地区最下位と苦境が続く川崎ブレイブサンダース、前向きな姿勢を失わない篠山竜青「焦って顔をこわばらせて勝てるならそうします」
的を絞られやすいオフェンスを封じられてA東京に完敗
川崎ブレイブサンダースは、バイウィーク明けとなる11月30日と12月1日にアルバルク東京をホームで迎え撃った。黒星先行と低迷した悪い流れを、リーグ最高勝率タイの相手を撃破することで変えたかったが、30日は66-88、1日は62-80といずれも大敗した。
この2試合ともに、川崎は前半に限ればリーグ随一のプレー強度を誇るA東京相手にもフィジカルで負けずに競り合った。しかし、後半に入ると、強度と集中力を維持できずに失速。試合の途中から川崎のオフェンスにアジャストしたA東京と、チームとしての遂行力に大きな違いが出てしまった。
川崎のチームリーダーである篠山竜青は、このようにA東京との連戦を振り返る。「昨日の敗戦を踏まえて少し守り方を変えたりして試合に入りました。前半は自分たちのリズムでプレーできていたと思います。ただ、昨日同様に第3クォーターくらいから点が止まってしまうと、そこから打開するのが難しい試合になってしまいました」
「ディフェンスからのファストブレイクだったり、ホールがよく動いている時はオフェンスが良い形で回りますが、そこを止められてハーフコートオフェンスになった時、ゲームコントロールの部分であったり、どこを起点にするかというところで効果的なオフェンスに繋げられなかったのが今節の反省点になるかと思います」
篠山がそう語るように、川崎は2試合ともに立ち上がりは自分たちの持ち味であるトランジションによってA東京の堅守を攻略した。アリゼ・ジョンソン、ロスコ・アレンという推進力のあるフォワードが、リバウンドを取ると自陣からボールプッシュ。スピードに乗ったままゴール下への力強いアタックを繰り出すことで、A東京のディフェンスが準備を整える前に得点し、自分たちのリズムへと持ち込むことができていた。
このフォワードコンビによるアタックは、リーグ有数の破壊力を誇る川崎の大きな武器だが、オフェンスでこの2人への依存度が高すぎる。当然だが、インサイドで身体を張って守ってリバウンドを取り、そこからボールプッシュをしてシュートまで持ち込み、またすぐに自陣まで戻って守備をする動作を繰り返すことは大きな負担となる。
2人のトランジションオフェンスにアジャストされた場合、ハーフコートオフェンスではマシュー・ライトの個人技に頼る場面が多い。しかし、昨シーズンまで絶対的なエースとして君臨したニック・ファジーカスはもうおらず、彼のようにタフショットをねじ込む点取り屋はいない。相手にとって川崎のオフェンスは、トランジションさえ止めれば的を絞りやすい。
「どこからでも攻めるのが目指すスタイルです」
A東京との2試合は、この課題があらためて浮き彫りになった。2試合目はそもそもチームの得点自体が少なかったとは言え、後半に日本人選手が挙げた得点はわずか3。さらに後半を通してシュートを放った日本人選手が得点を挙げた小針幸也だけというのは、たまたまで片付けられない課題だ。
今のチームオフェンスを篠山はこう見ている。「日本人選手を含め、どこからでも攻めるのが目指すスタイルです。一つのセットプレー、アーリーオフェンスの中で、多くの選手が絡んでボールを動かせるシンプルなシステムを取り入れている中、各選手がもっとアグレッシブにならないといけない。単発なオフェンスになっている時間帯もあります。いろいろと試行錯誤をしている中で、状況判断がまだまだなのかと思います」
そして、「ひとり一人にチャンスは必ずあるので、どれだけリングを見て攻め続けられるのかは毎試合問われている部分だと思います」と、必要なことを語る。現在、川崎は4勝12敗。Bリーグ開幕後では初めてとなる下位に沈んでいる。この苦境から脱するため、「常にベクトルをチーム、自分に向けることが求められている」と篠山は考える。
そして、川崎にはそれができるメンバーが揃っていると自信を持っている。「苦しい状況、中々と勝ちがつかない中で誰かのせいにしたり、あいつがパスをくれない、シュートを決められないからパスができないとなったらチームは壊れていくと思います。川崎に関してはそういう選手はいません。みんなもがいて自分にベクトルに向けて、チームのために常に何ができるかと考えてやれるメンバーが揃っていて、実際にコツコツできています」
結果ですべてが評価されてしまうことは、篠山も十分に理解している。だが、負けが続く中でも「悲壮感であったり、ネガティブなことばかりではないです。目に見えづらいところですが、成長している部分を僕の中では感じます」と明るい兆しが見えている。
「前向きにやる姿をファンの皆さんは見に来ている」
「下を向いて危機感を持って、焦って顔をこわばらせてやって勝てるならそうしますけど、そういう世界ではありません。ひとり一人が前向きにやる姿をファンの皆さんは見に来ていると思います。練習中は別として、皆さんの前で試合でプレーしている時、チームは前向きにやれていると思います」
篠山が語るように、今の川崎は各選手が課題にしっかりと向き合い、着実に前進しているのは間違いない。だが、進歩しているのは川崎に限らず、どのチームも試行錯誤の末にチーム力を高めている。川崎がここから成績を向上させていくには、進化のスピードで他チームを上回らないといけない現実がある。
最後に川崎がシーズン負け越しを経験したのは、NBLより前のJBL時代、北卓也GMのヘッドコーチ1年目である2011-12シーズンの8勝34敗だ。だが、翌シーズンにファジーカス、辻直人が加入すると一気に成績を向上させ、ファジーカス引退の昨シーズンまでずっと上位の成績を残していた。
ファジーカスは引退試合を終えた後、次のように愛着あるチームにエールを送っていた。「これからも川崎には強豪としての文化を残してほしい。僕自身は川崎、日本代表でもずっと勝ちにこだわってきました。これまでと同じく勝ちに貪欲なチームであり続けてほしいです」
引き続き川崎が強豪としての文化を残していけるのか、今が大事な踏ん張りところだ。もちろん現場だけではなく、トップチーム人件費を含めた組織全体として勝ちに貪欲であることへの覚悟も問われている。