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2024.11.12

『個性派集団』から『ONE TEAM』へ、群馬クレインサンダーズをまとめる辻直人「今シーズンはキャプテンとしての考えが大きい」

  • バスケット・カウント

連勝ならずもチームとしてのステップアップを見せた群馬

中断期間前、最後の連戦で群馬クレインサンダーズはシーホース三河と対戦した。第1戦は前半にリードを奪われる我慢の展開となったが、後半からディフェンスと3ポイントシュートが冴えて逆転勝利を収めた。

しかし、第2戦は前日に15得点を挙げたトレイ・ジョーンズが欠場し、さらに序盤からファウルトラブルに苦しむ展開となり、第1クォーターで2桁のリードを許してしまう。第2クォーターで盛り返しその後一時逆転に成功するも、終盤に13-22のビッグクォーターを作られ68-78で敗れた。カイル・ミリングヘッドコーチは「難しい試合展開でしたが、その中でも選手がしっかりと戦い抜いてくれました。結果的には負けてしまいましたが、前半のよくなかったところを修正して戦った選手たちを誇りに思います」と苦しい状況の中でもカムバックしたチームを評価した。

ジョーンズの欠場を受けて、バックコート陣の得点面の底上げが必要だった。特にここまで、チームの日本人選手最多となる平均11.3得点を記録し、前日もチームハイの19得点を挙げた辻直人に対する期待は高かった。辻もミリングヘッドコーチ同様に「ファウルトラブルもあり、難しい試合展開となってしまいましたが、そこからステップアップできたのはチームにとっては良い収穫になりました」と第2クォーター以降の反撃を振り返った。

それでも、結果が出なかったことへの反省も話す。「トレイがいないので、出だしからアグレッシブにいかないといけないことと、みんながステップアップしなければいけないとコーチからも言われていました。そこで戦い方が大雑把というか良くないアグレッシブさが出てしまいました」

結果的に辻は9得点に留まり、4試合ぶりの1桁得点となったが、流れが行ったり来たりする目紛しい展開をモノにしようと奮闘し続けた。最大の見せ場となったのが、第3クォーターの中盤。後半開始からリードを広げられる嫌な流れの場面で、ウイングでボールを受けるとドライブを仕掛けてタフショットを決め、バスケット・カウントを奪った。さらには辻に打たせるためのシューターセットを使い、トップの位置から3ポイントシュートも続けて沈め会場を沸かし、一時逆転する立役者となった。

この時間帯、辻はパスを要求する素振りが多く見られた。「チームも個人も勢いに乗っている時間帯で、流れをつかめるのではないかと思っていました。ターニングポイントになると思ったので、思い切って行きたい気持ちと、もっと攻めたかったというのがありました」と振り返る。

現在3ポイント成功率ランキング1位「コンディションも上がってきて、感覚も良い感じ」

今シーズンの群馬を語る上で不可欠なのが、ディフェンスだ。昨シーズン、ミリングヘッドコーチはチームディフェンスに重きを置き、広島ドラゴンフライズを優勝に導いた。群馬でもディフェンスの強化に力を入れているのは言うまでもない。実際、この試合でもファウルトラブルでビッグマンがコートに立てない時間帯にゾーンを駆使し、強度の高いディフェンスを保った。特に辻や藤井祐眞がコートに立ちながら的確な指示を周りに送り、5人の連携を高めていた。

ディフェンスのコミュニケーションの重要性を感じている辻は「昨日、簡単にやられてしまったところがあったので、そこをやられないようにすることと、昨日の後半はコミュニケーションが上手くとれていたことがあったので、積極的にコミュニケーションを取っていました」と言う。

もう1つ昨シーズンから変化が見られるのが、3ポイントシュートだ。昨シーズン、群馬は総得点に占める3ポイントシュートの割合がリーグで21位と低かった。これは低いから悪いというものではなく、あくまでチームスタイルを表す数字だ。今シーズンはリーグ5位と大幅に上昇しており、3ポイントシュートを得点源にしていることが分かる。その中で辻は14試合で74本の3ポイントシュートを放ち、37本を成功させている。成功率は50.0%で堂々のリーグ1位だ。「今シーズンはケガから始まりましたが、コンディションも上がってきて、感覚も良い感じできています」と話す通り、好調さは自分でも感じている。

上手くいかなかった時の切り替えの早さや、表情を見ているとメンタルの安定も感じられる。その中でも新加入選手の存在は大きいと言う。「自分が群馬2年目というのもありますし、自分のことを信じてくれて役割も多く与えられています。藤井選手とは長い付き合いなので、良いタイミングでパスもくれます。逆に彼の良さを自分がもっと引き出せると思っています」

さらにプレータイムを争う同ポジションの細川一輝の存在もポジティブだと明かす。「細川選手はチームからの信頼もありますし、僕も信頼を置いている選手です。僕が入らなくても彼が決めてくれればいいと思っていますし、彼が入らない時には自分が決めればと。そういう相乗効果で勝つためのチームプレーができたらいいですね」

昨シーズン終了後に話を聞いた時には「本当に手応えのなかったシーズン」と振り返っていたが、今シーズンの話ぶりを見ていると充実感が漂っている。ここまで8勝6敗で、思い描いていたほど勝てていないと評価するが「千葉(ジェッツ)戦も宇都宮(ブレックス)戦も昨シーズンはなんとか戦っている感じでしたが、今シーズンは上位チームに対してもちゃんと向き合って戦えている感覚がありました」と手応えを感じている。

昨シーズンは自身のパフォーマンスにもチームの成績にも満足いかなかったが今シーズンは違う。ベテランと言われるキャリアになってきたが、プレーヤーとしても人間としてもまだまだ成長をし続け、チームを勝たせるために戦っている。「本当にキャプテンとしての考えが今シーズンは大きいです」。そう言って話を締めくくった辻の言葉には、『個性派集団』から『ONE TEAM』へと昇華しつつある充実感が感じられた。