デレク・パードン(アルティーリ千葉)が手にした特別な勲章——通算100ダンク、1000得点達成への素直な心境
アルティーリ千葉のセンターフォワード、デレク・パードンが、今季に入って通算100ダンク(10月18日のライジングゼファー福岡戦、通算19人目)、1000得点(11月3日の愛媛オレンジバイキングス戦、通算193人目)と相次いで記念すべきマイルストーンに到達した。100ダンクは通算63試合目、1000得点は通算69試合目での達成だった。
100-90で勝利した10月26日の富山グラウジーズ戦で1000得点まであと33に迫っていたパードンは、個人記録について「とてもクールなことです」と素直な心境を語っていた。
「僕にとってA千葉の一員としてプレーする日本でのキャリアは、これまでで始めて2年連続同じリーグにいるという意味でも特別なもの。記録の形で足跡を残すことができるのは、やっぱりうれしいし、クールなことです」
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パードンに浮かれたような態度はまったくない。もの静かな口調から伝わってきたのは、ここ日本でかつてなかった好機に恵まれた幸運に感謝する思いだった。パードンはリバウンドに関して、すでに昨季のうちに500本の節目を越えている。しかし、B2で王座を狙う強豪チームに2季続けて所属し、その結果として得られた記録は感慨もひとしおのようだ。
パードンは今季、11月17日までの15試合を終えた時点で平均出場時間31分52秒の(チーム1位)、13.7得点(同3位)、10.9リバウンド(同1位、リーグ5位タイ)。開幕からの13連勝(レギュラーシーズンでは2季またいで26連勝)を含む14勝1敗でB2全体1位と好調なA千葉の屋台骨と呼ぶべき活躍ぶりだ。力強い左手でぶち込むウインドミル・ダンクや、対照的に柔らかなタッチのベビーフックは対戦相手にとっては脅威。今季はそこに、3Pショットという武器も加えつつある(11月17日時点で5本中2本決め成功率40.0%)。これはアンドレ・レマニスHCと話し合って、チャンスが来たら狙っていけるようオフから練習を積んでいるのだそうだ。
チームとして56勝4敗(勝率.933)という歴史に残る好成績を残した昨季も、パードンの平均出場時間29分33秒はチーム1位だった。この数字はB2全体でも、51試合以上(レギュラーシーズン全体の85%以上)出場したプレーヤーの中で9位だ。欠場は2試合のみで平均14.8得点(チーム2位)、9.7リバウンド(同1位、リーグ7位)。リーグ全体でもトップレベルの勤勉さと安定感を物語る数字が並ぶ。
A千葉はB.PREMIER参入決定という成果を手にしたが、ホームゲームのたびに5000人を超える大観衆を呼び寄せるだけの魅力的なバスケットボールを見せ続けられるかどうかは最重要課題の一つ。そのキモというべき要素を創る上で、パードンは非常に大きな貢献をもたらしている。そうした意味合いからも、新たに達成した2つのマイルストーンは称えられてよいのではないだろうか。
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乗り越えるべき挑戦
ただし、パードンの日本でのキャリアすべてが思いどおりだったわけではない。
昨季のB2プレーオフで、越谷アルファーズと対戦したセミファイナルGAME2は、第4Q終盤まで1点を争う大激戦となった。残り16秒、70-71でリードしていたのは越谷だが、追いかけるA千葉は絶好の逆転機を迎えていた。杉本慶のドライビングレイアップがゴールをとらえきれなかった後、猛然とボールに食らいついたパードンは、左手でボールをわしづかみにして着地。直後にしぶとくゴールを狙ってファウルを獲得し、2本のフリースローを得た。
残り時間は4.6秒。1勝先行されていたA千葉は、この試合に負ければB1昇格への希望が途絶えてしまうが、逆転勝利となれば、仕切り直して翌日GAME3をみたびホームで戦える。バスケットボールにおいて、これ以上ないほどのプレッシャーがかかるフリースローラインへの一人旅だった。しかし無情にも、パードンの手から放たれたボールはネットを揺らすことなく2度ともミスに終わる。その後も形勢が変わらないままA千葉は72-75で敗れた。
プロならば決めなければ…という厳しい見方もあるだろう。しかし、そんなに単純なものではないと理解しているファンも多いに違いない。
あの状況下、パードンにはメンタル面のプレッシャーだけではなく極度に大きな身体的負荷もかかっていた。オーバータイムの末に敗れたGAME1でのパードンは、41分8秒プレーして13得点、12リバウンド、1ブロックを記録。続くGAME2でも出場時間は31分39秒と長く、10得点に12リバウンド、1ブロックと貢献度も高かった。2試合の出場時間は合計72分47秒で両チームを通じて最長。それも多くの時間、アイザック・バッツ(208cm、134kg=現・ファイティングイーグルス名古屋)や小寺ハミルトンゲーリー(206cm、130kg=現・福井ブローウィンズ)という、パードン自身(203cm、107kg)よりも一回り大きくズンと重いビッグマンとマッチアップしていた。
そんな相手とリバウンド争いで押し合い、頭越しにレイアップやダンクを何度もねじ込み、こぼれ球に飛びつき、ディフェンスでは常時ハンズアップし、走り続け…。格闘に次ぐ格闘の末、運命のフリースローの機会を自らの力でつかみ取った。本来ならば、その奮闘こそまず先に語られるべきだろう。
今季に入ってパードンが通り過ぎた2つのマイルスストーンは、プレーヤーとして正しいことを地道に積み重ねてきたことを示す特別な勲章に他ならない。昨季は失意の瞬間を味わったに違いないが、それを乗り越えるときが来る日もそう遠くはないのではないだろうか。
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