千葉ジェッツを強豪チームたらしめた池内勇太GMの理知と情熱(後編)「今シーズンの目標は獲れるタイトルを全部獲ること」
ジェッツと共に自分自身も成長している
弱冠30歳で千葉ジェッツのGMに就任し、以来6シーズンにわたって編成部門のトップとして腕を振るう池内勇太にチーム作りの哲学を聞くインタビュー。後編ではジェッツというクラブにおける組織論や今シーズン抱いている野望について話を聞いた。
──ららアリーナ 東京ベイで華々しいシーズン開幕を迎えられたものの、攻守両面で大きな役割を果たす渡邊雄太選手が開幕早々に負傷離脱。GMとしては頭が痛かったのではないでしょうか。
シーズン中には必ずいくつかの試練が訪れるものなので、あくまで『1つ目の試練』です。千葉ジェッツのGMに就任して順風満帆に勝ち上がって優勝まで至ったシーズンは一度もありませんし、そこをチームで乗り越えていくことでドラマが生まれると思っています。他の選手たちが「雄太の欠場をカバーしよう」と必死で努力していますし、チーム力が上がる1つのきっかけになるはずなので、5月、6月にチームが一番良い状態になるためのプロセスととらえています。
──ポジティブですね。
こういうポジティブさが今後に繋がるというのは、これまでの経験上、強く感じます。物事がうまくいっていないときって、どうしてもエネルギーが内側に籠もってしまって、誰かを敵にしようとしたり必要以上に落ち込んでしまったりするので、チームのトップにいる人間は、スタッフや選手たちにポジティブなエネルギーを渡していかないといけない。「エネルギーは外に飛ばして発散させようね」ということはよく話しています。
──昨シーズン、千葉Jはケガ人が続出し、チャンピオンシップを逃す瀬戸際まで追い詰められました。そういった経験もマインドセットに生きていますか?
そうだと思いますね。トップの人間は決してブレてはいけないと常に思っていますが、改めて理解しました。「チーム編成のトップである自分がどうにかしなくては」という苦しさは誰にも打ち明けられなかったですし、結果的には二冠とれたのでうまくいったこともありますけど、めちゃくちゃしんどい意思決定もしました。私もジェッツと共に成長させてもらっているなという思いは強いですね。あの時、みんなでしんどい思いをしたという経験は、私だけでなく選手やスタッフたちにも生きていると思います。
──GMとしてのチーム作り、というところから少しズレますが、同席してくださっている広報スタッフを含め、千葉Jはフロントスタッフと現場スタッフが密接にコミュニケーションを取っている印象があります。
クラブによってはフロントとチームがもっとセパレートしているところもあると思いますが、私たちは違います。ビジネスである以上、選手はクラブの商品であって、その商品の価値を高めていくことは何より大切なことです。フロントが一丸となってそれを追求しているのだから、同じ組織にいるチームも同じ気持ちを持ってやっていこうということは常日頃から選手たちにも伝えています。
私の下にはユース、アカデミー、広報(チームブランディング)などに携わるメンバーがいますが、彼らはよりぎゅっとワンチームという感覚です。YouTubeなどを含むオフコートの活動は選手にも良い影響を与えますし、ましてはチームにも良い影響を与えますから、協力していこうねと。そういう組織を作っています。
シーズンが終わったときにみんなで笑いたい
──こうやってお話をうかがっていると、池内GMはGMの領域の外にも意識を向けられているのがよくわかります。
1つの会社を動かしているような感覚はあるかもしれません。特にチーム側に関わるセクションは、全部自分でまとめているという感じなので。チームスタッフの組織図を作って、それぞれに「あなたの役割はこれだよ」という意識を持たせて、それぞれが私と同じような目を持ってマネジメントをしたり、ブレイクダウンさせるというやり方が、今は結果的にうまくいってると思いますね。
「ヘッドコーチやGMがいなくなったらチームが終わりました」なんてことには絶対にしたくないので、どんどん他のメンバーに権限を渡して、意思決定をさせています。今は、誰が抜けてもベーシックなものが変わらない組織にするために、スタンダードをどんどん上げていこうというフェーズです。
──あらためて、やり甲斐のある仕事ですね。
やり甲斐、めちゃくちゃありますね。想像できないことが起こって、いろいろな感情が芽生えて、それをどう乗り越えていくかを考えて行動する。そしてそれを乗り越えて結果として表れた時に、選手やスタッフが良い顔をして「良かったね」って言い合える。それがこの仕事の醍醐味というか、本当に1番楽しいところだなと思います。
──ズバリ、今シーズンの目標を教えて下さい。
選手たちとは「Bリーグのチャンピオンを筆頭に、日本で獲れるタイトルは全部獲ろう」と話しています。天皇杯は2018-19シーズン以来の3連覇がかかってますし、Bリーグチャンピオンにもなって、FIBAが主催する『バスケットボール チャンピオンズリーグ アジア』でもトップを獲る。かなり高い目標ではあるんですが、今シーズンはそれを共通言語にしているので、上しか見ず、みんなで頑張っていければなと思っています。
──そのような結果を得るまでのプロセスについてはどのようにお考えですか?
ヘッドコーチ(トレヴァー・グリーソン)が「私たちはブラザーでありファミリーだから、コートに立っている5人が助け合いながらプレーしよう」とよく言うんですが、それはチーム全体でも同じ。うまくいかない時にはネガティブになったり下を向くこともあると思いますが、チームで課題を解決して、目標にひたすらにフォーカスしてやっていければいいなと思っています。ジェッツはウイニングカルチャーを築き上げて来られているチームだと思っていますが、もっともっとブレない強いものを今シーズンで作り上げていきたい。「絶対勝つ」という気持ちでやっていきたいです。
──最後にブースターの方々にメッセージをお願いします。
今シーズンは今までで「1番良かった」と言えるシーズンに必ずするためにチーム一丸、ジェッツ一丸で頑張っていきます。ただ、それはブースターの皆さんのサポートがないと絶対に達成できないと思っています。ジェッツファミリー一丸で最高の景色を作り上げて、最後にみんなで「良かったね」と笑えるシーズンにできればいいなと思っています。