ついに訪れた別れの時…10年間にわたってファジーカスと共闘した藤井祐眞「成長できたのはニックのおかげ」
「今日は一緒に楽しもうという気持ちでした。10年間ずっと一緒にプレーしてきて、本当に楽しかったです。一緒にプレーできて良かったという気持ちが強いです。ここまで自分を育ててくれたというか、自分が成長できたのはニックのおかげだと思っているので。本当に感謝したいですし、リスペクトの思いを送りたい人です。『ありがとう』という気持ちでいっぱいです」
5月30日に川崎市とどろきアリーナでニック・ファジーカスの引退試合「NICK THE LAST GAME」が開催。2014年の加入から前身の東芝ブレイブサンダースを含む川崎ブレイブサンダース一筋の藤井祐眞はファジーカスとプレーしたラストゲームをこのように振り返った。
「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2023-24」進出を争ったサンロッカーズ渋谷との4月28日のホーム最終戦、5月5日に敵地の横浜BUNTAIで行われた横浜ビー・コルセアーズとの2023-24レギュラーシーズン最終戦。どちらも敗戦後にファジーカスのセレモニーが行われたが、彼の様子を後方から眺める藤井には悲壮感が漂っていた。
「正直、負けて悔しかった」前者は、「勝ったほうがチャンピオンシップへ望みをつなげられました。勝てばまだまだニックと長くプレーできるというのもありましたし、チャンピオンシップに出たい気持ちもあって、単純に悔しかったです」。ファジーカスのスピーチを聞いていると、湧き上がるものがあったという。
「(スピーチで)自分の名前が出てきて。何年もシューティングやワークアウトを一緒にしてきたことをできなくなるとニックが話していた時、少し(感情を)抑えきれなくなりました」
横浜BC戦はチャンピオンシップ進出の可能性がなくなって迎えた試合。「レギュラーシーズン最後で、ニックとの公式戦が終わる試合でした。勝ち負けよりも寂しい気持ちが強かったです」と、当時の思いを明かした。
ファジーカスは川崎だけでなく、日本バスケットボール界に大きな影響を及ぼした。「ニックが来て日本のバスケットボールは大きく変わったと思います」と話した藤井は、日本代表が大金星を挙げた「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区1次予選(Window3)」のオーストラリア代表戦をピックアップした。
「忘れられない試合です。代表選手として日本をワールドカップに導いた選手なので、あの時がなければ、日本のバスケットボールは今、ここまで成長できていないのかなと思います。そういった意味でニックが与えた影響は大きいと思います」
かつての取材でファジーカスが「勢いに乗っている藤井選手は、僕の一番の相棒だった」と明かしたほどの間柄。「まだ現役を続けていくので、またいつかニックが日本に来たり、映像で僕のプレーを見てくれたらうれしいです。そのために全力で頑張り続けたいです」。藤井は持ち前の“元気印”を再びコートで披露してくれるだろう。