滋賀レイクス前田健滋朗ヘッドコーチの新たな挑戦(後編)「滋賀はBリーグで求められる選手を輩出し続けている素晴らしいクラブ」
「それぞれ最大化されたものを掛け算することでチーム力が高まる」
悪夢のB2降格を経て、昨シーズンはB2優勝&B1復帰と歓喜に沸いた滋賀レイクス。今シーズンは新たに前田健滋朗ヘッドコーチを招聘し、B1でのリスタートを切る。国内トップリーグやオーストラリアでアシスタントコーチを歴任し、直近2シーズンは長崎ヴェルカでヘッドコーチを務めた若き指揮官に話を聞いた。
――昨シーズンも長崎でB1昇格初年度のクラブを指揮しました。その経験が生きるという感触はありますか?
経験が生きるかどうかはわからないですが「喰ってやるんだ!」という気持ちをチーム全体としても個々の選手もしっかりと持ってやっていきたいと思います。とにかく1つ喰って2つ目、3つ目、4つ目と積み重ねていきたいというマインドです。今シーズン最初の段階ではボトムツーからのスタートですので、いかにB1のチームに対して戦っていくかというポジションであって、チャレンジングなシーズンになります。
――そんな中で、どのような戦い方を見せたいと考えていますか?
まずはディフェンスが最重要だと思っています。昨シーズン、長崎でも力を入れましたが、十分ではありませんでした。トランジションディフェンスをしっかりとコントロールすること、1対1のディフェンスを守り切ってシュートに対してしっかりとコンテストすること、そしてリバウンドをしっかり取り切ること。この3つをチームで徹底的にやることによってディフェンスをしっかりコントロールしたいです。オフェンスに関してはアドバンテージのバスケットという考え方をしてるので、アドバンテージの状況でしっかりとチームのシュートを打っていきます。そのうちの1つがトランジションであって、トランジションを出すことだけが目的ではないです。あとは、しっかりとクリエイトすること。チームとして協力してやっていかなければならない部分ですし、それぞれの選手の良さをしっかりと生かすことによって、クリエイトしてアドバンテージの状態を作ってチームでシュートを打ちに行くという風に考えています。
――外国籍選手の編成が昨シーズンの長崎と近い部分もあるような印象です。
マーキース・カミングス選手について、長崎でいうマット・ボンズ選手やジャレル・ブラントリー選手のような役回りですが、また違ったタイプの選手です。そこは違った戦い方になると思いますし、我々は全員でしっかりと戦っていかなければいけません。日本人選手の組み合わせもかなりバリエーションがあると思いますし、そこがこれまでと違う部分だと思います。
――バックコートの選手たちも期待が持てます。
それぞれの選手に輝く部分がありますし、武器になる部分があります。まずはその武器になる部分をコート上でしっかりと表現してほしいと思っています。その組み合わせや、どういう形で表現してもらうかというところに関しては、私がしっかりと責任を持ちますが、彼らの強みをしっかりと輝かせるというのは彼らの責任だと思っています。それぞれ最大化されたものを掛け算することによって、チーム力が高まると思います。
「目の前の試合を全力で取りにいって、しっかりと1つずつ勝つことが大切」
――クラブとして中期目標を掲げましたが、ヘッドコーチとして選手たちに共有している目標はありますか?
バスケットの成績では、3つのチャレンジがあります。その中でも大きな目標は勝ち越しです。もう2つのチャレンジもチームとしてしっかりとクリアしていきます。ただし、私のマインドとしては積み重ねた先にそれがあると思っているので、目の前の試合を全力で取りにいって、しっかりと1つずつ勝つことが大切だと思います。ずっと思っていることですが、1つ試合に勝つと2つ目はさらに難しくなる。2つ目勝つと3つ目はさら難しくなる。どんどん難しさのレベルが上がっていくというのが、バスケットボールに限らず、人生ではそんなことばかりです。本当に目の前の試合を勝ちにいって成長して、さらに難しい2つ目3つ目を取っていき最終的に全体勝ち越しを狙っていくのが競技面のところです。
もう1つはクラブとして、どのようにステップアップできるかというところになります。平均入場者数に貢献することであったり、売上にしっかりと貢献すること。滋賀レイクスというクラブを誇りに思っていただけるように、もっともっと地域に根付かせるというところも全体勝ち越しと同じくらい大事だと思っています。その2つをしっかりと追いかけていくシーズンとなります。
――昨シーズンまでの主力の選手が退団になり、不安を感じているブースターもいると思います。
もしかしたら残念な思いを持っている方もいるかもしれないですが、これだけBリーグの中で求められる選手を滋賀から輩出しているのは素晴らしいですし、それを続けることができているというのが最大の力だと思っています。なおかつ、そういった素晴らしい選手たちが他のクラブに行っても活躍しており、そしてまた次の選手たちがどんどん出てきているというのは、このB1の中を見てもかなり貴重な存在です。これまでも齋藤拓実選手やテーブス海選手だったり、今回であれば湧川颯斗選手や川真田紘也選手が抜けましたが、主力の退団を経験しても、どんどん新しくチームを引っ張る選手が出てきています。今シーズンのメンバーがまたチームの中心となって引っ張っていって欲しいと思っているので、私たちは全く悲観していません。それだけ素晴らしい文化があるクラブだと思っています。
――最後に応援してくださっている方にメッセージをお願いします。
チームとして目標であるシーズン勝ち越しを果たし、そしてクラブとしての価値を上げていくこと、そしてみなさんの日々の活力になれるようにクラブとして表現していきます。そのために毎日しっかりとよりよくなり続けていきますので、一緒になってこのクラブの発展を見守っていただければと思います。今シーズンよろしくお願いします。