2年目のブレイクを期す横浜ビー・コルセアーズの松崎裕樹「積極性を持って、チームの核となる選手になりたい」
プレシーズンの川崎戦、約20分の出場で28得点の大暴れ
9月15日、横浜ビー・コルセアーズがプレシーズンゲームで川崎ブレイブサンダースと対戦。ともにアップテンポな展開から積極的にシュートを放つ、点の取り合いとなったが94-100で競り負けた。
オフェンスが好調な横浜BCは前半を54-47で終えたが、第3クォーターに17-27とビッククォーターを作られて失速したのが結果的に響いた。ダミアン・イングリス、ナナーダニエル弾の両ビッグマンが欠場する中、マイク・コッツアーがファウルトラブルに陥った。100失点が示すようにディフェンス面は反省すべき点が多かった。
ただ、ディフェンスのネガティブな面よりも、ラッシ・トゥオビ新ヘッドコーチの指向するトランジション、ボールシェアを重視するチームオフェンスのポジティブな面の方が目立っていた。中でも松崎裕樹は非公式ではあるが、ファウルアウトの影響で18分20秒のプレータイムに留まった中で28得点の大爆発を見せた。3ポイントシュート5本中4本成功に加え、ゴール下へのカットインからのシュートでも得点を量産し、内外バランス良く高確率でシュートを沈めた。
誰よりもインパクトを残した松崎は、次のように試合を振り返る。「前半、ビッグマンのマイクがファウルトラブルになったところでオン・ザ・コート1や日本人だけの時間がありましたが、ダブルチームや足を使ったローテーションで守ることでなんとかリードで終わることができました。ただ、プレシーズンの3試合、大阪(エヴェッサ)戦、アルティーリ(千葉)戦、今回の川崎戦と後半の入りでディフェンスの強度が落ちて、後半で53点を取られて課題が残りました。100点を取られると勝ちに持っていくのは難しいので、そこを改善しないといけないと思いました」
一方、自身の28得点も含めオフェンスに関しては「昨年に比べて得点に絡むシーンが増えました。ラッシコーチの新しいバスケットに全員が手応えを感じた3試合だったと思います」と収穫を語る。
トゥオビ体制において横浜BCは、松崎を筆頭にウイング陣のゴール下へのカットイン、ドライブが増えている。そこには「バックドアなど大好きなので、それができたのはうれしいです」と語る指揮官の好みも影響している。そして松崎は新しいスタイルが生み出す好循環への手応えを語る。
「今年のバスケは、ボールも人も動かすスタイルに取り組んでいます。今日のようにバックカットから点数をどんどん狙っていきたいです。この動きによってスペースが生まれるので、ズレを作ってスリーを決めることをラッシコーチが求めています。そこを意識しています」
「勇輝が抜けてビーコルが弱くなってしまったという見方を覆したい」
今シーズンの横浜BCは、絶対的な中心選手だった河村勇輝がNBA挑戦によって退団したことで文字通り新時代を迎えている。松崎は「チーム全員が、勇輝が抜けてビーコルが弱くなってしまったという見方を覆したいと思っています」と言い切る。それが昨シーズンからの残留メンバーだけでなくチーム全員の共通意識になっていることで、より結束が強まっているという。松崎は次のエピソードを明かしてくれた。
「オーストラリアのチームと試合をした時、ゲイリー(クラーク)選手が『勇輝が抜けてチーム力が落ちるという見方を変えよう』と、新しく入ってきた選手がチームのことを思った発言をしてくれました。全員がチャンピオンを取るという目標をブラさずにやっていることが、自分の成長に繋がりますし、チーム全体としての積極性、強度を生んでいると思います」
プロ1年目の昨シーズン、松崎は50試合に出場するも平均1.3得点、0.7リバウンドに終わった。そのため「2年目になりますが、オフシーズンは危機感を持っていました」と背水の陣で2年目のシーズンを迎えている。そして次のような強い覚悟を持ってコートに立っている「去年の成績がふるわなくて、このままだったらそもそもリーグにいられない。そこに勇輝も抜けるとなって自分自身、積極性を持ってチームの核となる選手になりたいです」
今日の試合で、さっそく昨年と違うことを証明した松崎に対し、トゥオビヘッドコーチは「プレシーズンでここまで素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたのは、夏の間にハードワークをしていたことの証明だと思います」と称えた。
来週、横浜BCは天皇杯2次ラウンドを広島会場で戦う。B3のヴィアティン三重に勝利すると、渡邊雄太の加入で最も注目を集める千葉ジェッツと対戦することが濃厚だ。松崎は目の前の試合に集中すると同時に、千葉Jとの対決を「間違いなく意識はしています」と闘志を燃やす。
「ジェッツさんは、すごい補強をして間違いなくトップのチームです。ただ、自分たちのバスケをやって100%噛み合えば勝てるチャンスはあります。下剋上ではないですが、トーナメントは一発勝負で何があるのか分からない。とにかく1回戦を勝ってジェッツさんが順当に上がってきたら、全員が倒しにいく気持ちでやっていきたいです」
1週間後、横浜BCがいきなりの下剋上で昨シーズンとの違いを見せることができるか。そのためには、松崎が今日見せた2年目のブレイクの兆しを継続させなければならない。