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2025.01.13

千葉ジェッツとの大激戦を制した越谷アルファーズ、星川堅信の冷静「セレブレーションをしてる暇があったら…」

  • 月刊バスケットボール
ファイナルスコア91-89。

B1レギュラーシーズン第17節のゲーム2、越谷アルファーズはホーム越谷市立総合体育館で千葉ジェッツを撃破した。リードチェンジ16回、同点13回、そして決着はオーバータイムにもつれ込む、まさしく死闘だった。

大半の時間で先行したのは越谷だったが、千葉Jは富樫勇樹と渡邊雄太を中心に食らいつき、越谷が差を広げようとすれば2人が3Pシュートやバスケットカウントといったビッグプレーで流れを断ち切り、4Q残り27秒に富樫のプルアップ3Pが決まって千葉Jが逆転(77-79)。しかし、2度のタイムアウトを経て越谷はティム・ソアレスが残り0.6秒でティップショットを決め、試合はオーバータイムに。

この5分間でも、越谷がリードを奪えば千葉Jが追い付く展開の中、またも最終盤で前に出たのは千葉J。オーバータイム残り1分27秒で富樫がレイアップをねじ込み3点リード。しかし、越谷もフリースローで1点差に詰め、直後のポゼッションで千葉Jのターンオーバーを誘発。逆転の望みをかけた最後のポゼッションでLJ・ピークがドライブし、井上宗一郎にパスアウトすると、井上は苦しい体勢ながら残り5.4秒にバンクショットでのステップバック3Pをねじ込み、結果的にこれがゲームウィナーとなった。

井上はキャリアハイの17得点と5本の3Pを成功。前日のゲーム1でクリストファー・スミスにブザービーターを決められて敗れた越谷にとっては、悲願の千葉J戦初勝利となった。


キャリアハイの活躍にも
冷静だった星川堅信

ビッグショットを決め切った井上やリバウンドに飛び続けたソアレス、ゲームをコントロールし続けたピーク、ファウルアウトするまでハッスルしたジェフ・ギブスと市場脩斗など、この試合の越谷は7人ローテーションの各選手がそれぞれに仕事をこなし、出番がなかったほかの選手もベンチからチームを鼓舞し続けた。

その中でもう一人、星川堅信のパフォーマンスに触れないわけにはいかない。彼はこの試合で3P3本を含むキャリアハイタイの19得点(うち4Qとオーバータイムで11得点)と6リバウンド、5アシスト、そしてターンオーバーはゼロ。プレータイムはB2時代を含めても自己最長の42分28秒で、エフィシェンシー(得点、リバウンド、アシスト、ブロック、スティールの合計から2P、3P、フリースローの失敗数とターンオーバー数を引いた総合的な貢献度)はチームトップの+25だった。これらの数字から、彼がいかに効率的かつコンスタントに活躍し続けたかが分かる。

安齋竜三HCは星川をはじめとした若手のパフォーマンスをこう評価した。

「何かを変えなければいけないと僕は常に思っていて、何を変えたらこの組織が強いチームになるかを考えた結果、今日は(ローテーションの)人数を絞って戦いました。その中で市場と堅信はこのチームの将来の核となる選手になってもらいたい気持ちもありますし、やっぱりこういう本当のトップの選手たちとの削り合いを経験して、自分に何がもっと必要なのかを分かっていくべきだなと思います。今日はある程度、プレータイムを与えようと思っていましたし、それに応えてくれるようなパフォーマンスも多かったのかなと思います」



目に見えるスタッツ以外の働きもすばらしかった。この2日間、星川と市場は富樫にフェイスガードでマッチアップし続け、何度も富樫をタフなシチュエーションに追い込んだ。それでも点を取り、チームを動かしてくるところが富樫が富樫たるゆえんだ。

星川は「富樫選手は日本を代表するポイントガードで、もちろん気は抜けないなと感じました。誰が相手でも気は抜けませんが、富樫選手はずっと気を張っていなければいけません」と語った。身体も頭もフル回転で常に120%の集中力で守っても、この試合では富樫に23得点を献上した。ゲーム1も含めて、星川にとってはこれまでにない経験だったに違いない。「富樫選手はフェイクも上手で1個のズレが命取りになるという印象を受けたので、やり続けることの大切さを感じました。(ポジショニングなどを)1つでも間違えると、脚力でカバーすることなどができない感じがしました。他の選手は例えば、バンプで強めに当たって少し遅れたとしても、急いで戻ることでカバーできたところもあったんですけど、(富樫を相手には)そういうのはできない感じがしました」

この経験をさらなる成長の糧としていかなければならないし、星川がもう一皮むけることで、リーグ後半戦の越谷のスタンダードはより高いものになっていくはずだ。この試合では富樫の他にも渡邊や原修太、クリストファー・スミス、場合によっては千葉Jのビッグマンにもスイッチして、ディフェンダーとしての幅広いポテンシャルを見せた。



そんな星川について、井上は「練習中は竜三さんにめっちゃ怒られていますから」と笑った。そのことを星川に尋ねると、彼は淡々とこう答えた。

「期待の表れだと感じているので、もちろん竜三さんに指摘されたときは、またミスをしたらどうしようといった気持ちもあります。それをなくすためにちゃんとした準備が必要だし、そこに負けていてはプレーになりません。次のワンポゼッションをと集中して良いパフォーマンスが出せたらなと考えています。怒られ続けて同じミスを繰り返していたら成長もないし、そうなっていたらいずれ言われなくなって試合に使われなくなると思います。なので、今日できなかったことは次できるようにと思っています」

星川は学生時代から淡々とプレーし、どんなビッグプレーが決まっても感情を表に出すことはあまりなかった。この試合で4Qの勝負どころでタイムリーな3Pを決め、千葉Jがタイムアウトを要求したときもチームメイトが湧いている中で決めた本人は冷静だった。「昔から『もうちょっとガッツポーズとかすれば?』って言われたりするんですけど、竜三さんとかコーチ陣からしたらセレブレーションをしてる暇があったら、前からガードにプレッシャーをかけてほしいと思っているだろうし、僕もそっち側の考えなので、シュートが入ったのは良かったけど、次はディフェンスだからっていう感じです」

盛り上がることはもちろん重要で、それによってチームの士気が高まる。だが、一人くらい星川のような考え方の選手がいてもいい。この試合の星川は、大激戦となった試合の興奮とは裏腹に、プレーでもメンタルでも一番安定していた。