Bリーグ新人賞・金近廉がルーキーシーズンを回想…「贅沢なくらい色々な経験をさせてもらいました」
◆プロとして「たとえ負けていても最後まで戦う姿勢を見せ続ける」
5月31日に開催されたB.LEAGUE AWARD SHOWにおいて、B.LEAGUE2023-24シーズンの新人賞(ルーキー・オブ・ザ・イヤー)の栄誉を手にしたのは千葉ジェッツの金近廉。バスケットボールキングでは独自で金近に話を聞いた。
昨年2月に鮮烈な日本代表デビューを果たした金近は、同年4月に東海大学を中退して千葉Jの一員となったが、2022-23シーズンの選手登録期限を過ぎていたため、当時はまだ練習生。晴れて選手契約を結んで迎えた今シーズンは57試合に出場し、開幕節の2試合を含む7試合でスターターに抜擢されたほか、2ケタ得点も13度記録。ルーキーとしては申し分ないインパクトを残した。
「僕もこの賞を獲りたいと思っていましたし、選んでもらえてうれしい」と受賞の喜びを語った金近は、「シーズンの終盤は調子を落としてしまった部分があった」と反省の弁も述べつつ、「それでも選んでもらえたということがありがたい。この賞に恥じないように、また来シーズンしっかりやりたいと思います」と今後への決意もにじませた。
リーグ屈指の強豪である千葉Jはワイルドカード2位、全体8位でのCS進出となり、セミファイナル敗退という結果に終わったものの、天皇杯は5度目の優勝を果たし、東アジアスーパーリーグ(EASL)も優勝。金近も「ルーキーシーズンとしては贅沢なくらい、色々な経験をさせてもらって、いろんな面で成長できたかなと思います。常に高いレベルでプレーするチームですし、どのチームも千葉ジェッツを倒しにくるという感じがあるので、そういう戦いを多く経験できるというのはすごく成長につながったなと思います」と充実感を得られるとともに、個人としての成長も強く感じられるシーズンだった。
大学でのプレーをスキップし、強い決意を携えてプロに転向した金近。選手としてのレベルアップを期して飛び込んだ新しい世界は、ただそれだけではないプロアスリートの価値にも気づかせてくれた。それもまた、バスケットボール選手としての金近を一回り大きくした重要な要素だ。
「お客さんにはお金を払って見に来てもらっているので、そこの責任はあると思いますし、ただ自分が良ければそれでいいわけではなくて、勝ってる姿を見せることがブースターの方への恩返しになる。『今までは自分のためにやってきた』という言い方が正しいかどうかはわからないですが、親をはじめいろんな人に支えてもらいながら、より高いレベルでプレーできるようにと思ってバスケットをやってきたので、その意識の部分が全然違うというか、たとえ負けていても最後まで戦う姿勢を見せ続けることが大事だなと思うようになりました」
◆あるべき姿を示してくれた富樫勇樹を手本にさらに成長を期す
プロキャリアの出発点が千葉Jだったことも、金近にとっては大きな意味を持つものだった。その理由の一つが、富樫勇樹の存在。「大事な試合で活躍しますし、悪くてもすぐ忘れて次の試合はまた活躍する。長いシーズンを戦っていく上で、技術の部分はもちろんなんですが、そういうメンタルの部分が勝負強さにつながってるのはさすがだなと思いましたし、そういう人を一番近くで見られるのが本当に良かったです」と、リーグを代表する選手の凄みを間近で体感したことは金近にとっての財産。そして、千葉Jは観客動員でも常にリーグ上位の人気クラブとあって、ブースターの存在もモチベーションになった。
「アウェーにも来てくれますし、すごく熱いブースターが多くて一緒に戦ってる感があるので、その分頑張らないといけないなと思います。アウェーに行った時にすごいなと思うチームは他にもありますが、やっぱり千葉ジェッツのブースターが一番だなと思います」
金近は、今シーズンで印象に残った試合として12月9日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦を挙げた。いずれもキャリアハイとなる3ポイントシュート成功7本、22得点を叩き出した試合だ。ただ、これはアウェーでの試合だった。「相手のブースターが静かになる感じは好き」という金近も、「ホームで決めて盛り上がるのが一番。来シーズンはホームでいっぱい決めたいです」とブースターへの恩返しを誓う。もちろん、その先にあるのは金近がまだ経験していないリーグ制覇だ。
「CSのファイナルの舞台で戦いたい、優勝したいという気持ちがすごくあります。チームとしてもそこを目標に戦ってきて、セミファイナルで終わってしまって悔しい気持ちを全員が持ってると思います。来シーズンどういうチームになるかはまだわからないですが、しっかり目標を達成したいです」
最後に、金近からブースターへのメッセージをお届けしよう。1度しか獲ることのできないタイトルを手中にしたこの機会を、千葉Jの再浮上と自身のさらなる飛躍に向けて弾みにしていく、その決意の表れだ。
「今シーズンは本当に応援ありがとうございました。苦しい時期もありましたが、ホームでもアウェーでもずっと熱い声炎を送ってくれて、それが自分たちの原動力になっています。来シーズンも引き続き応炎していただけたら嬉しいですし、皆さんにしっかり恩返しできるようにより良い成績を残して、個人的にはまたAWARD SHOWに来られるように頑張ります!」
取材・文=吉川哲彦