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2024.10.19

森高大HC(ベルテックス静岡)の手腕に注目! 新生ベルテックス静岡の完成度はどこまで高められるか?

  • 月刊バスケットボール

新任の森高大HCを迎え、ロスターの半数近くを入れ替えて今シーズンに臨んでいるベルテックス静岡。開幕節を山形ワイヴァンズ相手の連勝(GAME1:83-78/GAME2:80-66)で飾る好スタートを切った後、アルティーリ千葉との第2節には連敗(GAME1:74-91/GAME2:55-73)を喫し、現在2勝2敗で西地区4位に位置している。第2節GAME2終了後の森HCのコメントから今後を占ってみたい。

前日の敗北後は、特にターンオーバーを多発させられて33-57と突き放された前半の戦いぶりに触れて、「昨シーズンあれだけの勝率を誇っていたA千葉さんがなぜそれだけ強かったのかっていうのを、思い知らされるような内容になってしまいました」と脱帽状態だった森HC。しかしGAME2後は課題がより明確となり、ステップアップのきっかけを得たような前向きなトーンのコメントを聞かせてくれている。まずは森HCによる試合の総括から、一連のQ&Aを追ってみよう。

リバウンドとディフェンスの強化で安定的に勝てるように

前日課題だったターンオーバーを減らすというところはすごく改善が見られたんですが、オフェンスリバウンドというもう一つの強みでつながれてしまったゲームでした。それでも選手たちはすごく強い戦いをしてくれたので、誇りに思っています。

ただ、A千葉さんのようなチームに勝とうと思ったら、ターンオーバーだけなくしてもリバウンドをやられたら駄目だし、リバウンドを勝ってもターンオーバーさせられたら駄目で、両方やらなければいけないというのを痛感したところです。ディフェンスでもすごく改善は見られたんですけれど、逆にオフェンスでオープンショットが入らなかったり、乗り切れなかったので、そこは今後の56ゲームで改善していきたいと思います。


A千葉とのGAME2を振り返る森高大HC(写真/©B.LEAGUE)

——両方を同時にやらなきゃいけないという点について、そうできない原因はどこにあるのでしょう?

すごく難しい質問ですね(笑)。ただ、GAME2に向けて一番の改善に挙げたのがターンオーバーだったので、フォーカスの置き方というか集中力の割き方で言ったらミーティングでもそこにより多く割きました。オフェンスリバウンドは引き続き頑張ろうという形で入ったんですが、集中力の割き方がどっちかに偏ってしまって、その結果として、片方がおろそかになっているわけでもないのですが、比較的弱くなってしまったのかなという印象はあります。

こちらがどれだけ強くやっても、やっぱりA千葉さんはすごくリバウンドが強いチームなので、ある程度はしかたがないところはあります。それでも同時にやらないと勝てないので、今後改善してこの相手にもできるようになっていきたいと思います。

——B1とNCAAディビジョン1のバスケットボールを経験されて、そこで見てきているチーム作りのアプローチと、今ベルテックス静岡さんでやられていことの中に「こういうところが足りない」とか「ここが両方できない原因だ」と感じるようなところはありますか?

いや、その視点では特にありません。正直なところ、NCAAとBリーグは相当違います。だからカレッジがすごく参考になるかというとちょっと別だなと感じています。ただB1とB2にはあまり差はないと思っています。(昨シーズンまでAコーチとして所属していた)アルバルク東京でも、シーズン序盤には安定性を欠くことも全然あったので、そこに関してはチームの成熟度を増していく段階を踏んでいる状態ですね。そういう意味から、B1でもB2でも変わらないんじゃないかなと思います。

それよりも、A千葉さんは4年間同じチームで同じヘッドコーチ(アンドレ・レマニスHC)、しかもすごく優れたヘッドコーチの下でやっているので、やっぱりそう簡単に(開幕からの)4ゲームでひっくり返せるわけはなかったということですね。でも、僕らにも必ずチャンスは巡ってくると思うので、また1つ1つの試合を経ながら、次に会うときはもうちょっといい戦いをして、勝つところまでいきたいと思います。

——タイプ的にベルテックス静岡は、インサイドをゴリゴリ攻めてリバウンドを獲って、そこからのトランジションや、3Pショットとビッグマンとのバランスを取って攻めるあたりがA千葉と似ているように思います。完成度の違いはあるとしても、森HCもそんな捉え方をされているのでしょうか?

やっぱりロスター編成を見ても、A千葉さんがすごくリバウンドに強いチームを目指しているというのは明白です。僕の個人的な信条としても、Bリーグで安定して勝とうと思ったら絶対にリバウンドが強いチームじゃないとできません。ディフェンスとリバウンドがちゃんとそろって、なおかつシュートが入るというのがやっぱり総合的に強い。シュートが入るだけでリバウンドが欠けているチームはあまり安定して勝つことができないと僕も信じているので、そういう意味だと僕らが目指している先に現状のA千葉さんがいるのかなっていう意識はちょっとありますね。

攻防のパフォーマンスの歯車があってくれば…

森HCは東京大を卒業後全米でも強豪として知られるウエストバージニア大の大学院に進み、バスケットボールチームのマネージャーとして本場のチーム作りやマネジメントを学んでいる。その後帰国してA東京のアシスタントを経て現在に至るが、その間に男子日本代表のサポートコーチも務めており、ユニークな経験から蓄積した知識の引き出しが豊富。そして、しっかりと話者の意図をくみ取って答えてくれる会見での姿勢からは、人柄の良さやバスケットボールに対する真剣さも伝わってきた。

静岡はプレシーズンゲームと天皇杯を含むB2開幕節までの試合で、得点が80に達した試合は全勝、失点が80に達した試合は全敗(富山グラウジーズのとプレシーズンゲーム2試合が72-80の黒星と89-77の白星、天皇杯ではB1の群馬クレインサンダーズに71-96で敗れた)。A千葉相手の今シーズン4試合目が、失点を80未満に抑えて敗れた初めてのケースだった。となると、ざっくりとらえれば80得点以上を奪って相手をそれ未満に抑えて勝つのが、静岡のスタイルと言っても良いのかもしれない。

今節の対戦では、うまくいく部分とそうではない部分が交錯し、全体として結果が出なかった。例えば、アンガス・ブラントや加納誠也らのフィジカルなプレーに苛立ったA千葉のトレイ・ポーターやブランドン・アシュリーが前半からファウルトラブルに陥る流れがあった。ただし2試合とも序盤に背負ったビハインドが大きかったために、A千葉が慌てるような状況まで追い詰めることはできなかった。その意味では、GAME1の第2Qにフルコート・プレスに対応できずターンオーバーを繰り返して連続失点を喫した流れは猛省の材料だったが、GAME1で21に上ったターンオーバーはGAME2では13に減らすことができていた。ところがそのGAME2では、GAME1で47.4%の高確率で成功させた3Pショット(19本中9本成功)が19.2%(26本中5本成功)に落ち込みチーム得点が伸び悩んだ。しかしその一方で、ディフェンスでのボールプレッシャーが非常に強力で、そこまでの3試合連続で90得点以上を奪ってきたA千葉を73得点に抑えることができた…という具合だ。


身長208cmでオーストラリア代表歴もあるアンガス・ブラントは、第2節は初戦が無得点で2リバウンドだったのに対してGAME2は19得点、10リバウンドと波があったが、今後高いレベルで安定してくることを期待したいところだ(写真/©B.LEAGUE)

第2節はどこかで歯車がかみ合わないまま過ぎ去っていたような印象だったが、それがかみ合ったときに、攻防両面で爆発的な破壊力を発揮しそうな気配は十分感じさせていた。それは開幕節の連勝を見ても、そうだろう。また、森HCはプレーヤーたちを納得させるだけのコンセプトを示し、コミュニケーションも十分とれているようにも感じられた。現状でも五分の星であり、序盤戦から明確にした課題に対処していけるのだから、エースガードのベテラン岡田雄三らのリーダーシップの下、短期間に高いレベルでチームの歯車をかみ合わせ始めることも十分期待できるだろう。

静岡が香陵アリーナ(沼津市)でのホーム開幕戦となる10月19日(土)、20日(日)の第3節で対戦するのは、現在A千葉とともに無傷の4連勝と好調な鹿児島レブナイズだが、この段階でどこまで歯車をかみ合わせて安定感のある戦いを披露できるだろうか。早めの“中間テスト”の結果に注目してみたい。