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2025.03.27

プロ初の2桁得点で勝利に貢献、千葉ジェッツの瀬川琉久がこだわるスコアリングガードとしての自分「まずは点を取りに行く」

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瀬川琉久

富樫勇樹が前半途中で離脱、危機を救う活躍

326日、千葉ジェッツはホームで越谷アルファーズと対戦。終盤まで続いた接戦を1万人を超える観客が固唾を飲んで見守る中、ここ一番の遂行力で上回った千葉J74-68で競り勝った。

序盤は互いにオープンシュートを外したり、タフな守備でゴール下を決め切れない展開に。それでも千葉Jは35-27とリードしてハーフタイムを迎えたが、大黒柱の富樫勇樹が前半途中で離脱した影響で後半もオフェンスの停滞が続き、シュート確率を上げてきた越谷の反撃をくらう。僅差のまま迎えた終盤、第4クォーターだけで13得点を挙げたディー・ジェイ・ホグを中心に、粘る越谷をなんとか振り切って勝利を収めた。

千葉Jの大型ルーキー瀬川琉久はこの試合、自己最多となる2319秒出場。初の2桁得点となる12得点に、3リバウンド3アシスト3スティールという大活躍で勝利の立役者となった。フィールドゴールは12本中4本成功に留まったが、積極的なドライブから相手ビッグマンを引きつけてシュートを放つことで、ジョン・ムーニーなど味方ビッグマンがリバウンドを押し込む場面を演出するなど、攻撃の起点として機能していた。

富樫離脱の危機を救った瀬川だったが、「ディー・ジェイやまわりの選手たちがシュートを決め切ってくれたことが勝因だったと思います」と自身への評価は厳しい。

「大事な場面でターンオーバーをしてしまったり、うまくゲームコントロールできずまわりに任せきりの場面もありました。そういうところはガードとしてまだまだです。ディフェンス面でアグレッシブにルーズボールに飛び込んだりできたことは良かったです」

振り返れば、323日の前節滋賀レイクス戦で瀬川は、コートイン早々に連続ターンオーバーを犯すなどパフォーマンスが上がらず、431秒出場という悔しい結果に終わっていた。瀬川は滋賀戦後、次のような反省をしたと振り返る。

「最初にターンオーバーをして、あせっていた自分がいました。『何かしないといけない』という気持ちで突っ込んでしまったり、視野が狭くなっていました。また、パスファーストで最初に自分が行くという選択はしていなかった。攻め気がなかったので相手の脅威になれず、ターンオーバーになってしまいました」

そこからの見事なカムバックについては「大きなステップアップだと思います」と、失敗を成長の糧にできたことへの手応えを語る。

「人間はうまく行っているとどうしても自分を振り返らない生き物なので、ミスがあったからこそこうやって活躍できたと思います。滋賀戦は成長するための経験だったと思います」

瀬川琉久

グリーソンHC「チームは彼に信頼感があります」

千葉Jのトレヴァー・グリーソンヘッドコーチは、瀬川を次のようにたたえた。

「若い選手でまだ成長途中です。経験を重ねていかないといけない中、良い時も悪い時もあり、そこからどんな反応をするかが大事になってきます。滋賀戦ではプレーが速すぎて、あわててしまっていました。その反省をしっかり生かして、今日は素晴らしいプレーでした。特に、ベースラインのルーズボールが味方の3ポイントシュートにつながったプレーや第3クォーターのスティールなどでチームを引っ張ってくれていました」

グリーソンヘッドコーチは年明けに加入した18歳を、すでに戦力の1人として計算に入れている。

「プロになったばかりで経験がなくても、怖がらずに立ち向かっていく姿が素晴らしいです。良い時も悪い時もありますが、普段の練習でのプレーも含め、チームは彼に信頼感があります」

千葉Jといえばリーグ屈指のタレント集団で、得点力に優れた選手が揃っている。その中でも瀬川は、自ら積極的に得点を狙いに行っていた。

学生時代にスコアリングガードとして名を馳せても、プロではミスなくプレーすることを第一に考えパスファーストになる選手は珍しくない。だが、瀬川には最初からスコアリングガードとしてプレーするという強い決意がある。

「加入した当初は特に何も言われていなくて、『自由にやっていいよ』という感じでした。でも、何に関しても最初こそ重要だと思います。パスばっかりしていたら『瀬川琉久はパスをする選手だ』と評価され、そういう選手として使われると思っていました。最初から自分の持ち味を出すことが肝心だと理解していて、それを遂行できたのが今につながっていると思います」

チームも瀬川の得点力を求めている。滋賀戦の後、瀬川はグリーソンヘッドコーチから次のように叱咤激励されたと明かす。「コーチは、自分が点をとりに行ってから次の展開があると言ってくださっています。それが今日のプレースタイルにつながりました。これが自分のあるべき姿だと思います」

今回、瀬川はプロで初めて終盤のクラッチタイムでコートに立った。高校を卒業したばかりの選手が、この痺れる場面でそつなくプレーし試合に勝ったことだけで十分な内容だ。だが、瀬川の視座は高い。

「プロの舞台で初めてこういう場面に出させてもらって、アシストなどはできましたが自分から点をとりに行けませんでした。富樫選手のようにこういう場面で点数を決められるスキルを身につけたいと思います」

瀬川琉久

次節は高校の先輩・米須が所属する川崎と対戦「本当に楽しみ」

今週末、千葉Jはホームで川崎ブレイブサンダースと連戦を行う。富樫のコンディションが不透明な中、瀬川には大きな期待がかかる。

また、川崎では東山高の先輩で同じ司令塔の米須玲音が躍動している。学年が4つ異なる2人は高校で共にプレーはしていないが、昨年、米須が教育実習で母校を訪れた際に2週間ほどともに汗を流している。

先週末の試合後、米須は瀬川との対戦について「そこは1つ自分でも気になります」と答えた。「教育実習で軽く55などをやりましたが、ちゃんと戦うのは初めてです。先輩の意地ではないですが、そういうところを見せつつチームが勝てるようにプレーしたいです」

瀬川も、米須とのマッチアップを心待ちにしている。「2週間くらい一緒にやりましたけど、玲音さんもケガ明けでそんなに本気でなかったですし、プロの舞台で戦えるのは本当に楽しみです。今まで玲音さんを選手として客観的に見ていなかったので、コート上でどんなことを考えてプレーしているかなどを肌で感じられることも楽しみです」

もちろん2人とも、チームの勝利にどう貢献するかに集中していて、試合の結果以上に自分たちにスポットライトが集まることを望んではいない。とはいえ、ともに高校時代から抜群の知名度を誇る世代屈指の若手ガードがどんなプレーを見せてくれるのか、今から多くのファンが楽しみにしているだろう。