チケット購入
2025.03.28

大橋大空(横浜エクセレンス)の飛躍と伸びしろ——快進撃を支える若きキャプテンにインタビュー

  • 月刊バスケットボール



B3優勝と2019-20シーズン以来のB2復帰を目指す横浜エクセレンスに今季から加わった大橋大空。チームで2番目に若い25歳だが、キャプテンとして、323日(第26節)を終えた時点で横浜EX404敗(勝率.909)の首位という好成績に導いている。

洛南高でもキャプテンを務めていた大橋は、卒業後渡米してビクトリー・ロック・プレップ、フロリダナショナル大、ブルーフィールド州大を経て、昨季はB1の島根スサノオマジックに所属していた。身長165cmでクイックネスと身体的な強さを持つ闘志あふれるポイントガードだが、安藤誓哉らガードの層が厚い島根で活躍の機会は思うように得られなかった。しかし、新天地の横浜EXではスターターに抜擢され、チームが強みとするインテンシティーの高いディフェンスの先鋒として欠かせない存在になっている。

香川ファイブアローズを87-65のスコアで下した第26節のゲーム1終了後、自身のパフォーマンスとキャプテンとしての心境など聞かせてもらった。



——
今日の試合はいい勝ち方ができたと思います。チームとして、ご自分としての出来はどうでしたか? 

スタートでチームのトーン・セッティングをするポイントガードの役割をしっかりできたかなと思います。ディフェンスのインテンシティーを高めて、そこからいい流れに持っていけましたから。オフェンスではアグレッシブさが足りず点数が取れませんでしたし、自分でもっとクリエイトできるとこがあったので、反省点があります。でも結果として勝たせられてよかったです。

——第3Q、相手が乗ってきそうな雰囲気があったところでも、高い位置からプレッシャーをかけるディフェンスで流れを持ってきていましたね。

そうですね。今年のチームはオフェンス面でタレントがそろっていますけど、僕たちはディフェンスからのチームだとずっと言われてきています。僕の仕事は杉山(裕介)と協力してしっかり前からプレッシャーをかけて、ディフェンスでモメンタムを持ってくること。今日はそこがすごく良かったと思います。

——チームは絶好調ですね。若手の大橋さんが大ベテランも多いチームをキャプテンとしてけん引する上で、どんなところに注意していますか?

僕が心がけているのは、若い自分があまり言葉でみんなを引っ張るより、プレーの内容やハッスルで姿勢を見せることです。ポイントガードはハーフコートの一番上にいるじゃないですか。そこでどれだけ相手にプレッシャーをかけたり、走れたり、ルーズボールに飛び込めるか。そういうところから先輩たちを引っ張っていけたらなと思って心がけています。

——レギュラーシーズンが残りわずかになって、クォーターファイナルのホーム開催も決まりました。チームとして、どこかそわそわして心の置き所が難しいとも思いますが、どんなご様子ですか?

まだまだ残りの日程をステップアップできる機会と捉えてやっていこうと話しています。コーチ陣から「プレーオフは勢いのあるチームが勝つ」ということも言われていて、どんなに強くても勢いを失ってこけてしまうことがあるのを実際にいくつも見てきましたし、皆で日々の練習から一生懸命やっているので、本当にすごくいい環境だなと思っています。

——残りの試合で、大橋選手としてはプレー面のどんなところを高めたり直したりしていきたいと感じていますか?

僕自身はもっと得点力や自分でクリエイトする能力を出していきたいです。そうできる自信はあるので、コート上でもっとアグレッシブさ出していかないといけないなと思います。打てるときに打つとか、攻めるときに攻めるとかという状況判断を、プレーオフに向けて磨いていくつもりです。

成長を後押しする河合竜児HCの信頼

大橋は今季、横浜EX44試合すべてに出場して5.0得点、3P成功率32.6%、2P成功率51.7%、1.3リバウンド、2.3アシスト、1.1スティール、0.7ターンオーバーという数字を残している。最大の武器はディフェンスと言えるかもしれないが、オフェンス面でも3Pエリアで脅威となれる30%以上の精度を保ち、アシスト/ターンオーバー比率3.3とガードとしての安定感も発揮している。



島根在籍時には、安藤らのプレーを単に見るだけではなく、練習相手にもなってもらって自身の成長に努めたという。開幕当初に話を聞いた際、大橋は「自分のスピードを生かせるように、チームにフィットできる可能性を日々考えながらB1でやってきました。安藤さんは30分超えのプレータイムが続く状態でも、練習後に僕との11に付き合ってくれたり、いろいろなワークアウトをずっと一緒にやらせてくれたり、本当にお世話になりました。様々なものを吸収できたので、島根時代はものすごく意義深い1年でした」と当時を振り返っていた。

B3に来て、それを生かして良い影響を与えられると思っています」

河合竜児HCは開幕当初、ユニークな経験を持つ大橋について、「練習の55と実戦は全然違うので、少しずつ慣れて良くなってきているとは思うんですけど、まだゾーンディフェンスの攻め方などは経験値のあるベテランの方が上ですね」とゲーム感覚をやや気にするコメントをしていた。しかしここまで全試合で出場機会を作ってスターターに定着させていることを見れば、大橋に大きな期待を寄せ、その時点から今まで信頼し続けていることに疑う余地はない。この取材と同じ日に大橋についてのコメントを求めると、以下のような返答だった。

「小柄な選手ですけど、その分足を生かせています。B3にも慣れて、チームプレーについての理解も深まっています。ディフェンスでは杉山とコンビでトーン・セッティングをしっかりしてくれているし、ボール運びやプレーコールからの組み立てもアメリカで苦労してきた分いいものを出せています。チームメイトからの信頼も得て、期待に応えてくれていますよ」

横浜EXの快進撃は、ある意味では河合HCと大橋キャプテンの間に芽生えた信頼の膨らみを象徴するものであり、大橋自身の成長の指標と見ることもできそうだ。

レギュラーシーズンの残り8試合とプレーオフで、その信頼をB3優勝とB2昇格という最高の形に結実させることができるか。もちろん大仕事だが、間違いなくその目標は大橋の手が届く伸びしろの範囲内に置かれている。