チケット購入
2025.03.18

【井口基史のスカウティングレポート】やっぱり気になるお金について『トップチーム人件費』ランキング2023年度版(前編)

  • バスケットボールキング

 今回で5シーズン目となるクラブ決算概要レポート。皆さまのおかげで5回目を迎えました。いつもありがとうございます! 今回は2024年11月19日に発表された「B.LEAGUE 2023‐24シーズン(2023年度)クラブ決算概要」をもとに、『トップチーム人件費』についてレポートします!マイチームとリーグの現在地を知っていただければ幸いです!現在進行中のシーズン決算ではなく、昨シーズンの決算についてのレポートですのでご注意ください(井口基史)。

文=井口基史

◆■人件費トップは7期連続アルバルク東京

 A東京は13.5億円を計上し、Bリーグ初年度(初年度は千葉ジェッツ)を除き、7期連続で人件費トップを走り、リーグのサラリーを牽引しています。昨シーズン(2023-24)のA東京の結果は、チャンピオンシップ(以下CS)のクォーターファイナルで琉球ゴールデンキングスに惜しくも敗退。一方、優勝は人件費ランキング5位(9.4億円)の広島ドラゴンフライズでした。A東京の優勝は過去7シーズン(コロナによる中止を除く)のうち2回ですので、トップチームの人件費が優勝に直結するとは言い切れないでしょう。

 ただし、人件費24位の富山(3.5億円)との差は約10億円あり、Bリーグ開始以来の通算成績は「A東京 16勝-2勝 富山」と圧倒的な差があります。CS進出チームは人件費の差を凌駕できるが、レギュラーシーズンでは成績に直結するとは言えそうです。このような数字から、2シーズン後にスタートするBプレミアでの戦力均衡の施策とされる、サラリーキャップやドラフト制の必要性を、どれだけの人が感じるのか気になります。ちなみにトップチーム人件費にはコーチなどチームスタッフの人件費も含まれるとされています。

◆■地域密着型で初の10億円突破は琉球

 2007年に沖縄県初のプロバスケチームとして創設された琉球が、いわゆる地域密着型として初の10億円の壁を破り、11.6億円を計上。沖縄アリーナ開業インパクトがあるとはいえ、創設16年かけて1億円超のプレイヤーがいてもおかしくない規模を、ここ数シーズン維持している事実は、全国の地域密着型球団に勇気を与えているでしょう。2016年9月22日、歴史的なBリーグ開幕戦で「エリート 対 雑草」という表現でプロモーションされたA東京と琉球が、今のリーグサラリーを1、2位で牽引しているのも感慨深いです。

◆■ファイナル4にはいくら必要?

 ファイナル4進出チーム(CSベスト4以上)の平均人件費9.8億円ですので、約10億円規模を、チームへ投資できなければ、優勝に近づくことはできないと見えます。その下支えのために、ファン・ブースターやスポンサー企業からの後押しはもちろんのこと、各球団スタッフが、スポンサーセールス、チケット収入のために、日々ファイトしていることも忘れてはいけないでしょう。

【2023-24CSベスト4進出チームのトップチーム人件費】
琉球ゴールデンキングス 11.6億円
千葉ジェッツ 9.9億円
広島ドラゴンフライズ 9.4億円
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 8.6億円
平均9.9億円

◆■B1とB2の差は?

 平均トップチーム人件費はB1とB2で倍以上の差があります。マイチームの競技順位がどの位置か?トップチーム人件費はいくらなのか?これらを見比べてみると、より深く自分たちの現在地が見えてくると思います。

【B1、B2平均トップチーム人件費】
・B1平均トップチーム人件費 7.2億円、
・B2平均トップチーム人件費 2.9億円

◆■サラリーキャップとの関連は?

 2026-27シーズン開始のBプレミアは、トップチーム人件費の最高値(8億円)と最低値(5億円)を定めており、現段階ではまだそのルールは適応されています戦が、すでに超過、未達のチームがある点に注目です。

「超過」チームは昨期の人件費規模を維持すると、降格を含めた厳しい制裁がありますので、選手の離脱、もしくは選手の年俸を下げる必要が出てきます。「未達」のチームは更なる投資が必要となり、最低値に達しない場合は、降格を含めた制裁になります。これにより戦力均衡を目指し、接戦が増えたり、終盤戦まで魅力あるカードを維持する、という効果を目指すのが、プロリーグがサラリーキャップとドラフト制度を導入する主な要因といわれています(※スター選手条項は加味していませんのでご了承下さい)。
※特例条項:「スター選手条項」:特例選手の内1名が1.5億円以上の報酬であったとしても、当該選手は1.5億円までをサラリーキャップに計上する。

【サラリーキャップ(最高値)8億円・超過チーム】
① A東京
② 琉球
③ 千葉J
④ 宇都宮
⑤ 広島
⑥ SR渋谷
⑦ 三河
⑧ 島根
⑨ 三遠
⑩ 名古屋D
⑪ 群馬

【サラリーフロア(最低値)5億円・未達チーム】
① 秋田
② 信州
③ 佐賀
④ 仙台
⑤ 北海道
⑥ FE名古屋
⑦ 富山
⑧ 越谷
⑨ 滋賀

【サラリーキャップ超過した場合の制裁】
①降格
・Bプレミアクラブは翌々シーズン終了後にBワンへ降格(Bプレミアライセンスは交付)
・Bワンクラブは翌シーズン終了後にBネクストへ降格(Bワンライセンスは交付)

②勝ち数の減
・翌シーズンの勝率の計算に際して、勝ち数15を減じる

③制裁金
・サラリーキャップ金額を超過した金額の5倍の制裁金を科す

【サラリーフロア未達の場合の制裁】
①降格
・Bプレミアクラブは翌々シーズン終了後にBワンへ降格(Bプレミアライセンスは交付)
・Bワンクラブは翌シーズン終了後にBネクストへ降格(Bワンライセンスは交付)
※勝数の減、制裁金は実施なし

◆■B1昇格にはいくら必要か?

 今シーズンの昇格組の滋賀レイクスは3.9億円、越谷アルファーズが4億円を投資し、B1復帰と初昇格を果たしました。惜しくも昇格に届かず、今もB2でサバイブするアルティーリ千葉は、昇格組を大きく上回り7.2億円(B1平均7.2億円)を計上しています。そのため昇格組の人件費の目安、「約4億円を投資すれば、B1昇格確実だ!」と言えない状況です。A千葉7.2億円は、B1トップチーム人件費ランキング13位に位置しますので、昨シーズン昇格できなかった悔しさが、伝わってきます。

【昇格組トップチーム人件費】
・越谷 4.0億円
・滋賀 3.9億円

◆■残留にはいくら必要か?

「悔しい」の一言では表せない、B2降格してしまった信州ブレイブウォリアーズは4.8億円(10勝50敗)、富山グラウジーズは3.5億円(4勝56敗)を計上と、苦しい台所事情というか、身の丈経営というのか、厳しい現実があります。お金の問題を避けては通れないのが、プロスポーツの世界です。昨シーズンを約4.8億円以下のトップチーム人件費で過ごした7チームは、常に降格リスクを感じながらのシーズンだったのかもしれません(2024-25シーズン終了後は、B2からB1へ2クラブ、B3からB2へ2クラブが自動昇格し、降格は行わない)。

 5年目となるこのレポートで、過去一番にトップと下位の差が表れたシーズンでした。この差はB1→B2→B3でどんどん広がり、GMやスカウトをやらせてもらっていた私の実感としては、チーム内での格差も広がっていると感じます。何事も平等にならないのがプロスポーツの世界です。そんな現実も受け止め、この景色は永遠ではないと理解しつつ、マイチームや選手を、温かく見守るヒントに、このレポートがなってくれたら嬉しいです。

 後編では選手コーチ達の給料を支える、営業収入ランキングも是非チェックしてください。
一緒に日本のバスケを熱くしましょう(井口基史)。