A東京・メインデルインタビュー…昨季の悔しさ、痛み、これらすべてを晴らすべく戦っている
無情にもそのシュートはリングに弾かれた。
アルバルク東京と琉球ゴールデンキングスで争われたチャンピオンシップ(以下CS)クォーターファイナルは第3戦までもつれる大熱戦となった。勝ったほうがセミファイナルに勝ち上がれるという最終戦、残り時間は3秒。アルバルク東京が57-58と1点ビハインドの場面、琉球のヴィック・ローがフリースローを2本外すと、そのリバウンドをキャッチしたレオナルド・メインデルが一気に攻め上がる。そして、逆転を狙ったシュートを放つも、それはリングに弾かれ勝利をつかみとることはできなかった。
2023-24シーズン、アルバルク東京は東地区を制することはできなかったものの、48勝12敗とクラブ史上最高成績を挙げてCSに乗り込んだ。もちろん目標は3度目のリーグ制覇だ。それだけにこの敗戦の悔しさは多くの選手の心に深く刻まれている。
メインデルはシーズンを終えると、母国ブラジルの代表チームに合流。パリオリンピックの最終予選に出場して、本大会の出場権獲得に大きく貢献した。さらにそこでは日本代表やアメリカ代表とも対戦。貴重な経験を積んで新しいシーズンに臨んでいる。
今回、メインデルに初めてのBリーグ感じたこと、また、パリオリンピック、日本代表との対戦を振り返ってもらうとともに、今シーズンにかける思いを聞いた。今シーズンにかける思いがひしひしと伝わってくるはずだ。
インタビュー・文=入江美紀雄
◆初の五輪で世界一の選手とマッチアップ
――5月にBリーグを終えてすぐにブラジル代表に合流するハードなスケジュールを過ごされていました。ブラジル代表は最終予選(OQT)に勝ち上がり、パリオリンピックに出場しました。OQTはラトビア開催にもかかわらず、最後はそのラトビアに勝ったのですが、チームの雰囲気はどうだったのですか?
メインデル OQTではうまくいかないこともありました。特にカメルーンに負けたことでチームを立て直す必要があったのです。その後、自分たち本来のプレーを取り戻し、フィリピンにしっかり勝てて、ラトビア戦に向かえました。この試合、前半が非常に良かったので、その勢いで最後まで勝ち切った感じです。
――ラトビア戦のメインデル選手は3ポイントシュート4本を含む20得点の活躍を見せてくれました。このスタッツについてはどうですか?
メインデル オフェンスも良かったのですが、やはり自分としてはディフェンスがしっかりできたことで、スムーズにオフェンスに移れたことが大きかったと思います。自分らしさをしっかり表現でした試合で、それがパフォーマンスにいい影響をもたらしました。本当に勝ち切れたこと以上に良かったと思います。自分らしさが出せたオフェンスができ、大事な場面で決めることができましたし、非常にエンジョイしたゲームになりました。
――メインデル選手にとって初めてオリンピックの切符をつかんだわけですが、それが実現したときはどんな気持ちでしたか?
メインデル 決まった瞬間は最高な気分で、夢が叶ったという思いが溢れ出てきました。自分のクラブでリーグ優勝したときくらい、もしくはそれ以上の気持ちの高ぶりでした。国を代表してプレーするのがオリンピックです。家族のために戦った成果、これがしっかり表れたと思うので、本当にもう1回言いますがハッピーで、こんな気持ちは初めてでした。
――ところでアルバルクでの背番号は23ですが、ブラジル代表では14番です。何か理由があるのですか?
メインデル 実は14番は自分にとって特別な番号なのです。なぜなら父がこの番号を付けてプレーしていたので、自分もこの番号でプレーしたいと思っています。ただ小さなころは同じ理由で兄が先に14番を選んでしまうので着られませんでしたが、そういう場合は23番を選んでいました。世界ナンバー1プレーヤーだったマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)が付けていば番号なので。今回は14番が空いていたので、ブラジル代表では14番を背負いました。
――パリオリンピックではアメリカ代表のレブロン・ジェームズとマッチアップをしました。
メインデル レブロンは小さいころから憧れていたアイドルの一人だったので、本当に光栄なことですし、「これは現実なのかな?」と思ったくらいです。それでも時間が経てば互いに試合に慣れてきます。もちろんレブロンは引かなかったのですが、僕も向かっていけました。最高の選手とマッチアップができて、最高の気分でしたね。
――ブラジルは日本とも対戦しました。チームメートだった吉井(裕鷹・現三遠ネオフェニックス)選手ともマッチアップをしましたが、どんな気分でしたか?
メインデル 複雑な気持ちでした。もちろん吉井選手は知っていますが、他の選手もほとんどがBリーグでプレーしているので、知っている顔ばかりです。ただしオリンピック、国際大会での舞台なので感情を出さないように心がけたのです。国を代表した勝負の世界は結果がすべてなので、感情的にならないよう、自分とブラジルの勝利のことだけに集中して試合に臨みました。
――オリンピック全体の感想を聞かせてください。
メインデル パリオリンピックにはメダル獲得という大きな目標があったのですが、そこにはたどり着けませんでした。それでも7位という結果は胸を張っていいと思います。宿泊や食事などの環境面は決してベストな状況ではありませんでしたが、7位になれたことは立派な成績だったと感じています。
◆ファンに「一緒に優勝しましょう」とメッセージ
――Bリーグ2年目のシーズンが開幕しましたが、改めて昨シーズンの感想を聞かせていただけますか。来日前と印象が変わった点などあれば教えてください。
メインデル 昨シーズンを振り返ると、バスケットボール選手というだけでなく、一人の人間として成長できたと思っています。バスケに関して言えば、これまで経験してきたものとまったく違うプレースタイル、フィジカル面、スピードに慣れることが重要でした。それはしっかりできたと実感しています。その中で一番成長できたのはメンタル面ですね。メンタルが強くなければBリーグの長く厳しいシーズンを戦えません。自分としては非常に成長できたと感じていますし、それが代表チームの活動において、自分の持ち味を活かせたと思います。
――アドマイティスヘッドコーチのバスケには順応できましたか?
メインデル 非常にスムーズにできました。ヨーロッパ出身のコーチなので、求めているバスケになじみがありました。日本に来るまで3シーズン、ヨーロッパのコーチのもとでプレーしたこともあり、非常にアジャストしやすかったというか、問題はありませんでしたね。
――昨シーズンはCSのクォーターファイナルで敗れました。琉球ゴールデンキングスとの3試合すべてが非常に接戦で、どちらが勝ってもおかしくない内容だったと思います。印象的だったのが、3戦目が終わったあと、メインデル選手が大粒の涙を流していたことです。そのときの気持ちを教えてください。
メインデル 昨シーズンの目標がファイナルの舞台に立って、そこでしっかりと勝ち切って優勝をすることだったので、(敗れたときは)悔しい思いがあり、感情を抑えきれない瞬間でした。ですので、今シーズンはその悔しさ、痛み、これらすべてを晴らすべく戦っていきます。これがチームの共通認識です。
――アルバルクのファンの存在はあなたを奮い立たせますか?
メインデル 本当に素晴らしいファンだと感じていますし、私たちはファンのためにプレーしています。自分たちだけではなく、ファンの方々に勝利を届けたい。それが自分のモチベーションになりました。毎試合激しい戦いが続きますが、ファンの皆さんが喜んでいただき、勝利で恩返しする。そういった気持ちを常に持って、日々のモチベーション高くして、取り組んでいます。
――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
メインデル ファンの皆さんには心から感謝したいと思います。優勝という目標を達成するために常に全力でプレーして、それに向けて頑張っていきたいと思います。皆さんのエール、これが自分たちのエネルギーに変わります。一緒に優勝をしましょう。すべての試合で全力を出し切ることを約束します。一緒になって優勝したいと思いますので、今シーズンも応援よろしくお願いします。