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2024.07.26

千葉Jと契約問題のあったハーバートHC、ドイツ強豪チームとの2年契約を発表

  • 月刊バスケットボール

結果的に慣れ親しんだドイツのチームと契約


現地7月25日、FCバイエルン・ミュンヘンは、ゴードン・ハーバート氏(ドイツ代表ヘッドコーチ)と2年間のHC契約を結んだと発表した。ハーバートは5月、千葉ジェッツとヘッドコーチ契約を交わしたものの、その後、契約破棄を申し出て、契約解除となっていた。

FCバイエルン・ミュンヘンは昨季、リーグとBBLカップの2冠に輝いているドイツの強豪。ハーバート氏との契約期間は2026年までの2年間だという。そのリリースでは、ハーバート氏の以下のコメントも発表されている。
「バイエルン・ミュンヘンのような、世界最大かつ最高のスポーツブランドの一つであるクラブのHCになれたことをとても光栄に思います。ファンが信頼し、誇りに思えるような、非常に競争力のあるチームができるはずです。マルコ・ペシッチ氏(CEO)をはじめとするクラブスタッフは、プロとして卓越した仕事をしているので、準備は万端だと思います。私は全身全霊をかけてヘッドコーチを務めるつもりです。特別な瞬間のために身を捧げ、関係者の皆さんと一緒に仕事ができることをとても楽しみにしています。しかし、今、私の全神経は代表チームに費やしています。昨年、私と一緒に全力を尽くしてくれた選手たちと一緒です。新たなチャプターが始まる前に、まずはオリンピックでベストを尽くします」

冒頭で紹介したとおり、ハーバート氏は一度千葉Jと契約合意に達してサインをした。しかし、そのあとに契約破棄を申し出ることになり、最終的に「双方合意のもと契約を解除」(7月19日発表)となっている。

ドイツ連盟が、パリ五輪を最後に代表HCからハーバート氏が退任すると発表したのは5月15日だった。そのリリースの中で同連盟は「彼が別の職に就きたいと考えている。それを妨害するつもりはない。彼は今オリンピックに向けて、情熱を注いでいる。新たな感嘆符を付けて終わりとなれば最高だ」と綴っている。千葉Jが“5月に合意に達していた”と発表していたことから考えても、“別の仕事”は千葉Jでのヘッドコーチと思われる。ところが「先日ハーバート氏より契約を破棄したいとの申し入れが突然入ってまいりました」(7月10日発表)という事態になる。

一体何が起きたのか? 実はFCバイエルン・ミュンヘンでヘッドコーチを務めていたパブロ・ラソ氏(現サスキ・バスコニアHC)が6月下旬に契約終了を申し出て、6月28日にチームから退任となっている。今回の発表の中で、ペシッチCEOは「ラソが突然退任し、後任を探すことが急務となった。ゴーディは、すでに何人かの選手とリーグを知っているのでチャンスがあれば、うまくいく可能性が高いことは明らかだった。契約に至ったことをとてもうれしく思っている」とコメントしている。ラソ前HCの退任前に、FCバイエルン・ミュンヘンが接触したことは考えにくい。ハーバート氏は、あとからオファーが来たFCバイエルン・ミュンヘンを選択したということになるだろう。

その選択に至った理由はさまざま考えられるが、ブンデスリーガ(ドイツリーグ)をよく知っているというのは、大きかったはずだ。ハーバート氏は、2000-01シーズンにヴュルツブルクを指揮すると、続いてスカイライナーズ・フランクフルトのHCを3シーズン務めた。その後、フランスやジョージア、NBAなどでコーチを経験し、2013年から再びスカイライナーズ・フランクフルトに戻って7年HCになるなど長年ドイツでヘッドコーチを務めている。慣れ親しんだ場所で仕事をしたいという考えに至るのも不自然ではない(もちろん、条件など他の理由もあるかもしれない。6月に出版した著書の中で、何年もうつ症状やアルコール中毒に苦しんでいたと告白しており、何らかの影響を受けた可能性もある)。

結果的に、千葉Jは昨季NBAバックスでアシスタントコーチを務めていたトレヴァー・グリーソン氏とHC契約。ハーバート氏はFCバイエルン・ミュンヘンのHCを務めることになった。「双方合意のもと契約を解除」で決着しているため、これ以上何があるわけではないが、日本のバスケファン、とりわけ千葉Jのファンにとっては腑に落ちない結果になったことは間違いない。