2024.09.18
長野誠史選手インタビュー! シーホース三河「Be With」で目指す未来のカタチ(後編)
長野誠史選手インタビュー 毎年オフに小学校に複数訪問「感謝の大切さを伝え、勇気を与えたい」
Bリーグの協力の下、リーグで行われている社会的責任活動「B.LEAGUE HOPE」にフォーカス。今回はシーホース三河(以下三河)のSDGsプロジェクト「Be With」について長野誠史選手に小学校訪問について、そしてスタッフに聞く三河が目指すアリーナ起点の街づくりについてお話を伺いました。
シーホース三河(以下三河)が設立当初より行っていた社会貢献活動が、2022-23シーズンよりSDGsプロジェクト「Be With」と名付けられたことで、より積極的な取り組みがスタートしたと前編でご紹介しました。(前編はこちら ※B.Hopeサイト)
その三河が社会貢献活動を行っていくうえで大切にしているのが、「まちづくり」「ひとづくり」「なかまづくり」という3つの軸です。その考えは新アリーナ (2026年10月に完成予定)のコンセプト、“人が動く!地域が動く!未来が動く!”にも生かされています。
――毎年オフ、積極的に学校を訪問されているそうですね。7月には安城西部小学校を訪問し、6年生100名に”夢”をテーマにお話されたと伺いました。こういった活動はどのくらいの頻度で行っているのでしょうか?
長野)オフの時期に毎年4、5校は顔を出しています。普段はなかなか触れ合えない子どもたちと一緒にバスケをやったり、給食を食べたり、色々な話をしたりというのは、自分も元気をもらえる活動です。小学生ですとまだバスケをやったことがない、知らないという子も結構いるので、「こんなに楽しいスポーツなんだよ」ということを知ってもらえたらと思っています。
――テーマは大切にしてきた「感謝」「挑戦」「目標」「努力」という言葉だとお聞きました。
長野)今までの経験、培ってきたことを考えた場合に、4つの言葉を一番大事にしてきました。それを伝えたいと思っています。話をしていくと「こんな夢があります」と言う子もいますし、逆に「まだ夢がないです」と言う子もいます。嬉しかったのは、講演後に送ってくれた手紙で「夢を持ちたいです」とか「夢に向かって頑張ります」と書いてくれたりすることです。
――長野選手にとってもエネルギーにつながる出会いということですね。また子どもたちにはどんな影響を与えたいと考えていますか?
長野)そうですね。実際に会った時にすごく喜んでくれますし、特別な体験だなと感じています。影響ということでは、自分のように身長が低いプレーヤーでも、プロの中で頑張れるということを伝えたいし、見てもらいたいですね。あきらめないことの大事さを知ってほしいです。それと自分が小学生だったころには、プロ選手と触れ合う機会はありませんでした。実際に学校を訪問して自分と出会ったことを一つのきっかけとして早い年齢から目標に向かって進んでくれたら、なおさらにうれしいですね。
――出身地の石川県でも子どもたちにクリニックをされているそうですね。
長野)同級生で地元が同じ森井健太(横浜ビー・コルセアーズ)から声をかけてもらい、石川県のバスケの発展に向けて少しでも力になりたいということで、昨年から参加し始めました。今年のお正月には能登半島で地震が発生し、避難所として使われていたこともあって体育館を使えない状況がありました。そのような時に、B.Hope と選手会の活動でプロ選手が集まって活動することができました。とても意義あることだと思いますし、今後も積極的にやっていければと考えています。
――子どもたちの表情はどのように感じましたか?
長野)元気がよかったですし、笑顔を見せてくれた子がたくさんいました。前にも参加してくれて見覚えがある子に声を掛けてコミュニケーションを取っていたのですが、前回より少しでも上達していることがわかってうれしくなりました。クリニックも回数を重ねることで、効果も笑顔も生まれやすくなるんだと思います。こういうことをきっかけに、プロ選手になってくれたらうれしいですね。自分にとっても、いい時間になりました。
――4つの言葉の中で特に伝えたいものはありますか?
長野)「感謝」する大切さだけは、特に伝えるように気を付けています。小学校に訪問した際もそこを意識していますね。先ほどもお話しましたが、能登半島地震ではスポーツができない期間がありました。当たり前のことができているという感謝を親や保護者の方に一言ずつでも伝えてみようと語りかけています。
――長野選手が感謝の大切さを教わったのは、どんな機会だったのでしょうか?
長野)金沢高時代の恩師の教えです。地域の方々や先生、保護者の皆さんが応援してくれているからこそ、バスケができるし、結果も出せるんだよと言っていただき、「常に感謝を伝えなさい」と教わりました。
――三河としては「Be With」を推進していますし、リーグとしては「B.LEAGUE Hope(B.Hope)」として活動しています。プロ選手が社会貢献活動を行う意義をどのように考えているでしょうか?
長野)「勇気」を与えるというのが、一つあると思います。先ほども言いましたが、自分は身長が低くても、大きい選手がいる世界でやり合っています。“小さくてもやれる”、それを最前線で自分が示すことで、「自分は背が低いからプロ選手になれないかも」と思っているような子どもたちに、勇気を与えられるのではないかと思います。
――活動を行う中で、選手たちが得られることもありますか?
長野)あります。まず教える自分が、しっかりできないとダメですよね。それとクリニックの中で、自分もこういうプレーをやってみたいというヒントが浮かび、「こういう練習をしたいな」と思ったりもします(笑) 子どもたちと触れ合うことで、自分の成長に繋がる部分は多いのかなと思っています。
――興味深い話ですね(笑) 三河地域での活動を続ける中で、バスケに対する盛り上がりや期待度、子どもたちの反応をどんな風に捉えていますか?
長野)子どもたちはみんな「試合に行きます」だったり「行きたいです」と言ってくれますし、「サインしてください」と近寄ってきてくれたりもします。オリンピックでの活躍もあり、刈谷市でのバスケ熱はますます高まっているなと感じていますね。
――今後、活動の幅を広げたいといった思いはありますか?
長野)今、考えているのは石川県でリズムトレーニングの活動をやりたいと考えています。大学の同期がリズムトレーニングの講師をやっている縁で、このオフからトレーニングに少しずつ取り入れたのですが、楽しいし難しい(笑) 実は小さいころからリズムトレーニングを行うと、体を思い通りに動かす力がすごく高くなるそうなんです。実際に、ずっとやっている子どもたちを見ると体の動き方がスムーズなんですよ。大人になってからでも、プロ選手でもメリットがあるようです。今はまだ認知度が低いのですが、こちらも広めていきたいなという思いがあります。
――Bリーグの中でも身体能力が高いなと思うのですが、長野選手でも難しいと感じるのですか?
長野)特に力を入れるところ、抜くところというのは、なかなか難しいですね。もし小さいころからやっていたら、緩急の使い方ももっとうまくできたかもしれないと思います。子どもたちは今こそ始め時だと思いますので、環境を作っていきたいですね。
――新たな活動も楽しみしております。ありがとうございました。
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スタッフに聞く三河が目指すアリーナ起点の街づくり
――「まちづくり」「ひとづくり」「なかまづくり」という3つの軸を掲げていますが、2016年当初より活動していたことがその3つに集約できるということでしょうか。
「クラブとして強ければいいわけではない」という根底にある想いから様々な活動を行ってきていました。それらを言葉で表すと、その3つでした。中でも基盤にあるべきだと考えているのが「なかまづくり」です。それは自分たちも含めた「ひとづくり」につながり、地域に根ざし、愛されるクラブになるという「まちづくり」にもつながっていきます。強ければいいだけではなく、地域のハブ(中心)となるクラブでありたいと考えています。
――新アリーナを建設にあたっても、それらの考え、想いを落とし込まれたと伺いました。
単に施設を作るというだけではありません。アリーナ作りは「まちづくり」につながるという考えがありました。新アリーナを発表する際に紹介したイラストでは、我々の想いを表現しています。新アリーナが街の中心にあり、さまざまな人々が描かれているのですが、これはアリーナを作ることで人が集まり、さらに集まることで人が育ち、経済が回っていくということを表現しています。アリーナを中心に、西三河地域、そして愛知県が発展していってほしいという願い、理想の形です。
©SeaHorses Mikawa
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――アリーナの完成が待ち遠しいですね。完成後に「Be With」の活動でも利用するアイディアがあるのでしょうか?
一つは安城市民を対象に、アリーナの使い方ワークショップを開きたいと考えています。B.LEAGUE PREMIERのゲームが開催される夢のようなアリーナを使い、スポーツ×地域の視点で新たな地域連係の形を実現すること。課題の解決、交流の架け橋といった地域が活性化する試みを考えています。
――最後に「Be With」としてやっていきたい取り組みがあったら教えてください。
選手の面では学校訪問数を増やし、子どもたちが触れ合う機会を作りたいですし、“ひとづくり”という面でコーチやスタッフもコミュニケーションを図っていく機会を作っていきたいですね。そのほか、西三河地域の特別支援学校でのクリニックや交流試合といったことも考えています。シーホース三河の想いに賛同いただけるファンやパートナー企業の皆さま、地域社会と共に、今後も持続可能な成長を続けていきたいと考えています。
オンコートでは「共に頂点へ」、オフコートでは「共により良き未来へ」を合言葉に地域の皆様と共に社会課題解決に積極的に取り組んできたシーホース三河。SDGsプロジェクト「Be With」の今後の活動に、ぜひご注目ください。
シーホース三河のSDGsプロジェクト「Be With」の詳細はこちら https://go-seahorses.jp/company/bewith/
取材協力:Bリーグ
B.Hope WEBサイトはこちら https://www.bleague.jp/b-hope/
B.Hope公式Xはこちら https://x.com/B_LEAGUE_HOPE
※この原稿は「月刊バスケットボールWEB」https://www.basketball-zine.com/ に掲載されたものです
※この原稿は「月刊バスケットボールWEB」https://www.basketball-zine.com/ に掲載されたものです
記事提供:月刊バスケットボール