2024.12.02
約2か月ぶりに復帰の渡邊雄太がアジャストしていくべき2つの壁「ゲームシェイプに戻すためにはゲームをするしかない」
バイウィークが明け、レギュラーシーズンが再開したB1リーグ2024-25シーズン。ホームに琉球ゴールデンキングスを迎えての2連戦を戦い抜き、千葉ジェッツの渡邊雄太は安どの表情を見せた。6シーズンにわたるNBAの旅路を終え、千葉Jに電撃加入した渡邊だったが、宇都宮ブレックスとの開幕2戦目で足首に重度の捻挫を負い、以降のレギュラーシーズンと日本代表戦を欠場。彼にとって、この琉球とのシリーズは約2か月ぶりのとなる実戦の場だった。

初のバック・トゥ・バック
「今日も足をつるかと思って…」
迎えたゲーム1は3Qに一気に突き放した千葉Jが77-65で快勝し、渡邊自身も約28分のプレータイムで8得点、7リバウンド。フィールドゴールこそ4/15(3Pは0/5)と低調に終わったが、ダンク2本で会場を沸かせるなど、トータルするとまずまずの活躍を見せた。2戦目は苦しんだ。前日同様に琉球はペイントエリアで得点を重ねつつ、ゲーム1では決まっていなかった3Pシュートを松脇圭志と荒川颯が前半で3本ずつ射抜く。ケヴェ・アルマや岸本隆一の積極的なペイントアタックも効果的に決まり、前半を終えて42-45と千葉Jはリードを許す展開だった。
「自分たちも相当気合いを入れていたつもりだったんですけど、1Qの入り方をはじめ、前半は特に向こうのペースでバスケをされた感覚でした」。渡邊は前半をこう振り返る。
最終盤まで接戦が続き、最後は富樫勇樹の連続7得点で一気に突き放して勝利(93-80)したものの「もしこれアウェーだったら同じような展開にはなっていなかった可能性も全然あります」と渡邊。ヴィック・ローを欠きながらもこれだけの好ゲームを展開した琉球へのリスペクトと、自分たちへの危機感──その両側面を感じさせる言葉だった。

2Qには豪快なダンクで喝を入れた
千葉Jデビューからわずか2試合で戦線離脱してしまった渡邊にとっては、コンディションを戻すことはもちろん、Bリーグのスケジュールや選手個々のプレースタイルにアジャストするための時間を失ってしまったことも大きかった。特に同じ相手との連戦が毎週末行われるBリーグのスケジュールは世界的にもかなり珍しい。
渡邊は「NBAでも年間10試合ぐらいはバック・トゥ・バック(連戦)がありますが、Bリーグは毎週末がそうなので、そこに対しての体(コンディション)の持って行き方は結構大変だったりしますし、昨日の試合では足がつってしまったので、今日もつるんじゃないかと思って、途中ヒヤッとする場面も何回かありました」と話していた。
全力でプレーしたいけれど、まだ完全なゲームシェイプではないために、無意識にセーブしてしまっている。「昨日足をつったり、今日もそれを怖がったりしている時点でゲームシェイプとはかけ離れている状態なので、そこは1日でも早く戻さないといけないところ」と渡邊。そのためにも、とにかくゲームをこなしていくことが重要だと言う。「今月はここに水曜日の試合も挟まったりと、タフなスケジュールが続くので、しっかりと体を…昨日も言ったんですけど、ゲームシェイプに戻すためにはゲームをするしかないと僕は思っているので、昨日が28分で今日が33分プレーできたのは好材料だったかなと思います」

日本人選手特有の
プレッシャーDEFへのアジャスト
もう一つ、渡邊がアジャストしていかなければならないのが、日本人選手特有の激しいボールマンプレッシャーだ。琉球のガード陣はもちろん、Bリーグでは多くのクラブがガードがフルコートでぴたりとボールマンをマークする運動量を生かしたディフェンスを戦術に組み込んでいる。特に本来ハンドラーではない選手はガード陣にダブルチームを仕掛けられて“ディフェンスのターゲット”にされてしまうことも多い。試合中、常に前からプレッシャーをかけ続けるようなディフェンスをするチームは、NBAではまず見られない。ゆえに渡邊もアジャストに苦戦するシーンが見受けられる。実際、ゲーム1では4本のターンオーバーを犯し、ゲーム2ではそれを2本にとどめたものの、その2本目は相手のダブルチームでリズムを乱された後に起こったものだ。渡邊は相手のプレッシャーディフェンスに対して何度かファウルではないかとアピールする場面があったが、笛は鳴らなかった。
この点について富樫は「多分この2試合は彼にとってベストパフォーマンスではなかったと思いますけど、でも焦らずに日本のスタイル…日本人選手のディフェンスの仕方っていうのはサイズがない分、NBA選手と違う守り方だと思うので、そこに慣れるまでには少し時間がかかるんじゃないかなと思います」と話していた。コンディションの面とリーグのスタイルへのアジャスト。渡邊はこれから先、チームの勝利を考えながら2つの課題に取り組んでいくことになる。

そんな渡邊に対してトレヴァー・グリーソンHCは「開幕戦して2試合目で雄太がケガをしてしまって、チームとして大きな穴になってしまうのかなと思いました。2年間、彼をNBAで見てきてワークアウトを毎日しているのを見ていた中で、本当に彼の(手足の)長さは特徴的で、リバウンドやボールを奪った後のボールプッシュ。ダンクもできるような身体能力の高さも持っています。それが欠けるとなったので」と危惧していたことを明かしたが、一方で「その間に大きかったのは田代(直希)、原(修太)、金近(廉)、(クリストファー)スミスとウィングの選手がたくさんいたこと。そして、彼らそれぞれがステップアップしてくれました。それはすごく大きかったですし、チームの武器になったかなと思います」と渡邊不在の間にステップアップしたウィング陣の活躍を称えた。その上で渡邊が復帰したことで「ビッグラインナップもできれば、逆にスモールに、今日は彼が5番をやる時間帯も少しありました。彼の柔軟性はやはりチームにとって大きいです」とより盤石なローテーションを組めると自信を見せた。
冒頭の渡邊の言葉を借りるならば、「選手はプレーしてなんぼ」である。ケガをして良かったということはないだろう。だが、渡邊のケガをきっかけにさらに戦い方のバリエーションを増やせたことは、千葉Jにとってプラスの結果を生む可能性が高い。
渡邊はNBAの過酷な環境で6年間も戦い抜いた男である。Bリーグのスタイルにもさほど時間を要さずにアジャストしてくるはずだ。この試合で、今度はディー・ジェイ・ホグが渡邊と同様にシュート後の着地で足首をひねり、コートを後にした。彼の容体は分からないが、今後数試合を欠場する可能性もある。なかなかフルメンバーがそろわない千葉Jだが、現時点でも爆発的な力を見せ付けているだけに、彼らがより成熟し真の意味で完成系になったとき、どんなゲームを見せてくれるのか。その期待値は計り知れない。

ゲーム2では18得点、10リバウンドを記録した
記事提供:月刊バスケットボール