2025.03.25
琉球ゴールデンキングス・岸本隆一選手インタビュー 「『おおきなわ』の活動は、地元でプレーしている自分がやることに意義がある」
特に子どもたちに対する活動に力を入れる岸本選手は「地元でプレーしている自分がやることに意義がある」と語ります。今回は「子どもたちにいい影響を与えたい」という思いをインタビューで聞きました。
――さまざまな地域活動に参加されている岸本選手ですが、特に小学校を訪問して「ドリームスタディドリル」を寄贈する活動について、子どもたちの反応はどういうものでしょうか?
岸本)ドリームスタディドリルはキングスに関する問題が載っているのですが、例えば「外国人選手の出身地はどこでしょう?」「シカゴはどこにあるでしょう?」という問題があります。アメリカやヨーロッパという大まかな答えではなくて、(都市名などの)具体的な問題だったりするのも刺激的だと思います。また選手の身長を使っての算数問題などもあるので、学校でいつも配られるもの(教科書)とはちょっとタイプが違うものです。そういうこともあり、子どもたちの表情も、いつもと違うかなとは感じていますね。


※「ドリームスタディドリル」寄贈の活動についてはこちら
https://goldenkings.jp/csr/detail/id=21153
――その活動も含めて、クラブとしては“沖縄をもっと元気に!”という活動理念の下、地域活動「おおきなわ」を推進しています。
岸本)はい。自分たちは、競技が最優先ではありますが、地域社会に貢献するということは、同じくらい意義があることだと思っています。「おおきなわ」という活動を通じて、バスケットボールを通じて、B.LEAGUE、キングスをより身近に感じてもらえたらうれしいなと考えています。
――2013年の入団以来、キングス一筋でプレーし、多くの活動を行ってきました。印象深かったものを教えてください。
岸本)まずドリームスタディドリルは、いい取り組みだなと感じています。自分が小学生の時に、こんなドリルがあったら、違う世界に興味を持てていたかもしれないと、うらやましく思います(笑) また、昨シーズンの開幕前に石垣島で合宿をした時のことは印象深いですね。離島には足を運ぶ機会も少なくなってしまうので、島の子どもたちと触れ合い、笑顔を見られたというのはうれしかったです。


――活動の中で、コミュニティとの距離が縮まる体感はありますか?
岸本)以前、アリーナ周辺で登校する子どもたちを見守る活動に参加した時のことなのですが、一緒に活動できて距離が縮まっていると感じました。こういう活動を続けることが大切で、さらに身近に感じてもらえるきっかけになりますし、僕らの人間性もしっかり伝わる機会だと思います。
――クラブが公開したブランドムービー「夢をつかめ」では、小学校で出会ったバスケットボールについて、好きという純粋な気持ちが力になったということ、さらに子どもたちに「好きなことを見つけて挑戦し続けてほしい」とお話されていました。子どもたちと触れ合う際は、そういったメッセージを伝えるのでしょうか?
岸本)そうですね。自分ももう34歳となり、たくさんの経験をしてきました。子どもたちは当然、その経験はないのですが、無限の可能性を持っていると思っています。だからこそ、思っていることや考えていることをできるだけ否定せずに聞くように心がけています

――インタビュー動画の中で、「困難に遭った際、乗り越えなくていい。ベストを尽くすことが大切なんだ」とおっしゃっていたことが特に印象的です。
岸本)僕のバスケットボール人生を振り返ると、うまくいっていることばかりではなくて、挫折や苦しい時期も多くある中で頑張っていたということがあります。また年齢を積み重ねてくると、仲間がバスケットボールから離れていきます。なぜかというと、壁に直面した時に「乗り越えなければいけない」と考えてしまったというのも理由の一つなんだと思い至ったのです。でも、自分の好きなことならば、そういったものも抱えながら続けていくこともできる。そうなってほしいということで言葉にしました。
――大好きな子どもたちと触れ合うことで、エネルギーをもらうということもありますか?
岸本)もちろんです。子どもたちも含めて、一番のモチベーションはファンの方の声で、たくさんの声援をいただけるのは本当にうれしいです。一方で僕がミスしてがっかりさせてしまうことがありますが、その悔しさも一つのモチベーションになるものです。たまに自分の子どもと公園に行った時に、そこにいる方々と触れ合うんです。すごく敬意を持って接していただく中で、バスケットボールを職に食べていくことというのは、そんな難しいことじゃないよと自分では思っています。だから、等身大の自分を感じてもらいたいという思いがあります。
――ちなみに、ファンからどんなアクションをしてもらったら嬉しいですか?
岸本)言葉よりも、子どもたちに真似してもらえたら純粋にうれしいですね。あと変に聞こえるかもしれないですけど、呼び捨てにされるのもうれしいんですよ。親しみがあるからこその呼び捨てですからね。自分は、いろいろなことをポジティブに解釈するタイプなのです(笑)
――「おおきなわ」の中で、今後やってみたいことはありますか?
岸本)仕事としてバスケットボールをやっている僕との触れ合いによって、子どもたちの将来に何かいい影響を与えたいと思っています。そういう活動を続けていきたいですね。それは地元でプレーしている自分がやることに意義があると考えています。クリニックのような活動でも、実際に一緒にプレーしたり、身近に感じてもらえる機会があったらいいですね。
――最後に「自分がやることに意義がある」とおっしゃいましたが、選手たちが地域活動をやる意義、重要性をどのように考えているかを教えてください。
岸本)いい意味で、選手も普通の人だよっていうことは感じてもらえる場なのかなと思っています。僕も子ども時代はそうでしたけど、プロのスポーツ選手というと違う世界の人だと思っていました。でも、こういう活動を通して、第一線でやっているプロ選手も当たり前のことを当たり前にやっている人間なんだと伝わってほしいですね。僕は、そういったことが一番の意義だと思います。

取材協力:Bリーグ
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記事提供:月刊バスケットボール