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2024.06.29

琉球ゴールデンキングスの桶谷大HCが語る、常勝チームの作り方(前編)「苦しい時を乗り換えるのに一番重要なのは正しいカルチャー」

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桶谷大

2023-24シーズン、琉球ゴールデンキングスはあと1勝で連覇を逃したが、3年連続ファイナル進出の偉業を成し遂げた。桶谷大ヘッドコーチは2021-22シーズンに9年ぶりとなる琉球復帰を果たすと、名実ともにリーグ屈指の常勝チームへと押し上げた。新シーズンもチームを率いる指揮官に、今シーズンの振り返りと自身のコーチ哲学について聞いた。

「結局は生産性の高いチームが勝つと思います」

――シーズンを振り返ると(ジャック)クーリー選手のインジュアリーリスト入りから始まり、外国籍選手が当初の意図した布陣でなかなか戦うことはできなかったです。アジア/帰化枠もシーズン途中に(カール)タマヨ選手から(アレックス)カーク選手へと変わりました。同じメンバーで連携を高める時間が少なかった難しさはありましたか。

去年のオフェンスの起点を継続していこうというイメージがある中、ヴィック・ローが来ました。彼は千葉ジェッツでメインプレーヤーを担っていて、(キングスでも)自分の役割は同じというところはすごくあったと思います。アレックスもアルバルク東京で活躍していて、キングスのバスケにフィットするのは時間がかかりました。それぞれがいろいろな思いを持っている中でチームとしてハマっていくのに時間がかかり、予想以上に難しかったです。みんながエゴを出していっては収拾がつかない。そういう意味ではチャンピオンシップに入ってからはみんながエゴの部分を取り除いて、チームが勝つために我慢強く、失敗を受け入れながらプレーできたと思います。

――シーズン途中からカーク選手が帰化枠としてローテーションに加わりました。だからこその難しさはありましたか?

アレックスが帰化選手としてプレーしたのは1月31日の佐賀(バルーナーズ)戦からですが、そこから故障もあって思うようにチーム練習に加わることができなかったです。それでコンディションを上げるのに時間がかかってしまいました。帰化枠としてフィットするのにも時間はかかりましたし、何なら帰化枠と外国籍2人を同時起用するラインアップでアドバンテージを取れていなかったと思います。新シーズンはそこでもう少し優位に立ちたいですし、他のチームが帰化選手を使ってくる時の対抗策をしっかりと持っておきたいです。

新シーズンは、日本人選手としてアレックスを起用できる強みをしっかり生かさないといけないです。ただ、大事なのは帰化選手がいる、いないではなく生産性です。どれだけ良い選手たちが出ていても、バスケットボールは5対5の競技なので、出ている5人で、チームとしていかに高い生産性を発揮できるかというところにかかっています。去年のCSでは結局、帰化選手をほとんど起用せずに優勝しましたし、その前年の宇都宮(ブレックス)さんも同じです。結局は、(帰化選手の有無は関係なく)生産性の高いチームが勝つと思います。

桶谷大

「負けないとわからない、負けないと出てこない課題はたくさんあります」

――今シーズン、カーク選手と共に大きな変化となったのがロー選手の加入でした。複数の主力選手が去った中、新シーズンではロー選手をしっかりフィットさせることの重要度がより増していきます。

去年、優勝して今シーズンを迎えるにあたって現状維持の考えはなかったです。そこで(ジョシュ)ダンカンからヴィックに変えたところはあります。ヴィックをどう機能させるか、ヴィック自身が周りをどう機能させるのかとなった時、後者の方が重要でした。ただ、彼は責任感が強いが故にどうしても自分が得点を取らないといけない、たくさんのことをやらないといけないと考えすぎる部分があり、一つひとつの判断が遅れてしまったところがありました。新シーズンは、その点についても改善していきたいです。

――桶谷HCが復帰してから今シーズンは3年目でしたが、過去2シーズンと比べても故障など、苦境が多かったと思います。それでもファイナルに到達したからこそ「ここが成長できた」といった部分はありますか。

時には「こういうトラブルもあるよね」ということだと思います。キャリアの浅い選手にしてみたら「こんなはずじゃない」という部分はあったかもしれないです。でも、プロを長く続けていたら想定外のことが発生して、思うようにいかないこともあります。そうなった時、苦境の原因を何かのせいにするのではなく、自分たちにベクトルを向けて乗り越える力を身につけることが一番重要です。今シーズンはそれがCSの短期決戦ではできましたが、レギュラーシーズン中にもできるようにならないといけない。そうなっていたらレギュラーシーズン最後の4連敗はなく、地区優勝を達成できていたと思います。

――過去2シーズンは大きな浮き沈みもなく、コンスタントに勝ち続けていました。勝っていたからこそ、チームとしてトラブルへの免疫がなかったと感じますか。

あると思います。負けないとわからない、負けないと出てこない課題はたくさんあります。勝っていればいろいろなモノがスムーズに回っていきますが、負けた時こそその人の素の部分が出てきて、どういう人間なのかということもわかってきます。そういった苦しい時を乗り換えるのに一番重要なのは正しいカルチャーです。キングスがどんなことがあっても最終的にやるべきことをやり続けることができるのは、このカルチャーを継承し、積み上げてきているからこそ。そこは、これからも大事にしていきたいです。

――ロー選手の獲得の背景に、勝ち続けるためには現状維持はないという確固たる方針がありました。それを踏まえ、新たな刺激として期待していることを教えてください。

そのあたりで期待している1人が脇真大で、彼が台頭してくるシーズンにしたいです。また、残留した若手選手がしっかりとゲームを作れるようになることで、西地区の優勝に返り咲くチャンスが生まれてくると思います。ただ、西地区は優勝した広島(ドラゴンフライズ)さんがいますし、より混戦になっていくと見ています。その中で勝ち切るには、いかに毎試合チームが一つになって戦えるかが最も重要です。