再建1年目に加わったことは、クラブにとって大きな意味がある。リーグ戦も終盤に差し掛かり、各クラブや選手は今季の先の身の振り方も考えながらシーズン終盤を過ごすことになるだろう。残りのシーズンでジョンソンと川崎がどんな試合を見せてくれるのか。注目したい。
記事提供:月刊バスケットボール