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2025.02.02

パッシングオフェンスの手綱を握る横浜BC森井健太「ボールと周りを動かすプレーには自信がある」

  • 月刊バスケットボール
今季の横浜ビー・コルセアーズのオフェンスはユニークだ。ピック&ロールを主体とするオフェンスが世界的なトレンドになっている中、彼らはボールを散らし、ペイントを攻め、ウィング選手やビッグマンがゴール下にカットして多くの得点を重ねている。

ゴール下だけでなく、選手たちがオフボールで巧みにスクリーンを使い、ミスマッチを生み出してコーナーやウィングでワイドオープンの3Pシュートを放つ場面も多い。千葉ジェッツとのゲーム2は71-76で敗れたものの、相手の強度の高いディフェンスをかいくぐってゴール下のノーマークを作ったり、外国籍選手のポストアップから逆のウィングにパスを散らしてコーナー3Pにつなげるなど、美しいパスワークを見せていた。

チームもここ数試合は好調で、年明け以降は5勝4敗と勝ち越し。千葉Jとのゲーム1や、2節前の群馬クレインサンダーズ戦でも勝利を収めており、強豪相手にも引けを取らない戦いを見せている。

そんな横浜BCの手綱を握っているのが司令塔の森井健太である。コントロールタイプのガードとして、今季以前から横浜BCで安定した活躍を見せ、昨季は河村勇輝の控えとして試合を落ち着かせる役割を担ってきた。

「堅実」

まさにそんな言葉が似合う司令塔だった森井だが、今季はどこか様子が違う。2試合通して富樫勇樹を追いかけ回し、ゲーム1では彼を今季初の無得点に封じたディフェンスはもちろんすばらしかったが、筆者が「様子が違う」と感じたのは彼のオフェンスだ。



派手と堅実を使い分け
横浜BCのオフェンスを司る

決して点取り屋になったわけでも、シュートアテンプトが飛躍的に伸びたわけでもないが、ドライブするシーンが増え、この試合でも周囲をあっと驚かせるようなフラッシーなノールックパスが何度も見られた。まるで昨季までの河村のように。派手なプレーは森井の印象にはなかったため、そのことについて彼に尋ねた。すると、彼はこう話した。

「オフェンスでの自分の持ち味はアシストの部分が大きいと思うんですけど、特に今年はペイントアタックが増えていると自分でも思いますし、ラッシーコーチ(トゥオビHCの愛称)のスタイル的にも、パス主体のバスケなので、そこは自分にフィットしている感覚もあります。メンバー的にも自分でクリエイトするプレイヤーよりも、合わせてプレーできるメンバーがそろっているので、その良さを引き出すために、そういったプレーが増えているんじゃないかと思います」

パスを回し、カッティングしてイージーバスケットを生み出す──それはまるで、森井の母校・洛南高のスタイルのようにも映る。彼自身も「その通りで洛南高校もパス&ランが昔から伝統ですし、僕もそのバスケが好きでした。B1のチームを見ても、なかなか今の横浜のようなバスケをするところって多くないと思うんです。ラッシーコーチはよく、『コレクティブ』と表現していますが、全員がボールに絡んで自分の良さを出せるのは良いことだと思いますし、僕自身もボールと周りを動かすプレーには自信があるので、その部分は高校時代も含めた今までのキャリア(の経験)が生きているなと思います」



森井が言うように、今季の横浜BCには明確なショットクリエイタータイプの選手は少ない。この試合でゲームハイの26得点を挙げたダミアン・イングルスやゲイリー・クラークらは打開力はあれど、本来は流れの中でのスコアが得意な選手。キング開や須藤昂矢、松崎裕樹ら日本人選手もしかりだ。

だからこそ、今のスタイルは森井に、そしてチームメイトに合っている。トゥオビHCも、「森井選手は自分の強みをよく理解している選手で、その中でもっと彼に求めているのはゲームコントロールのところ。彼がゲームコントロールすると他の選手たちも勢いが付くので、そういうところをもっとやってもらいたいですし、もっとできるはずなので、これからも期待しています」と話し、森井の働きがオフェンスの中核を担っていることを認めている。

前節で川崎ブレイブサンダースを下した後、森井はチームへの自信を以下のような言葉にしていた。「全員がそろったゲームではラッシーコーチが求めるプレーができている自覚もありますし、ここ数試合では勝ち越しています。群馬や宇都宮といった上位チームに勝てる試合も増えてきたので、後半戦はどれだけそういうチームに着いていけるかというチャレンジです。手応えを感じられていると思いますし、若い選手が多い中で自信も少しずつ芽生え始めてきているのかなと思います」

これまでの堅実なゲームメイクに加え、チームを動かすための派手なパスも使いこなす森井。彼と横浜BCの後半戦に、これからも注目していきたい。