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2025.03.12

試練に直面している川崎ブレイブサンダース、ルーキー米須玲音の覚悟「負けるのは本当に悔しいですし、負けてはいけない」

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米須玲音

シーズン途中加入もすでに主力の一員に

川崎ブレイブサンダースは、35日の水曜ゲームでシーホース三河に91-104で敗戦。前半こそ確率良く3ポイントシュートを決めることで互角の戦いを演じたが、後半はディフェンスを立て直した三河に地力の差を見せつけられ、力負けした。

現在、川崎は1327敗と、レギュラーシーズン20試合を残した時点ですでに昨年の負け数に並んでいる。昨シーズンの3327敗自体がBリーグ開幕以降の最低勝率だったが、今シーズンはワーストを大きく更新し、初のシーズン負け越しの危機だ。

チームは持ち味であるトランジションオフェンスを出せないと、一気に苦しくなる。安易なターンオーバーや個人技に頼った強引なオフェンスからタフショットを放ち、そこから相手にトランジションを許して失点を重ねる展開を繰り返している。そして、選手たちがハドルを組み、悪い流れを打破しようと意思疎通を図っている光景は少ない。ハドルを組めば万事が解決するわけではないが、同じ形で失点を重ねているのに積極的にコミュニケーションを図っているとは言いがたい。

さまざまな改善点がある中で、今の川崎にまず必要なのはハーフコートオフェンスをコントロールし、リーダーシップを取れる人材だ。このキーマンとして期待したいのが、ルーキーの米須玲音だ。米須は東山高時代から世代屈指の司令塔として、卓越したコートビジョンとピンポイントのパスで次々と味方の得点チャンスを演出していた。そして、高校3年時にウインターカップ準優勝、日本大では昨年12月の全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)で優勝を果たし、チームを勝利に導く方法をわかっている。

インカレ終了後の12月末にシーズンデビューを果たした米須は、すぐにローテーション入りし、主力の一員となっている。ここまで19試合出場で平均1917秒出場。得点力に課題はあるものの、平均4.7アシストという数字が示す通り、代名詞であるパス能力はB1でも十分に通用するレベルだ。

三河戦、川崎は第3クォーターで13-27と失速した。一度狂った歯車を立て直せず、そのまま大きく崩れる今シーズンの課題を象徴するクォーターだった。米須は次のように振り返る。

「相手がゾーンやマンツーマンなどいろいろなディフェンスを混ぜてくる中で、ボールが止まってしまいました。速いテンポで自分たちが攻め、ボールと人が動くと、シュートが入る・入らないにかかわらず良いバスケットボールが展開できますし、そこからディフェンスも立て直せますが、第3クォーターではオフェンスのテンポが悪くズルズルと行ってしまい、それが第4クォーターにも響いてしまいました」

米須玲音

「学んだものを生かして勝ちを見せられるように」

米須は、悪い流れをできるだけ早く食い止めるために、まずやるべきことについて語る。「ファウルの使い方を工夫しなければいけません。少しファウルが溜まってしまう時間帯が早いですが、それでも止めるべきところはしっかりと止めないといけないです。気を抜いてしまうというか、全員が集中しているわけではない時間帯があると思います。ボールが入る時からしっかりと勝負を仕掛けて、攻撃的なディフェンスをやっていかないといけないです」

米須は、インカレ優勝と最高の形で大学生活を終え川崎に加入。そして大学シーズンとは真逆であり、今、彼のバスケットボール人生で最も多くの敗戦を経験している。試合が続く、過密日程のBリーグにおいては、次の試合に向けて切り替えることも必要だ。

だが、米須は「負けるのは本当に悔しいですし、負けてはいけないと思います」と、敗戦に慣れることへの嫌悪感を強調する。だからこそ、特にバイウィーク明け初戦となる31日の広島戦で66-92と大敗したことを悔やんでいる。「ホームのとどろきアリーナには、多くのファンの方が来てくださいます。自分がすごく申し訳ないと思ったのは広島のゲーム1で、情けない試合をしてしまいました」

そして米須は、「負けたことから学べることはたくさんあります。学んだものを次の試合に生かして勝ちを見せられるようにやっていくだけです」と、リベンジへの強い決意を語った。また、一度コートに立てばキャリアの長い短いは関係なく、司令塔としてチームを引っ張っていく覚悟を持っている。

「遠慮していることは特にないです。今日の試合では、外国籍選手に自分からしっかりコミュニケーションをとっていろいろと伝えました。ネノさん(ロネン・ギンズブルグヘッドコーチ)からも『フリースローの時はガードがしっかりまとめてハドルを組むように』と言われています。バスケ以外でも多くコミュニケーションをとって、自分がどうしたいのか、相手がどうしたいのか、そこの理解が深まれば良いバスケットができるようになっていくと思います」

レギュラーシーズン残り20試合のうち、17試合は勝率5割以上の相手となる。そして、川崎はここまで白星先行の相手に対して15戦全敗だ。今の戦いぶりを繰り返していたら、さらに借金を増やしてシーズンを終えることは不可避で、長らく積み重ねてきた勝者のカルチャーも一気に崩壊しかねない。この難局を乗り切れるかどうかは、ルーキーの米須のステップアップにかかっている。