琉球ゴールデンキングスの戦術の幅を広げるアレックス・カークのさらなる伸びしろ「ベンチスタートにはまだ適応しているところです」
「多くの選手がいつもと違う役割をこなしながらステップアップしてくれました」
琉球ゴールデンキングスは12月7日、8日とホームで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。価値ある同一カード連勝を達成した。
2試合目、名古屋Dはスコット・エサトンがコンディション不良で欠場。琉球もケヴェ・アルマ、平良彰吾が欠場し、さらに岸本隆一が試合開始早々に負傷退場と、両チームともに苦しい戦いとなった。名古屋Dがゲーム1のリベンジを果たすべく得意のトランジションを出し、序盤から2桁のリードを奪うものの、琉球は第2クォーター終盤からゴール下のリバウンド争いを制して流れを取り戻し、勝ち切った。
特に、ゴール下で存在感を発揮したのがアレックス・カークで、27分22秒のプレータイムで17得点、さらに9つのオフェンスリバウンドを含む15リバウンドとダブル・ダブルの活躍だった。
カークは、「修正しないといけないミスもありましたが、個人的にはOKと言えるプレーでした」と試合を振り返る。そして、故障者続出の穴を埋めた選手たちの奮闘があってこその勝利と強調した。
「セカンドユニットを誇りに思います。チームとして出だしはスローでしたが、セカンドユニットが入ってとても堅実なプレーができました。ケヴェが欠場し、キシ(岸本)はすぐに負傷して、彰吾も故障でいない中、多くの選手がいつもと違う役割をこなしながらステップアップしてくれました。そのおかげで、チームとして仕事を成し遂げることができました」
本人は謙遜するだろうが、この試合において誰よりもステップアップしたのがカークだった。アルマの欠場で出番が増えたジャック・クーリーとのツインタワーでゴール下を支配。また、ゴール下から離れたところで粘り強いディフェンスを見せることで、クーリーとの同時起用によって生まれるスピードの穴を最小限にとどめるハッスルプレーも光った。
今シーズンのカークは、開幕から過去2シーズンと比べてコンディションが大幅に向上している。そして最近はさらに動きのキレが増している印象だ。桶谷大ヘッドコーチは「今まで普通に下がって(相手を)守っていたのが、この2試合は(相手のスクリーンプレーに対して前に出て守る)ハードショウもしていました。いろいろと手札を増やしていけるのは間違いなくアレックスのコンディションがいいからです」と、カークの調子の良さがもたらす恩恵を語る。
「今はベンチからチームにエナジーをもたらすことにフォーカスしています」
カーク本人もコンディションの良さに自信を見せているが、まだ本領発揮とは言えない模様だ。「ベンチから出ることについて、僕が歳をとったことでよりアジャストするのは難しくなっているかもしれないです」とカークは語る。
「今はベンチから出て、チームにエナジーをもたらすことにフォーカスしています。キャリアのほとんどを先発でプレーしていました。昨シーズンとアルバルク東京の最後のシーズンの2年間はベンチスタートですが、それでも慣れるのは大変です。これは大きなアジャストです」
さらに続ける。「例えば後半、最初にコートに入るのが第3クォーターの8分が経過した後だったりします。これは難しいことです。それでもしっかりとプレーするためにすぐエナジーを出すための準備を大切にしていますが、まだ適応しているところです」
この2試合は、名古屋Dの今村佳太、琉球の伊藤達哉にとって昨シーズンまで所属していた古巣対決となり、コート上で元チームメートとの再会を楽しむ姿が多く見られた。カークはA東京での在籍初期の同僚だった名古屋Dの齋藤拓実との再会に笑顔を見せていた。
「彼(齋藤)のことをとてもリスペクトしています。最初の2年間、彼とA東京で一緒でした。今、彼はリーグを代表するポイントガードになっています。A東京での彼は、安藤誓哉(現島根)、小島元基(現SR渋谷)に次ぐ3番手のポイントガードで、田中大貴(現SR渋谷)も司令塔の役割をこなせるので出番は少なかったです。彼にとってタフな状況だったと思います。ただ、練習での彼は素晴らしいプレーを見せていて、試合に出た時はアドバンテージを生み出していました。彼のプレーを見るのは好きです。人間的にも素晴らしく、彼と対戦するのを楽しみにしていました」
最後に改めて強調したいが、カークは起用法について全く不満を持っていない。ただ、ベンチスタートからもっと良いパフォーマンスを見せることができると、現状の自分に満足していないだけだ。現時点で昨シーズンからプレーの質を大きく向上させている彼が新たな役割へのアジャストを終えた時、どんなプレーで琉球の戦術の幅を広げてくれるのか。大きな楽しみだ。