2024.10.14
宇都宮ブレックス「BREX with」で広がる活動の多様性
広がりを見せる「BREX with」の活動
Bリーグの協力の下、リーグで行われている社会的責任活動「B.LEAGUE HOPE」にフォーカス。今回は宇都宮ブレックス(以下宇都宮)のSDGsプロジェクト「BREX with」についてです。宇都宮は理念として掲げる「強く愛されるモチベーションあふれるチーム」を実現すべく、2007年の設立当初より数にこだわって社会貢献活動をしてきました。 そして、その活動は2021年末にスタートしたSDGsプロジェクト「BREX with」によって、正に“BREAK THROUGH(現状を打破する)”と言うべき、広がりを見せています。
なぜ、社会貢献活動を重んじてきたのか? 藤本光正社長にクラブとしての考えをお伺いしました。
――SDGsプロジェクトの「BREX with」は2021年末にスタートしました。「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「パートナーシップで目標を達成しよう」という3つのゴールが当面の対象と説明されていますが、具体的にどんな活動になりますか?
藤本)まずBREX withの成り立ちから説明すると、“with=一緒に”というところに狙いがあります。ブレックス単独でも社会貢献活動を行ってきましたが、やはり活動の範囲は限定されてしまいます。事業者、自治体など誰かと一緒に活動することで、より広い範囲の活動ができるという狙いが一つあります。
具体例を挙げると、フタバ食品様とは小学生にリーチして食育をやりたいと考えていて一緒に小学校訪問をする活動をやらせていただいていますし、大塚製薬様とは栃木県・獨協医科大学と産官学のようなスキームで連携し、ロコモティブシンドローム(運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態)を改善する活動を行っています。我々自体が課題と気づいているものとは異なる対象への活動も行いやすくなります。
――単独での活動をやってきた中で浮き彫りになった課題を解消するための「BREX with」でもあるというわけですね。
藤本)おっしゃる通りです。バスケットボールのクリニックをやったり、お祭りやイベントに駆けつけて盛り上げたりすることにも地域にとってプラスにつながる活動であると自負していますが、さらに社会的にインパクトがあることをやっていくためにも、新たなアイデアも欲しいという状況でした。 もともと企業と一緒に社会課題への取り組みも行っていて、その中で「こういう形が理想的だ」という着想を得て進んだ訳です。
現在「BREX with」はスポンサーシップの商材にも入れているのですが、プログラム化することで話も進みやすくなり、「社会課題を一緒に解決するBREX withは意義深い」という評価もいただいていますし、非常に手応えを感じています。
健康や子どもの教育、社会福祉といった領域が得意な分野になりますが、それ以外のご相談を受けることもあります。我々としては、それを良い形で実現しようというスタンスです。CSRの観点でやるべきことをしっかりやっていますが、その一方でクラブのブランドイメージの向上や認知拡大といったことにつながるという視点も持ち合わせています。
キッズモチベーションプロジェクトでの小学校訪問
――約2年半やってきた中での効果や体感はいかがでしょうか?
藤本)やはりブレックス単独での活動よりバリエーションが増えましたし、量を増やすこともできています。リソースについても、先方の担当者と一緒にやることで解決でき、間違いなく大きな成果だと思います。そして企業側も活動を発信していただけるので、自分たちだけでやっている時よりもメディア等への波及効果も増えています。そしてスポンサーからも“活動を通して社員のモチベーションが上がった”と感謝の言葉をいただいたこともありました。
――「BREX with」立ち上げ以前となる2007~2021年11月の期間に4,330回もの活動をされています。社会責任活動を重んじてきた背景には、どんな思いがあるでしょうか?
藤本)ブレックスが差別化できるポイントがいくつかありますが、その一つが地域活動に対する行動、考え方です。2007年の設立当初より、数にはかなりこだわりを持ってやってきました。それこそ、お祭りやイベントの情報を得たら、こちらから「出させて下さい」と連絡したり(笑) 。
当時はSNSもない時代で、プロモーションという観点が強かったことはあります。自分たちが街にどんどん繰り出て活動し、認知を高めてもらう。そうしないと栃木、宇都宮という土地で生きる道はないという覚悟でした。やがてブレックスが顔を出すことで華やかになるという評価を得て、様々な場所から声を掛けていただくようになりました。
集客やファン作りといったプロモーションという側面もありましたが、交流した方が笑顔になるという姿を見て、これこそプロスポーツチームがある意義だとも感じてきました。だからこそ、今も地域に還元したいという純粋な気持ちを持ってやっていますし、最近入社した若手社員にも、活動の重要性を説いています。私も必ずどこかに顔を出して一緒に汗をかきながら活動しています。そういった文化は社内的に大事にしたいと思います。
――企業との活動では、昨季からスタートしたリユースカップ*というおもしろい試みもありますね。
*=ホームゲームのアリーナ内で購入し、飲み終わったあとのアルミカップを回収ボックスに入れると、1ポイントを付与。3ポイントで1杯無料となるドリンクチケットが配布される試み。環境負荷低減に貢献できるアルミカップの認知拡大とともに、飲料容器サプライチェーン全体でのCO2排出量削減を図る
藤本)あの企画は、栃木に工場があるアルミニウム総合メーカーのUACJ様と行っているものです。サステナブルな世界を作るということを掲げていらっしゃる中で、BtoBの会社ということもあって発信がなかなか広がらないという悩みを持っていらっしゃいました。そこでブレックスの発信力を生かして、UACJ様の考えを広く知ってもらいたいということになり、実現に至りました。
もちろん、ブレックスとしてもサステナブルな世界を目指すというところに共感しての企画ですが、昨シーズン実施してUACJ様にも喜んでいただけて、新シーズンでも継続して実施する運びになっています。
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――回数にこだわってコンスタントに活動を続けてきて、それが「BREX with」となってさらに幅を広げることができました。そういった中で、特に思い出深い活動はありますか?
藤本)設立直後はやはりリソースが少なかったこともあって、本当に誰もが外に行って何でもやるという時代だったのが、今はリソースも増え、さらに「BREX with」という形で企業や各団体の方と連携して活動できるようになり、その幅が広がっているというのは何より感慨深いです。具体的にこの活動がということではなく、地域貢献活動のあり方が本当にブレイクスルー(現状を打破するという意、チーム名の由来でもある)できたなと感じます。実は「BREX with」という名称には、先程言った“一緒に”という意味もあるのですが、“ブレックスが社会課題に寄り添う”という意味も含まれています。そのネーミングにすごく引っ張られて、活動の幅が広がったと思います。
――幅を広げるという意味で、今後実行していきたい活動はございますか?
藤本)現時点ではフィックスできていませんが、新アリーナはぜひとも実現したいことです。中核都市である宇都宮に今までにない規模、設備のアリーナを作る。完成するに至れば交流人口の拡大も見込めますし、経済活性化やシビックプライド、防災拠点など様々な面でさらに幅を広げることができます。それは、沖縄アリーナさんやSAGAアリーナさんが前例を示していただいており、我々も社会に対していかに価値を発揮できるか。そこを突き詰めて訴えていきたいと思います。
若い方は大都市への憧れを持つ方も多いですが、もし地元に素晴らしいエンタメができ、宇都宮がもっと誇れる街になれば「戻って住みたい」と思ったり「ここで働きたい」という気持ちにもなると思います。まずはアリーナを確定させること、そしてその効果を最大化したいという思いがあります。
――最後に「BREX with」としての未来像があったら教えて下さい。
藤本)初心に立ち返るというわけではありませんが、活動を通してブレックスがより身近な存在になり、文化になる。そういう状態にしたいですね。私は海外で生活した経験もありますが、地元にあるスポーツチームの存在価値は非常に大きいものです。ブレックスがそういう存在になっていくためにも、選手の力も借りながら、「BREX with」としての活動の幅を広げていきたいと思います。
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宇都宮ブレックスのSDGsプロジェクト「BREX With」の詳細はこちら https://www.utsunomiyabrex.com/brex-with/
取材協力:Bリーグ
B.Hope WEBサイトはこちら https://www.bleague.jp/b-hope/
B.Hope公式Xはこちら https://x.com/B_LEAGUE_HOPE
記事提供:月刊バスケットボール