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2025.02.03

「強気で怖がらない」神戸ストークスの野溝利一 元関東1部得点王が目指すBプレミア

  • 月刊バスケットボール
第19節終了時点で33勝2敗と、B2首位を独走するアルティーリ千葉。同時点でホームでは17戦無敗で、平均得点B2首位(91.6)、同失点2位(75.6)を誇る、B2最強のパワーハウスだ。

そんなA千葉に挑んだ神戸ストークスは敵地で連敗を喫したものの、特にゲーム1では希望を持てる戦いを見せてくれた。先行したのは神戸で、モリス・ウデゼがペイントで両チーム最初の得点を記録すると、金田龍弥の3Pシュートやネイサン・エイドリアンのジャンパーで11-6とする。その後、逆転されたものの、前半は9点ビハインドと食らい付く。さらに後半も「最終的には18点差付けられてしまいましたが、最後の2分くらいまではしっかりとついていけました。最後の最後で離されたという感覚で、強豪のアルティーリに対して我々はしっかりと戦って競争してくれたと思います」と、プレドラグ・クルニッチHCも評価しており、決して圧倒された試合ではなかった。

A千葉のディフェンスは、ガードからビッグマンまでがバックコートで積極的にダブルチームを仕掛けてくる。ピック&ロールに対してもしっかりとビッグマンがショウディフェンスをし、ここぞとあらばブリッツでボールを奪いにいく攻撃的なものだ。その結果、神戸のガード陣は思うようにボールをプッシュできず、ターンオーバーからの失点や適切なプレーコールができないもどかしい時間帯が多く見られた。一方で、しっかりとオフェンスをクリエイトできれば、21得点を挙げたチョンディー・ブラウンジュニアを起点に張り合える力を持っており、その証拠に、何度も12~15点差を付けられながらジリジリと1桁差に戻す展開を続けていた。



攻めの姿勢を見せた22歳のルーキー

そんな中、特にオフェンスのトーンセットに一役買ったのが控えPGの野溝利一だ。大学のシーズン終了後に特別指定選手として加入した野溝は、山梨学院大のエースとして昨年の関東1部リーグ得点王に輝いている。165cmとサイズはないものの、脚力を生かしたディフェンスと、豪快なホールプッシュ、そしてクイックリリースの3Pシュートが持ち味だ。

この試合でも、他のガード人がなかなか前にボールを運べない中、野溝からはプッシュしてオフェンスのテンポを上げていくんだ、という気概が感じられた。スタッツは3得点、1アシスト、2ターンオーバーと伸びなかったが、3Qに決め切った3Pは点差を5点に押し戻す価値ある1本だった。

「控えから出場して、自分の役割はボールプッシュとディフェンスの強度を上げることだと思っています。サイズもないですし、そういう泥臭い部分やチームの流れを変えることが自分の役割。Bリーグの強度はやっぱり高いですけど、その中でも自分が大学でやってきたことが通用する部分も多くて、(デビューしてからの)6試合で自信を持ってプレーできると感じられました。強度が上がる分、変えなければいけないところは多いですけど、変える部分は変えながら、自分の強みを出せればいいかなと思います」

野溝はこう振り返った。彼の言葉どおり、取材したゲーム1時点で出場はまだ6試合。それだけの試合数ではチームメイトの信頼を完全に勝ち得ることは難しく、この試合でも野溝がノーマークだったいくつかのシーンで、彼にボールが回ってこない場面もあった。それは本人も承知の上で、「まだ入って1か月ちょっとですが、PGというポジションなので、もっともっと外国籍選手や日本人選手からの信頼を勝ち取らなければいけないと思っています。もっと日頃の練習や、こういう試合でアピールしたり、『自分はこういう選手なんだ』とチームメイトやいろいろな選手に知ってもらえたらと思います」と、貪欲にBリーグへのアジャストを目指している。

そんな野溝にクルニッチHCは大きな期待を寄せる。「こういう(強豪相手の)試合で、彼のような(若い)選手がどういうリアクションをするのかは読めない部分もありますが、応援したい気持ちでもあります。大学から出てきて、この雰囲気で強いチームと対戦するということで、彼にとって今日の試合は難しいところもありました。でも、彼の良いところは強気で怖がっていないところ。今日も良い仕事はしてくれたと思っています。まだ6試合しか出場していないし、経験もないです。そういうところでいうと、悪くはないけれど簡単な試合ではなかったと評価しています。チームに合流してから練習ではずっと一生懸命に頑張っていて、それはすごく重要なこと。試合でもエネルギーを出してくれるし、しっかりボールをプッシュしてくれます。まだシステムの理解などは追いつかないところもありますが、出だしのエネルギーを上げてくれること、ボールプッシュしてくれるところは高く評価しています」

野溝がこの試合の3Qと4Qでスターターとして出場したこと、クルニッチHCが彼に対しての質問をしたときに険しい表情から一転して、ニッコリと笑顔で答えてくれたことから察するに、すでに野溝はある一定の信頼を勝ち得、神戸の未来プランに組み込まれているのだろう推察できる。

野溝は神戸をプロキャリアの出発点に選んだ理由の一つに、「将来的にBプレミアでプレーしたい」という思いがあると話した。この日のプレーがトップの世界で十分に戦えるものかと聞かれたら、まだそうではないだろうし、ゲーム2は約3分の出場にとどまった。だが、B1に限りなく近い力を持ったA千葉に逃げずにアタックしたメンタリティーは、すでにトップ級と言って差し支えない。

学生時代の野溝は、東海大付諏訪高時代にほとんど出番がなかったところから、関東1部で得点王に輝くまでに研鑽を積んできた。今度はBリーグで、また1から彼のチャレンジが始まっている。