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2025.01.28

インカレMVP米須玲音の加入で川崎ブレイブサンダースの走るバスケが進化中

  • 月刊バスケットボール
超満員のファンが詰めかけた「りそなグループB.LEAGUE ALL STAR GAME WEEKEND2025 IN FUNABASHI」は盛況のうちに終了し、2024-25シーズンはいよいよ後半戦に突入した。ここから各クラブがチャンピオンシップ(CS)進出を目指してのバトルがさらに熱を帯びていく。

一方で、前半戦は中地区最下位に甘んじていた川崎ブレイブサンダースの今後の戦いが気になる。というのも、12月28日、29日の年内最終節にホームとどろきアリーナで行われた茨城ロボッツ戦で、特別指定選手(プロ契約)の米須玲音(日本大4年)と山内ジャヘル琉人(大東文化大4年)がついにデビューを果たしたからだ。



苦戦の川崎に一筋の光り

2人の加入は、サンダースファミリーにとっては待ちに待った希望の光と言える。
 
茨城戦のゲーム1から2選手ともに出場機会を得ると、まずは米須が2Qのオフィシャルタイム明けにコートイン。1点ビハインドの状況だったが、いきなり魅せる。ピック&ポップでポジションを取ったロスコ・アレンへの絶妙なパスで3Pシュートをお膳立てし、会場に詰めかけた川崎ファミリーの心をがっちりつかんでみせたのだ。出場時間4分59秒。プロとしてのデビュー戦は、アシスト1、リバウンド2、ファウル1というスタッツだった。一方の山内は試合の終盤にマシュー・ライトに代わって短時間の出場。この日の勝利でチームは連敗を10で止めている。
 
ただ、米須の顔は晴れない。「相手がシュートを外したときに自分から積極的に(ボールを)もらってロングパスを出して流れを変えるという、思い描いていたプレーはできませんでした」と、まだ自身のイメージとプレーとのギャップを感じていたのである。合流してからチーム練習に参加したのはたったの3回というから、それでは米須が得意としているリバウンドからブレイクで走っている味方にロングパスを配給することや、ボールプッシュするプレースタイルをチームメイト(特に外国籍選手)に十分理解してもらえなかったのもうなずける。それでも高校3年時や大学1年時に川崎で活動した当時よりも「余裕を持って落ち着いてプレーできました」と、筋肉がついた上半身同様にたくましいコメントを聞くことができた。
 
そんな米須のプレーをベンチの後ろで見ていた篠山竜青(茨城戦はコンディション不良で欠場)からは、練習でアドバイスをもらったと言う。「プルアップでシュートを打つようになったので、足の使い方や、今日の試合ではハーフタイム中に『ファウルのときはアンスポを取られないように気をつけろ』と言っていただきました」
 
ゲーム1の教訓を持って臨んだゲーム2。米須の武器が試合を支配する。出場時間が22分26秒とゲーム1から大幅に伸び、なんとアシスト10をマーク。リバウンドからのアレンへのロングパスや、アリゼ・ジョンソンへのアリウープパスなど、魅せるプレーの連続だった。クラブも今季初の同一カード連勝で2024年を締めくくることができた。


 
後半戦は厄介な存在になりそう?

年明け最初の仙台89ERS戦は出だしから「メンタル面で負けた」(米須)川崎は、黒星スタート。特に米須はマッチアップした仙台の渡辺翔太らのタイトなディフェンスに終始苦しみ、ボールが回ってこない時間が続いた。仙台の落合嘉朗HCは「(年末の川崎vs茨城は)いい教材になった」と、米須対策は上々だったと話しており、アジャストされた形だ。だが米須は、「パスのところでは出せている部分は結構多いかなと思っています。(Bリーグのサイズや、リーチの長さ等)そういう壁はこれから味わうことになると思いますが、しっかり経験を積んで慣れていければと思います」と冷静だった。
 
そして、ゲーム2の勝利を手繰り寄せたのはファイターであり、キャプテンの篠山竜青。激しいディフェンスでチームメイトを鼓舞し、要所でシュートを決めて貢献。仙台に前日の借りを返した。
 
翌週のファイティングイーグルス名古屋戦はレギュラーシーズンの前半戦最後の2連戦だったが、ここでも1勝1敗。特にゲーム2は米須がスターターに抜てきされての勝利だった。「(スターターに起用されて)少し不安はありましたが…」と言いながらも、出だしに3Pシュートを決めるなど、課題としているシュートでチームを勢い付けた。さらに同期の山内も体の強さを生かして強度の高いディフェンスで存在感を示し、今後に向けてのプラス材料となった。
 
篠山は米須についてこう話した。

「玲音は大学の後輩でもありますし、高校生の頃から川崎に来ていたので、次の“川崎の顔”になってほしいと思っています。でも、だからと言ってルーキーの玲音に重い物を背負わせるつもりもないので、彼らしくやってくれればいいし、ガードのローテーションに入ってくるのはもちろんのこと、チームに新しいボールムーブメントや、展開の速いバスケットを発信してほしいと思っています。そして、もっともっと成長して、いずれは日本代表に名を連らねる選手になってほしいですね。僕も年の離れたかわいい後輩たちにいろいろなことを伝えていきます」
 
1月12日に前半戦の30試合を終えて、川崎は8勝22敗。これまでの川崎は苦しくなると1対1に頼ったオフェンスやターンオーバーからの失点が目立っていたが、米須の加入でパスが回り、速攻の数も増えて、徐々に川崎が目指すスタイルに近付き始めている。後半戦の初陣となった長崎ヴェルカとの2戦は、年末の茨城戦に続く今季2度目の同一カード連勝。オールスター前のFE名古屋戦も含めれば今季最長の3連勝となった。この勢いに安定感が加われば、後半戦の川崎は厄介な対戦相手になるだろう。