Bリーグ初優勝の広島を支えた“信じる力”「琉球のリズムを崩すしか…」史上最少失点の堅守で下克上
◆■「誰かのためにという気持ちがここまで僕たちを強くした」
5月28日、Bリーグの年間王者を決める『日本生命 B.LEAGUE FINALS 2023-24』第3戦が横浜アリーナで行われ、ワイルドカードから勝ち上がった広島ドラゴンフライズが65-50で前年王者の琉球ゴールデンキングスに勝利。3年前までB2リーグにいたクラブが、怒涛の快進撃で下克上を成し遂げた。
ファイナル史上初の西地区対決となった今シリーズは、琉球が初戦を制したものの、広島も負けじと逆王手。1勝1敗で迎えた第3戦は、終始広島ペースで試合が進んだ。第1クォーターから若手ガードの中村拓人がスコアを伸ばして17-12とリードを奪うと、一度も逆転を許すことなく前半終了。後半は点差を詰められる時間帯もあったが、この試合チーム最多13得点を挙げたドウェイン・エバンスが要所で存在感を示し、食い下がる琉球を振り切った。
試合後の優勝会見に登場したのは、カイル・ミリングヘッドコーチと、チャンピオンシップMVPの山崎稜、ファイナル賞に輝いた中村拓人。広島に優勝をもたらす原動力となった3人は、「本当にタフなシーズンだった」と2023-24シーズンを振り返りつつ、何度も“信じること”の大切さを口にした。
チームの指揮をとるミリングHCは、激闘を終えた選手たちを労い、「成功するためには、私たちがやっていくことが正しいんだと信じなければ成功できないと思っています。本当にスタッフもプレーヤーも信じ続けてやりぬいてくれたのは感謝しかないです」と、チーム一丸で手にした栄冠に笑顔。
エースガードの寺嶋良がレギュラーシーズン終盤に負傷離脱してから、より一層存在感が増した中村も、「今シーズンは色々なことがあってタフなシーズンだったんですが、レギュラーシーズン終盤から互いを信じあって自己犠牲をしたり、誰かのためにという気持ちがここまで僕たちを強くしたと思います。誰一人として優勝することを信じていなかった人はいなかったです。選手、スタッフ、ブースターを含め、こういう形でやれたことを誇りに思いますし、一緒にやれてよかったです」と、充実ぶりを感じさせるように振り返った。
◆■ 新記録を作った堅守「正直、何をしているかわからない(笑)」
コート上で勝利を手繰り寄せる鍵となったのは“ディフェンス”だった。ファイナル第1戦に62-74で敗れてから、失点は右肩下がりで減少。優勝を決めた第3戦の50失点は、ファイナル最少失点の新記録となった。
ミリングHCは「正直、私自身もどんなディフェンスをしているかわからないときがある」と苦笑しつつ、「はっきり一言で言うのであれば、ゾーンのマッチアップディフェンス。チリ(河田チリジ)がいるときにスイッチディフェンスをしています。今日だけじゃなくシーズンを通してやってきたけど、やっているうちに精度が上がっていきました」と、勝因の一つとなった策を説明。続けて、「琉球さんは素晴らしいチームで、文句のつけようがない本当に能力の高い素晴らしいチーム。どうやって勝つか試行錯誤して考えた結果、相手のリズムを崩すしかないのかなと思った。琉球が素晴らしいチームだからこそ、こういったディフェンスが考え抜かれ、その精度が高くなったのかなと思う」と、好敵手の存在がチーム力向上の要因の一つになったとも語った。
実際にコート上で守る山崎は、「コーチが言ったように何をしているかわからないときもある(笑)。でも、それってみんながコート上で喋って、『それぞれがヘルプしあえ』ということがあるから成立していること。それができるようになったのも河田選手が入ってビッグラインナップを敷けるようになったから」と、昨年10月に帰化選手枠となったビッグマンの存在の大きさにも言及した。
今シーズンの広島は、3月最初の2連戦を終えた時点で21勝20敗だったが、順位争いが佳境に入る第25節以降は15勝4敗。一度も連敗を喫することなくCSに乗り込み、頂点まで駆け上がった。
「(スイッチディフェンスを)やり始めた頃はハマっていなかったと思いますけど、シーズン終盤にかけて『守れるな』という感覚があった。もちろんレギュラーラインナップのマンツーマンディフェンスでも自信を持っていますけど、ビッグラインナップの特殊なディフェンスも僕は自信を持ってやっています」と山崎。
布陣を活かす最善の策を練ったコーチングスタッフも、授けられた策を遂行し続けた選手も、描いた勝ち筋を信じぬき手にした初優勝だった。