ブランドン・アシュリー(アルティーリ千葉)、B2 MVPからさらなる進化の兆候
B2の2024-25シーズン第3節までを終えて、負けなしの6連勝と好調なアルティーリ千葉の得点源として活躍するブランドン・アシュリー。昨シーズンは56勝4敗(勝率.933)で2年連続リーグ最高勝率とB2東地区連覇という好成績の原動力となりB2MVPを受賞したが、今シーズンは念願のB1昇格・B2初制覇に向け、さらなるステップアップを期待されている。
ここでは、10月13日に千葉ポートアリーナでベルテックス静岡を73-55で倒した後の会見での記者たちとのやり取りを紹介する。アシュリーはチームハイの17得点にチームハイ・タイの10リバウンドとダブルダブルを記録して勝利に貢献した。「昨日の試合と同じくペースを上げて、相手にプレッシャーをかけていこうと考えて臨んだ試合でした。今日は守り合いになりましたけど、今日のような高いレベルのディフェンスを続けて、それにオフェンスも伴ってきたらいいなと思います」と総括したが、その後交わした言葉の節々から、これまでの好成績に甘んじることのない向上心が伝わってくる。
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——最近日本語の勉強をし始めたと聞きました。
いやぁ、本当にほんのちょっとですよ(笑)
——何か少しでもA-xx(アルティーリ千葉ファンの愛称)に披露できる日本語はありますか?
ううッ…、難しいな。こういう時でなければ出てくる言葉もあるんですけど、いざ何か言わなければならないとなると…(笑)。なんだろう…パッとは何も浮かんできません…!
——でも確かに勉強しているんですね。
ええ、ちょっとですけどね。チームメイトと一緒に時々…。
——一言だけ…何とか!
うう~ん…そうですね。そうしたら「ヤバい」で。「ヤバい!」…(笑)
——「ヤバい」ですか! おお~(会見場が笑いに包まれる)。わかりました! そうしたらここからは普通に質問させていただきますね。まずは今日の試合を含めてここまでの4試合について。チームは負けなしですが、ご自身のパフォーマンスをどんな風に見ていますか?
まだ始まったばかりですけど、堅実にプレーできているんじゃないかと思います。もちろん改善したい点は常に見つかるので、出来栄えに不満があるわけではないのですが、シーズンを通じてもっともっと良くなっていきたいと思っています。
——昨シーズンは前半戦で3Pショットがなかなか決まらなかったと思うのですが、今シーズンはいい確率で決めていますね。やっぱりオフに力を入れて練習してきたんですか?
おかしいと思うかもしれませんが、僕はこれまでに40%以上の確率を残したシーズンもあったので、自分では決められる自信があったんですよね。シューティングには時間をかけてきましたし、(昨シーズン苦しんだのは)内面的なものが影響しただけだったのかなと思っています。
そして、今の質問に対する答えとしては、「イエス」です。しっかり打ち込んできましたよ。今シーズンはその成果をお見せできるようにと頑張っています。
——デレク・パードン選手も3Pショットを練習し始めたそうですね。何かお二人で張り合ったり競争したり、あるいはお互いに助言しあったりしているのでしょうか?
競争というわけではありませんね。僕は僕のショットを全部決めたいし、彼にも全部決めてもらえたらうれしいですから。2人して1本も外さないようにできればいいわけです(笑)。アドバイスに関しても特にはしていません。DP(パードンのニックネーム)自身が過去にいい確率を残せていた時期があると思うし、彼はこのオフに、自分のシューティングを分析してより良いシューターになることを注力事項として取り組んできたみたいで、練習でもいい感じで決めていますから。
——先ほど改善したい点は常にあるというお話でしたが、具体的にはどんな部分を改善していきたいと考えていますか?
僕として一番改善したいと思う点は、ボールを失わずにしっかりプレーすることです。過去2シーズンを振り返ると、ときどきミスをしてターンオーバーをしてしまうことがありました。そこを良くしてプレーをうまく仕切れるようにすることで、チームメイトにもより良いチャンスが生まれるようにしたいですね。
——今日は前半なかなかゴール下に侵入できなかったようでしたが、後半は逆にゴール下の手堅い守備で力を発揮されていました。その点はどうですか?
そうですね。僕が来日して以来成功できている理由はペイントで積極的にプレーしてきたからで、それがあることでチームメイトも攻めやすくなっていたと思います。そこを継続したいですし、逆にもう一つ僕が苦しめられるものにファウルトラブルがあるので、フィジカルにプレーし続けながらファウルを抑えて活躍できるようにすることでチームの助けになりたいと思います。
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成果が見える3Pショット、今後に期待のファウルコントロール
アシュリーのスタッツを昨シーズンと比較すると、コメントに符合するように3Pショットとファウルに関して興味深い傾向がある。3Pショットは今シーズン自身のBリーグキャリアで最高となる57.1%(平均1.2本中0.7本成功)で、これは昨シーズンの29.1%(平均1.1本中0.3本成功)からの大幅な上昇。ファウルは昨シーズンの平均2.9個から、これもBリーグでのキャリアハイとなる3.7個に増加している。
3Pショットに関しては昨シーズンの終盤からプレーオフにかけて確率が上昇し、プレーオフでの6試合は47.6%(平均3.5本中1.7本成功)だったので、本人のコメントからもその強みをオフに磨いてきたことが数字に表れているのに違いない。一方のファウル増に関しては、A千葉のディフェンスの強度上昇にも着目しながら捉えるべき数値だ。A千葉の開幕から6試合終了時点での平均失点73.8はB2最少で、かつ昨シーズンの77.1からも改善できている。そうなると当然、チームの進化に伴いアシュリーもそのレベルでファウルを抑えることがテーマとなる。3Pショットに関しては成果が出始めているが、6試合中5試合が4ファウル以上でファウルアウトも1試合というファウルのコントロールに関しては、強度の上昇に追いつくのにまだ時間がかかっているのかもしれない。
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だからといって、現段階でおとなしいプレーをしてファウルを減らすような姿は、B.PREMIERで戦おうというクラブの姿にはそぐわない。ファウルを怖がらずにアグレッシブに攻めるディフェンスやスクリーン・セッティングで、アシュリーは自らを奮い立たせているのだろうということが、この日のコメントから感じられた。
冒頭で気さくに「ヤバい」と日本語を披露して笑顔を見せたアシュリー。しかし対戦相手にとっては笑ってはいられない。B2 MVPは昨シーズン以上に「ヤバい」存在になりつつあるようだ。