44歳でも現役バリバリ…来日15年目を迎えるジェフ・ギブスが初B1の越谷に「刺激与える」
敵として対峙したチームの中には、ほんの数年前まで同じユニフォームを着て戦った選手もいれば、指導を受けたコーチ陣もいた。記者会見場に現れた宇都宮ブレックスの渡邉裕規はこう言った。
「やりづらさはなかったですけど、不思議な感じでしたね」
9月8日、FUKAI SQUARE GARDEN 足利(足利市民体育館)で行われたプレシーズンゲームで、宇都宮は越谷アルファーズを迎え撃った。チケットは完売。会場の大半が黄色で埋め尽くされたが、この日は越谷の選手たちに対しても度々大きな歓声が上がった。
安齋竜三ヘッドコーチに町田洋介アソシエイトコーチ、選手では四家魁人、LJ・ピークなど、越谷には“元BREX”のメンバーが多数在籍する。安齋HCや宇都宮の田臥勇太と同年代(1980年生まれ)にあたるジェフ・ギブスもその1人だ。
「やっぱりブレックスは自分にとっても特別なチームですし、今日は相手チームとして勇太、遠藤(祐亮)、渡邉たちと再会できてすごいうれしかった。(竹内)公輔に関しては多分日本で一番長くプレーしたチームメートなのでいつ見ても安心しますし、またみんなと会うことができて本当に楽しい時間でした」
ギブスはBリーグが開幕した2016年から5シーズンに渡り宇都宮に所属。名前を挙げた選手たちは、ともにBリーグ初代王者をつかみ取ったかけがえのない仲間たちである。
しかし、試合では76-94と大差をつけられたことも事実。今シーズンの越谷には、宇都宮のような「巨大な壁」(安齋HC)と言えるライバルたちが立ちはだかる。その壁に1つでも多くの亀裂を入れ、打ち破るための重要なピースとして、安齋HCは44歳の大ベテランにラブコールを送った。
「ジェフとは5年くらい(宇都宮で)一緒でしたので、お互いのことを分かり合っている部分がありました。ジェフ自身もこの1、2年は引退するのかどうかを考えながらプレーしていたと思うんですけど、連絡を取ったときに『今年もまたやりたい』という声が聞けました。うちとしてもカイ・ソットとティム(ソアレス)が加わった中で、ベテランとして若手のビッグマンたちを引っ張っていく存在が必要だなと。今の段階でも、そこは本当に十分すぎるくらいやってくれていますし、プレーの質に関しても『まだまだこんなやれるんだな』『すげえな』と思いながら見ています」
宇都宮を退団後、ギブスは当時創設された長崎ヴェルカに活躍の場を移し、B2とB1昇格を成し遂げた。昨シーズンは開幕前に長崎とサポートコーチ契約を結んだが、開幕直後にサンロッカーズ渋谷で再び選手としてプレー。すると、計56試合に出場を果たして平均プレータイムは24分8秒。健在ぶりを大いに示した。
ギブスは今回の一戦でも約24分間コートに立ち、19得点を記録。188センチながら112キロの肉体とウィングスパンを生かしてゴール下の肉弾戦を制すだけでなく、リーダーシップの面でも常に仲間を鼓舞した。
「コーチからすると本当にありがたい」。ギブスの頼もしいプレーを再確認した安齋HCはそう口にした。「途中で20点くらい点差が離れた時にでも、士気が下がらないようにコミュニケーションをとって他の選手たちを引っ張ってくれました。プレーでも負けず嫌いな部分が出ていたと思います」。
2010年から日本でプレーする大ベテランは、今シーズンで来日15年目を迎える。「リーダーシップやフィジカルな面を発揮したいですし、越谷は若いチームなので若手にも刺激を与えていけたらなと思っています」と、クラブとともに新たなチャレンジに挑む。
越谷を初のB1へ導いた名将と、今でも現役でプレーし続ける大ベテラン。Bリーグの頂点に立った2人が、今シーズンの越谷アルファーズにどのような変化をもたらすか非常に楽しみだ。
文・写真=小沼克年