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2024.11.05

大阪エヴェッサ期待の新戦力、牧隼利が痛恨の連敗も感じたチームプレーの手応え「カルチャーを作っていく過程の1つとして良かった」

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「昨日に比べて自分たちのやりたいバスケットをできたことはステップアップ」

大阪エヴェッサは11月2日、3日とホームで琉球ゴールデンキングスを迎え撃った。bjリーグ時代からの好敵手でありBリーグ屈指の強豪である琉球に勝利し、今後への弾みをつけたいところだったが、連敗という厳しい結果に終わった。

だが、内容については2日間で大きな差があった。初戦、大阪は第3クォーターにターンオーバーから速攻を食らう場面を繰り返し、このクォーターで16-37と一気に崩れ79-96で敗れた。一方、第2戦は立ち上がりでいきなり4-17のランを許して出遅れてしまったが、ここからチームは集中力を切らさずにハードワークを続けることで踏ん張った。第3クォーター途中には5点差に詰め寄る場面もあったが、琉球のここ一番での決定力に対抗できず84-95で再び敗れてしまった。

ホームでの同一カード連敗は痛恨の結果でしかない。だが、大阪の藤田弘輝ヘッドコーチは、悔しさの中にも明るい兆しを感じたと語る。「試合には敗れてしまいましたが、40分間ハードに戦い抜くことができたと思います。ディフェンスもオフェンスも、僕たちが目指しているプレーをやり切ることができました」

昨シーズンまで琉球に在籍していた期待の新戦力、牧隼利は9得点5リバウンド5アシスト2ブロック1スティールと攻守に渡って活躍した。まだ、11試合を終えた段階だが、ここまでプレータイム、得点、アシストでキャリアベストの数字を残しており、藤田ヘッドコーチの元で新時代を迎える大阪の攻守を支える存在となっている。

第2戦後、牧はこのように試合を振り返る。「昨日に比べて自分たちのやりたい大阪のバスケットを試合を通してできたことはすごくステップアップしたところでしたが、そこで簡単に勝たせてくれないのが強豪チームです。そういった相手に、僕たちのバスケで勝っていくようにしないといけないです」

対戦相手の琉球は牧にとって2019年12月に特別指定として加入してから昨シーズンまで在籍し、Bリーグ制覇など多くの栄光をつかんだ愛着ある古巣だ。琉球のエースである岸本隆一とのマッチアップでは、サイズのアドバンテージを生かした積極的なアタックからレイアップを決め切った。その場面で少しだけ笑みが見えたのではと聞くと、こう答えてくれた。

「チームのオフェンスとして、隆一さんがファウルトラブルだったので攻めていかないといけない。もう1つは、個人的な感情を試合に持ち込むのは良いことではないと思いますけど、シンプルにオフェンスでもディフェンスでもマッチアップを楽しんでいました。その気持ちも出たと思います」

「今の大阪は今年から新たなカルチャーを作り上げていく段階」

一緒にチャンピオンズリングを勝ち取ったかつての同僚との対決を楽しんだ牧だが、敵として対峙することで、接戦で勝ち切れる琉球の強さを実感させられた。「僕たちに流れが来そうな時、完全にこちらの流れにさせてもらえなかったです。ジャック(クーリー)のゴール下だったり、隆一さんの一本だったりで嫌な流れを止めることができる。そこは相手が上手だったと思います。相手にして初めて分かりましたけど、ゲームを通して特にゴール下のジャックは本当に強烈だと思いました」

牧は琉球でのリーグ制覇に加え、筑波大でも4年時にMVP受賞の活躍でチームをインカレ優勝に導くなど、キャリアを通して勝つチームに在籍していた。だからこそ、大阪でも勝つチームに必要なモノを伝えられる選手として期待されている部分はある。だが彼は、これまで在籍したチームと大阪では状況が全く違うと冷静に語る。「一つ違うと思うのは高校(福岡大学附属大濠)、大学、キングスと、しっかりとした文化ができていた中に僕は入っていっただけです。これまでの経験は生かしていきますが、今の大阪は今年から藤田さんにヘッドコーチも代わって新たなカルチャーを作り上げていく段階です」

このように牧は、今の大阪はカルチャーの土台を固めていく基礎工事の段階にあると見ている。ただ、それ故にこの試合の戦いぶりには負けた悔しさと共に手応えも得た。「結果は出ませんでしたけど、僕たちはこういったバスケットをやるんだよねという戦い方を今日は見せることができました。長期的に見た中で、カルチャーを作っていく過程の一つとして良かったことだと思います」

そして、大阪のやるべきバスケットをこう表現する。「コーチからドッグファイトをしようと言われています。40分間、みんなで走ってチームでハードにフィジカルに戦い続ける。自分たちよりパワーも能力もある相手に対して、みんなでカバーし合って守る。オフェンスではみんなでボールを回してチームとして打つべきシュートを探していく。このスタイルを続けることで、能力のあるチームに今後、勝っていけると思います」

これで大阪は6勝5敗となったが、勝った相手はすべて勝率5割以下で、逆に敗れた相手は5割以上。対戦相手の地力に左右される結果となっている。ここから貯金を増やしていくには、個の打開力で上回る相手にいかにチームで戦い続けることができるかが重要な要素だ。そして、抜群のバスケットボールIQを持ち、周りを巻き込む術に長けている牧は、大阪のやるべきバスケットボールを遂行していくためのキーマンとなる。