ニック・ファジーカスがホーム“とどろき”と涙の別れ「このアリーナでの記憶は絶対に色褪せない」
試合終了残り3.5秒から最後のオフェンス。逆転を狙ったニック・ファジーカスの3ポイントシュートはリングに嫌われ、川崎ブレイブサンダースが2023-24シーズンのホーム最終戦を終えた。
4月28日に川崎市とどろきアリーナで行われたサンロッカーズ渋谷戦は、第4クォーター残り2分31秒にゲーム最大12点のビハインドを背負ったものの、ファジーカス、藤井祐眞、トーマス・ウィンブッシュが連続で3ポイントを成功。同点に追いつき、会場のムードは最高潮に達した。再びリードを許した直後にタイムアウト。佐藤賢次ヘッドコーチは冒頭に記した最後のオフェンスについて、試合後の記者会見で明かした。
「2点でも3点でも良かったです。祐眞があたっていたこともあったので、まずは祐眞にディフェンスのズレを作る、スクリーンをかけるのが1つ。そこに寄るとは思っていたので。J(ジョーダン・ヒース)のダイブでも良かったし、ニックのポップでも良かった。そこは最終的に(藤井)祐眞がニックを選択したという感じです」
ファジーカスは2012年の来日から川崎一筋でプレー。旧リーグ時代を含め数々のタイトルをチームにもたらしたほか、Bリーグ初年度のMVP受賞など輝かしい個人成績を残した。開幕前に今シーズン限りでの現役引退を発表。チームは“NICK THE LAST ”と銘打ち、シーズンを戦ってきた。
レギュラーシーズンにおける本拠地での最後のプレーは悔しいミスショット。試合後にコート上で行われたセレモニーでは、目に涙を浮かべながら「皆さん、12年間ありがとうございました」と日本語で挨拶し、次のように語った。
「最後のシュートは絶対に僕の記憶で忘れられないようなものになってしまったのですが、それでも12年間、皆さんに支えていただいて、このアリーナでプレーできたのは本当に僕にとっての誇りです。皆さんがいたからこそ、このアリーナでプレーできました。このアリーナでの記憶は絶対に色褪せないものです。本当にありがとうございました」
セレモニーでは会場に駆けつけた家族や両親などから花束を受け取った。渥美雄大通訳は涙をこらえながら、ファジーカスの言葉を伝えた。
「皆さんには感謝しかありません。母親や父親、家族が僕の元に駆けつけてくれて、この最後の瞬間を一緒に過ごしてくれたのは本当にありがたいことだと思っています。ここではファンの皆さんのためにプレーしてきましたし、子どもたちのお手本になるような選手であろうとしていました。また、自分の子どもに対し、父親としての姿を見せてきました。この12年間は僕にとってすごく特別なものです。皆さんが応援してくださったなか、このアリーナでプレーした数々の試合で感動を届けられたと思いますし、僕自身は皆さんからエネルギーをもらったと思っています。『さようなら』と言うのはすごく名残り惜しいですが、絶対に忘れない12年間ですし、心の中に残り続ける12年間です」
SR渋谷との直接対決は1勝1敗で終了。逆転での「日本生命 B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2023-24」進出向けて連勝を逃し、順位を上げることができなかった。レギュラーシーズンは残り2試合。指揮官は「まだ終わったわけではないですし、(チャンピオンシップ進出の)可能性はまだあるので」と前置きしつつ、「彼がホームで示し続けたのはかけがえのないものですし、今後も語り継がれていきます。一緒に戦えてうれしかったですし、誇りに思っています」と川崎の“キング”を称えた。
混戦を極める中地区2位争い、ワイルドカード争いは最終節までもつれ込む結果になった。「自分自身が一番いいパフォーマンスで、一番いい状態で臨みたい」。ファジーカス、そして川崎が“All-In”の精神で運命の横浜ビー・コルセアーズ戦に挑む。