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2025.01.22

広島で輝く期待の星…三谷桂司朗の現在地「子どもたちの目標の選手になりたい」

  • バスケットボールキング

◆■難敵と対峙する刺激的な日々

 広島ドラゴンフライズの三谷桂司朗がマッチアップしたのは、自分の道を照らしてくれた憧れの選手。

「僕が筑波大学に入学したいと思ったのは、馬場雄大さんのプレーを見たことがきっかけなので、同じコートでプレーできているのはすごくうれしかった。かっこいいとずっと思っている選手だけど、でも試合が始まったらそこは忘れて、『絶対に勝つ』という気持ちで戦いました」

 1月10、11日に行われた長崎ヴェルカ戦で、23歳の三谷は筑波大学の6つ先輩である馬場雄大とマッチアップを繰り広げ、大きな刺激を受けていた。

「日本人離れの能力を持つ選手なので、守っていてスピードで置いていかれることも経験して、やっぱりとんでもない選手だなと思った。チームとしては勝ったけど、パフォーマンスはまだまだ全然及んでいなかったので、そこはこれからの糧にして、いつか馬場雄大さんと対等に戦える選手になりたいです」

第17節に憧れの先輩とマッチアップした三谷[写真]=B.LEAGUE

 三谷は筑波大学4年生だった昨シーズン途中に地元の広島に加入。今シーズンはルーキーシーズンだが、持ち味の守備力をかわれて馬場のような相手チームのエースと対峙する機会も多く、「相手の方が1つ2つ上手だなと感じるところはたくさんあるので、もっと安定して守れるようにならないといけない。その状況でもキーマンにマッチアップすることを任せられているので責任を持ってプレーしている」と力強く語る。

 昨年末の宇都宮ブレックス戦では昨シーズンMVPに輝いたD.J・ニュービルのマークについて奮闘。「技術は僕よりもはるかに上手だけど、体の強さやフィジカルなプレーは戦えるなとも思ったので、そこは自信につながった」と手応えを得たが、「駆け引きや相手の技術への対応力はつけないといけない」と実力差を肌で感じていた。

◆■ターニングポイント

先発起用される試合も増えてきた三谷[写真]=B.LEAGUE

 コート上で背番号34の存在感が増しているが、シーズンの序盤は苦戦していた。「シュートを打つべきところでドライブを選択して止められてしまい、逆にリズムが悪い中で焦って打ってしまうところがあって、悩みながらのプレーが続いていた」と当時を振り返る。

「自分の中でもっとできるはずなのにプレーでどんどん悩んでしまった。自分はもっとやりたいけど、試合を重ねるたびに迷いのあるプレーになってしまう矛盾があって悶々としていた時期だった。だから、どこかで一発スッキリするようなパフォーマンスをしないと次に切り替えられないと思っていた」

 ターニングポイントは、昨年11月のバイウィーク直前に行われたアルバルク東京戦。広島は開幕前から主力選手を怪我で欠く中、チームを引っ張っていたケリー・ブラックシアー・ジュニアもコンディション不良で欠場となり、日本人選手を中心に戦った連戦だった。特にGame2はニック・メイヨも開始早々に負傷退場となり苦しい状況で連敗を喫したが、その中でも若手の奮起が光った。三谷もチーム最多タイの11得点、5リバウンドと気を吐き、苦境の中できっかけをつかんだ。

「チームとして失うものはなかったし、どんどん積極的にトライしていこうという状況だった。自分も悩む暇もないような状況だったので、思い切ってプレーすることができたし、そこで自分らしさを出せると感じました」

A東京とのアウェーゲームで奮闘した三谷[写真]=B.LEAGUE

 2週間のバイウィークで自分の課題と向き合い、練習に打ち込んだ。中断明けから主力選手たちが戻ったチームとともに、三谷も調子を上げていった。昨年12月11日の長崎戦では出場時間33分13秒、16得点、3スティールといずれもキャリアハイを更新する躍動で勝利に貢献。「バイウィーク後は思い切りよくシュートが打てるようになったし、シュートを見せたからこそドライブが生きるところも練習の成果を試合で出せたので、今は自信を持ってプレーすることができている」と胸を張る。

 今シーズンのリーグ前半戦30試合を終えて、広島は13勝17敗で西地区5位につけている。29試合に出場した三谷は、1試合平均で20分30秒間プレーし5.6得点を記録。「ディフェンスは昨シーズンからチームに評価してもらっているけど、今シーズンはそこにプラスでオフェンスでも日本人選手で得点を取れるところをアピールしていきたいので、後半戦でもっと集中して取り組みたい」と、より攻守での活躍を目指す。

◆■プロの自覚と地元への思い

広島をけん引する中村拓人と三谷[写真]=B.LEAGUE

 広島出身の三谷は、地元の思いを一身に背負う期待の星。大きな期待にはプレッシャーも伴うだろうが、「歓迎してもらえるのはありがたいし、地元ならではの温かさを感じているのでうれしい。すごく感謝しています」と爽やかな笑顔を見せ、「責任は持ちつつ、かといって変に気負うのも僕らしくないのでプレッシャーを感じずにのびのびすることで活躍できると思っている」と自分らしさを貫く。

 地元で活躍するプロ選手として小学校訪問などで子どもたちとの交流も行なってきた。バスケットボール選手に憧れた三谷も、いまでは憧れられる存在。「前までは僕も子どもたちの立場だったので最初の頃は不思議な感じがしたけど、いまは子どもたちの目標の選手になりたいという思いでやっているし、地元出身の選手として地元に貢献したいので、これからも積極的に取り組みたい」と話し、将来を見据えてさらなる飛躍を誓う。

広島市出身の三谷はホームタウンへの思いも強い[写真]=B.LEAGUE

「地元に支えてもらってきたので、広島の地には恩返ししたいとずっと思っている。少しでも長くこのチームで活躍し続けられる選手になりたいし、そのためには日本人選手で平均得点2桁を取れるようになるのが目標。選手としての価値にもつながるので貪欲に目指していきたい」

 コート上で自信に満ちた三谷のプレーがまた新たな夢や憧れを生むはずだ。広島の期待の星は自分らしく輝き、バスケでつながる風景を明るく照らす。

取材・文=湊昂大