3年連続決勝の偉業を達成した琉球ゴールデンキングス、4季連続でキャプテンを務める田代直希が考える復調の理由とは
「正直、苦しい時間のほうが長くて辛かったです」
琉球ゴールデンキングスは、広島ドラゴンフライズと激突したBリーグファイナルの第3戦で敗退。初戦を制しながら第2戦、第3戦と敗れ、あと一歩でリーグ連覇を逃してしまった。この結果に選手、コーチ陣は大きな悔しさを感じているだろう。だが、レギュラーシーズン終盤となる約1ヵ月前の琉球は、4連敗を喫して西地区7連覇を逃すなど調子はどん底だった。そこから盛り返し、3年連続ファイナル進出を達成したことは、誇るべき功績だ。
今シーズンの琉球は、序盤から外国籍の故障者が続いて、チームの連携を高めることができずに四苦八苦した。そういった経緯も含めキャプテンの田代直希は、激動の1年をこう総括する。
「今年はかなり厳しいシーズンで、正直、苦しい時間のほうが長くて辛かったです。それでもファイナルに戻ってこられたのはチームとして、そして『沖縄のキングス』としてすごく価値のあることだと思います。力はあるはずなので、あと一歩のところで優勝を逃してしまった要因をどう改善していくのか、模索していかないといけないと思います」
チャンピオンシップ(CS)の戦いを振り返ると、琉球はクォーターファイナルでアルバルク東京を第3戦の末に撃破。この勢いに乗って千葉ジェッツとのセミファイナルに臨んだが、初戦は出だしから攻守で精彩を欠き、62-95とまったく良いところなく敗れた。千葉Jには天皇杯決勝でも69-117と完膚なきまでに叩きのめされており、大舞台で2試合続けての大敗に、終盤の選手たちは明らかに意気消沈となっていた。
だが、この澱んだ雰囲気を変えるきっかけとなったのが、キャプテンを務める田代直希の喝だった。桶谷大ヘッドコーチは試合後会見で、「ハドルで田代が『シケた顔をしてバスケをするな。積み上げてきたものはこんなもんじゃないだろ!』と語ってくれました」と明かす。そして琉球は第2戦、第3戦と、試合の立ち上がりから本来の強度の高いディフェンスを取り戻し、連勝でファイナルへと駒を進めた。
「推しが笑っているほうが絶対に良いと思います」
この発言について田代は、「最近、記憶力が乏しくて、おそらく僕はそんな汚い言葉は言わないんですけど…」という前置きのあと、次のように思いを語った。
「キングスとしてプレーする上で、お金を払ってたくさんの人が見に来てくれています。戦術、システムなどもありますけど、そもそもお客さんが何を見に来てくれているのか。(ファンにとっては)推し(の選手)が笑っているほうが絶対に良いと思います。そういったところは、僕たちがコートに立ってプレーする上で一番大切です。『チームとしてどういう姿で戦うの?』という部分で、かなりいきがってチームに投げかけた言葉でした。1ミリでもみんなの心に響けば自分の仕事ができたかなと思います」
田代は謙遜するが、彼の言葉は1ミリではなく選手全員の心に大きく響いたはずだ。卓越したリーダーシップを誇る田代の存在の大きさを改めて証明した出来事だった。
そして田代は改めて、厳しい時も変わらぬ熱量で支えてくれた周囲への感謝を強調し、シーズン終盤の低迷から、巻き返せたのはファンのおかげだと締めくくった。
「ファンの皆さんと一体となって戦うことを、チームとしてより意識してから上昇してきたと思います。タフなシーズンで自分のこと、チームのことばかりを考えてしまっていて、ファンの皆さんと一緒に戦っていたことをどこか忘れていた。本当に温かい皆さんに甘えて、少し僕たちがそこを意識できなかった時期がありました。それができてから一体となって戦えるようになることで、調子が上がってきました」
『沖縄をもっと元気に』というスローガンを掲げ、地域発展に寄与し、チームを支えてくれる様々な人々との絆を何よりも大切にすることが琉球のアイデンティティだ。生え抜きで2016年からチームに在籍する田代は、自分たちの存在意義を深く理解する選手であり、だからこそ2019-20シーズンからキャプテンを任され続けている。
コートでの出番は限定的ではあるが、今シーズンも田代は誰もが認める琉球のまとめ役として優れたリーダーシップを発揮し、彼の数字に出ない価値を証明した。