青木保憲が体現する仙台89ERSの『GRIND』(前編)「負けていられないでしょ!という気持ちに、阿部がさせてくれた」
「シーズン前に思い描いていた未来予想図には届かなかった」
昨シーズンの仙台89ERSは27勝33敗の東地区6位でレギュラーシーズンを終えた。勝率5割をわずかに下回ったものの、前シーズンに比べて8つ勝ち星を上乗せし、大きなステップアップを見せた。今オフはヘッドコーチの交代や新加入選手を7人迎えるなど転換期を迎え、さらなる躍進が期待される。2シーズン続けてキャプテンを務める青木保憲に話を聞いた。
――まず昨シーズンの振り返りをお願いします。
目標の30勝は達成できませんでしたが、過程の部分ではチームとしての積み上げや成長を間違いなくつかんだシーズンになりました。同じように言っているチームメートも多かったですが、個人的にはキャリアの中でも最も充実したシーズンでした。
――どのような部分に成長を感じましたか?
チームのコンセプトとして、ハードにやり続けるというのがあります。アーリーオフェンスを突き詰めて、シーズンを通じてブレずにやり続けられたことは価値のあることでした。何より選手それぞれがリーダーシップを取って、発言する回数が本当に増えました。みんながやりたいことや求めることを責任を持って発し、それに対してみんなで応えていく。それをやり続けられました。ブローアウト(大敗)する試合が多くなかったというのは、自分たちがやってきたことを信じてやり続けることができたからだと思っています。
――年明けは上位チーム相手にも接戦をモノにする試合がありました。成長が結果に現れてきたという感触でしょうか?
普段の練習での競争も激しくなって、意識の部分が変わったというのを感じました。どの練習でも競い合っていましたし「負けていいポゼッションなんてない」という雰囲気でした。それを続けていく意識が強豪相手にも出せたという印象です。
――逆に目標としていた30勝までわずかに届きませんでした。見えていた課題などはありますか?
アクシデントもあり、コントロールできない部分もありますが、健康でいることは重要な要素だったと思います。あとは日本人選手でいうと、阿部(諒・現サンロッカーズ渋谷)に偏ってしまったのはありました。チームとしてもう1つ、2つ選択肢が持てていれば、幅が広がったのかなと思います。数字的なことで言うと、3ポイントシュートの確率を上げていかなければというのもあります。ディフェンスを頑張って、オフェンスも良いクリエイトをしたけど、最後のワイドオープンを外してしまったり。そこをしっかり決めていれば、もう何試合かは勝てていたのかなと。
――個人としてのプレーはどう評価していますか?
自分がシーズン前に思い描いていた未来予想図には届かなかったです。もっと自分が引っ張らないといけないと思っていた中で、阿部が素晴らしいパフォーマンスでチームを引っ張ってくれたのは、もちろんポジティブなことです。ただ、その次に僕が得点やクリエイトで手助けになれる必要があったなというのが正直なところです。終盤戦はその辺りの意識を自分の中で整理して、クロージングの場面でも自分がクリエイトしたり得点するというマインドを持てたことは新シーズンに繋がると思っています。
「仙台は悩みを伝えられて、分かってくれる仲間がいる」
――昨シーズンの最終戦後に藤田弘輝ヘッドコーチ(現大阪エヴェッサ)が「阿部の加入により、青木も引っ張られるように『自分がやる』というアグレッシブさが出てきた」と評価していたのが印象的でした。
言葉は悪くなるんですけど、阿部にやらせ続けるのもシャクだなぁと(笑)。良い関係だから言えるんですけど、彼の活躍がうれしい反面「いや、負けていられないでしょ」という気持ちに彼がさせてくれました。彼が勝つマインドを持ってきてくれたのは、チームにも僕個人にとっても大きいことでした。
――2シーズン前まで所属していた広島ドラゴンフライズが優勝しました。刺激になりましたか?
まずは率直にうれしかったですね。一緒にやっていた選手も多いですし、下剋上して勝つ姿は感慨深い反面、1年半前までは所属していた訳ですから、自分もここに立ちたいという思いはあらためて持ち続けないといけないと感じました。僕らにも可能性はゼロではないし、1試合1試合積み重ねていく先にチャンピオンシップが見えてくるので、やるからにはそれを追い求めていかないといけないと思います。
――キャリアを振り返って、いま仙台でプレーしている自分の姿はイメージしていたものでしょうか?
川崎ブレイブサンダースに加入した時は「このチームでずっとやりたい」というのが率直な気持ちだったので、当時の自分からすると不思議な感覚だと思います。ありがたいことに高校や大学では、優勝を狙えるチームだったので、当時はそういうチームで頑張るのが自分にとって素晴らしいことだと思っていました。今は試合に出ることがいかに楽しいことで、自分の人生において素晴らしいことなのかを感じられています。昨シーズンがキャリアの中でも一番充実していて、一番短く感じました。
――短く感じたというのは、悩む間もなく無我夢中で終わっていたという感じですか?
結構悩むタイプなので、毎年悩むのですが、それを伝えられる仲間がいて、分かってくれる仲間がいました。もちろん今までもそうだったのですが、昨シーズンはより人との関わりが密接で、強いモノを築けた感触があります。なおかつ、自分が中心としてやらせてもらっていたので、気がついたらあっという間に終わっていたという感じですね。