群馬の非常事態にステップアップした野本建吾…勝利ならずも「反省して次に生かす」
細川一輝のスティールから速攻を繰り出し、ケーレブ・ターズースキーが豪快なダンクシュートを叩き込んだ。
「野本ーーーー!!!!」
第2クォーター残り1分58秒に相手がたまらずタイムアウトを請求したとき、記者席の周りにはそんな声が響いていた。声援を向けられたのは群馬クレインサンダーズの野本建吾。ターズースキーの得点をアシストした背番号11だった。
11月10日に行われたシーホース三河との「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズン」のB1第8節GAME2。野本に3試合ぶりの出番が回ってきた。
この日の群馬はスコアラーのトレイ・ジョーンズを脳震盪の影響で欠いた。カイル・ミリングヘッドコーチによれば、試合当日の朝に欠場が決まったという。チームは序盤でつまずき、第1クォーターからヨハネス・ティーマンとターズースキーが2つの反則を犯してファウルトラブルに見舞われた。
最初の10分間を終えて10-22。結果的にこのビハインドが響いて試合は10点差で敗れた。第1クォーター中盤からコートインした野本も、立ち上がりのパフォーマンスを反省した。
「チームとして機能しなかった第1クォーターで、自分が率先して声を掛けて選手を動かすことができなかったです。ディフェンスでは全体が見えるゴール下にポジションをとっているので、自分の声かけ1つでコミュニケーションミスがなくなるようなポゼッションを増やすことができたら、第1クォーターからもっといい勝負ができたんじゃないかと思いました。」
しかし、第2クォーターでは「吹っ切れて自分の長所を出すことにフォーカスしました」と気持ちを切り替えた。201センチ101キロの体格を駆使して三河の外国籍選手と体をぶつけ合い、豊富な運動量でもチームを活性化。献身的な働きが冒頭に記したビッグプレーにもつながり、前半終了時点で1点差に詰める原動力となった。
「自分は日本人ビッグマンっていう立場で、今日のような外国籍選手の欠場やファウルトラブルといった緊急時にどれだけステップアップできるかにフォーカスしています。今日のようなプレーをするのは当たり前だと思っていますし、常に全力を出し切ってチームの勝利に貢献することが大事なことだと感じています」
現在32歳のパワーフォワードは、青山学院大学卒業後に川崎ブレイブサンダース、秋田ノーザンハピネッツと渡り歩き、群馬には2021-22シーズンに加入した。在籍4年目の今季は、昨シーズン再びチームメートになった辻直人に加え、藤井祐眞とも“再会”を果たした。
「辻選手も藤井選手も自分がルーキーシーズンに川崎に入ってから3シーズンくらい一緒にプレーさせてもらったので、各々、何が得意で何がしたいのか、ということは阿吽の呼吸で分かる部分は結構多いです。だからこそ自分たち3人が一緒にコートに立った時はより密なコミュニケーションを取って、もっといいプレーを増やしていきたいです」
敗れはしたが、キャプテンの辻は「野本がステップアップできたことはチームにとっていい収穫になった」とコメントを残した。3試合ぶりに起用したミリングHCも野本を評価し、さらなる奮起を求めた。
「建吾は自分らしいプレーをしてくれていて、すごくエナジーのある選手です。流れが悪いところで試合のペースを変えることができる選手だと思ってますし、いいパスを出すこともできます。今のいい状態をキープして、これからもっと良くなってもらいたいと思っています」
得点こそ挙げられたかったものの、野本は約12分間のプレータイムで確かな爪痕を残した。ただ、勝利に結びつかなかったことも事実。
「今日の試合で勝利できなかったことは本当に悔しいです。自分の良かったところと悪かったところを反省して、また次に生かしていきたいと思います」
フィジカルとスキルの強化、映像チェック、周りとのさらなる意思疎通……。野本は「頭と身体の両方を使いながら」忙しくも有意義なバイウィークを過ごし、もっともっと頼もしい存在になってコートに戻ってくる。
文=小沼克年