首位三遠の前に立ちはだかった前年度王者の琉球ゴールデンキングス「CSを意識する中で2連勝できたことは自信に繋がる」
初の同一カード連敗を喫した三遠、勢いを増す琉球
リーグ首位を快走し今節から主力の佐々木隆成と細川一輝が復帰した三遠ネオフェニックスと、西地区1位に位置付けアレックス・カークの帰化登録が承認されてから好調を維持する琉球ゴールデンキングスが24節で激突した。
第1戦は互いの優れたオフェンス能力が顕著に現れ、出だしから得点の取り合いとなり、一歩も譲らない展開を演出。後半に入ると三遠が最大8点のリードを奪う展開となったが、息を吹き返した琉球が最後に33-13のビッグクォーターを作り出し、107-88で先勝した。
続く第2戦、三遠はインサイドで安定した働きを見せチームの中核を担っていたヤンテ・メイテンがコンディション不良でエントリー外となり、真価が問われる1戦となった。第1クォーターは互角で終えるも、第2クォーターに入るとデイビッド・ダジンスキー以外の得点が伸びない三遠に対し、琉球は3ポイントシュートを10本中5本成功させ、8人が得点を挙げるバランスアタックで圧倒し30-16と大量リードを奪った。後半に三遠が巻き返しを図り、ホームの後押しを受けて2点差まで肉薄する場面もあったが、岸本隆一が連続で長距離砲を射抜き、落ち着きを取り戻した琉球が98-89で連勝した。
この2試合を通じて両指揮官から出たコメントは、ただこの1節を振り返るのではなくチャンピオンシップ(CS)に向けての意気込みだった。琉球を指揮する桶谷大ヘッドコーチは「ショートタイムの目標として天皇杯があり、そこに向けて良いバスケットをしていくことが目標でした。CSを意識する中では強豪を相手にアウェーの地で2連勝できたことは自信に繋がる」と言い、この2試合が琉球にとって価値あるモノだったことがうかがえる。
今村佳太も「質の高いバスケットができ、2連勝できたことが自信に繋がる」と振り返ったように、特にカークの帰化はチームに好循環をもたらしていた。今まではジャック・クーリーだけでインサイドを回していたがクーリーとカークの2プラトンでシェアをすることができる。今村は言う。「この数試合で『3ビッグ』が機能し始め得点も伸び始めていることに手応えを感じています。アレックスが帰化で入ってきてくれたことにより、ジャックへの負担も減り恩恵を感じています」
しかし、今の状態に満足しているわけではなく、CSで必要な『2勝をモノにする』大切さにも触れるとともに「2戦目の戦い方を変えてきた時にアジャストする力」、「ジャックとアレックスの平面でのディフェンス能力をカバーしていくこと」を課題点として挙げた。
また、桶谷ヘッドコーチは荒川颯の成長にも触れ「ディフェンスの部分でチームに貢献できている。荒川と小野寺(祥太)をディフェンスマンとして持っていることが今後の自分たちにとってプラスになる」と言い、選手の成長を感じ取れているうれしさが見受けられた。
大野HC「この2連敗が代償になれば良い」
一方、三遠の大野篤史ヘッドコーチは「初戦に比べ、ホームをしっかりと守るという姿勢、自分たちのディフェンスのスタンダードにトライしているというのは評価できる」と第2戦を総括。しかし、「この2連敗が代償になれば良い」と話したように、初の同一カード連敗を喫した事実を重く受け止めた。「バイウィーク期間中に感じたリラックスをしている雰囲気、今までの結果やアジャストメントできるであろうというある種の満足感。それに対して危機感を持ってアプローチをしていましたが、試合をして結果(敗戦)として出ないと気づかないことです」
今シーズン初めて20分以上プレーした太田敦也は「この2連敗でB1を戦い抜くことの難しさをあらためて痛感しました。CSを勝ち抜く上での自覚が足りなく認識が甘かったですが、それでも手遅れになる前にこのタイミングで気付かされたことは救いだった」と戒めとも取れるコメントを残した。
カークの帰化により『チャレンジ』をしていくことがテーマのように見受けられた琉球に対し、三遠は『原点に帰る』という対照的なスタンスがとても印象的だった。今回、メイテンがコンディション不良で出場できない状況でも「誰が出ても自分たちのしてきた事をプレーする。どんな事を背負ってプレーするのか、ホームコートで戦うことがどれだけ重要なのか。原点に帰り、共通認識を持ってプレーすることが大事」と大野ヘッドコーチは言う。復帰した佐々木隆成も「自分たちの強みは強固なディフェンスから速いバスケットを展開することで、そのベースを上げていくことが必要」と立ち返らなくてはいけない事を強調した。
そして、「言い訳を探すのか、劣勢の状況で全員が勝てる道筋を見つけようとするのか、その違いだけ」と大野ヘッドコーチは語気を強めたが、一方で「観客の皆様の声援は、期待している量が高まっている現れが声の量だと思います。それが当たり前だと思うようにならないこと、だけど望まれる立場になったことには喜びを感じながら、それ以上のものを望まれる集団になっていかなくてはいけない」と、急成長を続けてきたチームをサポートしてくれているブースターへの気配りも垣間見えた。
三遠は『経験値の差』を残りの試合でどのように培っていくのか。琉球はこの数試合で圧倒的なチーム力を見せつけてきているが、どれだけ選手をマネジメントし、バイウィーク前に露呈していた不安定さを解消できるかが鍵になってくるに違いない。
また、この2チームに共通する見どころといえば、やはり事前の準備能力だろう。そこにはコーチ陣、スカウティングチームの絶え間ない努力が影にはあるが、琉球は今までのアベレージを凌駕するファーストブレイクで連日二桁得点を生み出し、桶谷ヘッドコーチは「三遠さんのウィークポイントであるトランジッションディフェンスを突いた結果」と語った。一方の三遠も、桶谷ヘッドコーチ自身も話していたカーク、クーリーのスピードに対するディフェンス面の脆さを序盤から突いていくなど、互いに研究した結果をプレーで示してくれた。CS出場が有力視されている2チームだけに、こうした戦術面に目を向けることもまた一興だ。