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2025.03.05

A東京の小酒部泰暉が自身初のタイトルにこだわる理由…「獲った先にある自分の未来を見たい」

  • バスケットボールキング

「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 SEASON」B1第22節は代表活動によるバイウィーク明けの戦い。終盤戦を迎えようとしているレギュラーシーズンにあって、チャンピオンシップ(以下CS)進出を目指すアルバルク東京と京都ハンナリーズの一戦は、第1戦からオーバータイムにもつれ込む大熱戦となった。

 残り時間15秒、前田悟が3ポイントシュートを決めて81-81と追いつく京都を突き放したのがテーブス海。残り時間0.3秒、ドリブルからジャンプシュートを沈め、京都を振り切った。

 第2戦も第3クォーターが終わった時点で55-52とA東京がわずか3点リード。何度も京都を振り切ろうとするが、その都度カムバックされ、セーフティリードを奪えない。

 一進一退の展開が変わったのはオフィシャルタイムアウトを挟んだ前後だろう。終始、京都のエースである岡田を徹底マークしてきた小酒部泰暉が果敢にリングにアタック。ジャンプシュートは決められなくても、ファウルを確実に奪い、フリースローを沈めていく。A東京は残り5分で京都のオフェンスを5点に抑えると、リードを2ケタに広げて、最終スコア78-65で勝利した。

 試合後の取材対応で京都の岡田は、2試合ともマッチアップした小酒部とA東京のディフェンスに言及。「まったく何もさせてもらえませんでした。小酒部選手のプレッシャーはもちろんのこと、抜いたとしても(セバスチャン)サイズ選手や(ライアン)ロシター選手がシュートをブロックしようと狙ってきました。自分のオフェンスパターンがかなり研究されているのがわかりました」とほぞを噛んだ。

 対する小酒部にバイウィークの期間中に“岡田対策”の準備をしたのかと尋ねると、「特別なことはしていませんが、相手の特徴や気をつけなければいけない点を理解しながらやった結果だと思います」とコメント。

 さらに「キャリアを積む中で自分に求められることが変わっていきますし、それができなければプロではない。自分の責任というか、そういう意識が年々上がっている感じです」と、淡々と言葉を重ねた。

 第2戦の決め手となったオフィシャルタイムアウトを挟んでの攻防については、「(外からの)シュートが当たってなかったのですが、ドライブなどでアドバンテージが取れると思って、そこは積極的に行きました」と解説。

 特にエースキラーとしてコートに立つことが多くなったここ数シーズン、非凡な運動能力を活かした激しいディフェンスが武器になった。一方、オフェンスではひとたび調子が悪くなると、シュートを打つことさえしなくなってしまうことも少なくはなかった。

 しかし、今シーズンはどんなときでも貪欲にリングを目指すことが多くなった。その理由を聞くと、「チームがうまく攻められないときの打開策として、自分がアグレッシブにアタックしたりするように心がけています。今日は入らなかったのですが外のシュートなど、その苦しい時間帯に少しでも絡めれば相手もやりにくいと思います」。

小酒部はチームが苦しいときこそ、積極的にリングを目指すという [写真]=B.LEAGUE

 神奈川大学4年次にプロ入りしてから6シーズン目、キャリアを積んで、責任感を身に付け、チームをけん引する実力を蓄えた。そんな小酒部が最もこだわっているのがタイトル獲得だ。

「タイトルは獲りたいですね。決勝の舞台に立つのも人生で初めてですし、楽しみです。獲ったらそこで自分の未来というか、今とは違う自分が見えてくるのではないかと思っています。なので、今はそれを目指していきたいと思っています」

 ミニ、中学、高校、大学、さらにはプロ入り後も優勝に縁がなかった男がついに天皇杯に手をかけた。燃えたぎる思いを胸に秘め、小酒部が初タイトル獲得のためにコートで躍動する。

文=入江美紀雄