【インタビュー】来日8年目に帰化実現…ジョシュ・ハレルソンが語る日本代表への想い
男子日本代表は「FIBAアジアカップ2025予選」Window1に向けて新たな帰化選手を招集した。佐賀バルーナーズのジョシュ・ハレルソンだ。208センチ125キロのビッグマンはリーグ初年度の2016年からBリーグでプレーし続け、晴れて2023年9月に日本国籍取得を発表した。日本代表合宿開始の3日前、ハレルソンのインタビューが実現。帰化に至るまでの話や日本代表への想いを語ってもらった。
インタビュー=酒井伸
写真=B.LEAGUE
◆■日本代表として初の活動へ「すごくワクワク」
――「FIBAアジアカップ2025予選」Window1に向けた日本代表直前合宿参加メンバーに初選出されました。まずは感想から聞かせてください。
ハレルソン 来日して4年目か5年目あたりから、日本で長きにわたってプレーし、そして帰化して日本代表に入ることが1つの目標でした。どの国においても、大舞台のオリンピックに出場すること以上に大きな夢はありませんよね。合宿参加メンバーに選ばれたのはとても光栄なことですし、すごくワクワクしています。
――日本国籍取得にあたって、家族や友人の反応はいかがでしたか?
ハレルソン 家族や友だちは賛成してくれました。彼らは自分が目標や将来のために帰化しようとしていることを十分に理解してくれて、応援してくれました。応援してくれなかったら友だちをやめていたと思います(笑)。皆さんのサポートは本当に大きかったです。
――日本国籍取得の際、一番大変だったことは?
ハレルソン 帰化のプロセスは最初から大変でしたが、集中力を保つことが一番大変でした。何度も同じことを繰り返して、日本語を勉強していたような感じで……。その壁をなかなか乗り越えることができませんでした。壁を乗り越えたら少しずつ覚えられるようになったのですが、その次に“漢字”が出てきて。漢字はまた別問題で、本当に覚えるのが大変でした。
――アイラ・ブラウン(大阪エヴェッサ)選手やニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)選手はBリーグで長く活躍する帰化選手です。彼らのような先輩に相談することはありましたか?
ハレルソン よく相談したのはジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)選手ですね。彼も同じ時期(※2023年2月に日本国籍取得発表)に帰化しようとしていたので、どういった勉強をしてテストに合格したのかとか、自分はどうすればいいのかなど、様々なことを質問しました。仲がいい彼はいろいろと手伝ってくれて、僕のことを助けてくれました。彼のおかげで帰化できたと思っています。
――2016年の来日からBリーグ一筋でプレーしています。日本でここまで長くプレーすることを想像していましたか?
ハレルソン 全く想像していませんでしたし、35歳になるまでプレーするとは思いませんでした。自分は本当に運がいいです。そこまで大きなケガをしたことがなく、自分のプレースタイルもBリーグに合っていました。ここまで長くプレーできて本当に幸せです。
――コートを離れても日本のことを気に入っていると思います。
ハレルソン 日本人みんなが親切で、日本の食事はすべて美味しいです。他国は日本の文化を見て、学んだほうがいいと思います。日本は本当にきれいで安全です。家の中では靴を履かないですし、公衆トイレに行ってもゴミが落ちていません。今まで行った国と比べて、日本は本当に素晴らしい国だと思います。
――好きな日本食は?
ハレルソン お寿司、焼肉、しゃぶしゃぶ、ラーメン……。すべて大好きです。
◆■憧れのオリンピック出場へ意欲
――日本代表の話も聞きたいと思います。「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」での戦いぶりはご覧になりましたか?
ハレルソン 何試合か見ましたよ。日本代表の戦いにはとても感心しました。大事な試合に勝ち、(アジア最上位として)パリオリンピック出場を決めてとてもすごいなと。日本代表はケミストリーが良く、大事な場面でいいプレーを見せていたと思います。オフェンスもディフェンスもすごく良かったです。大半の日本代表メンバーとは対戦経験があり、素晴らしい選手たちだとわかっています。そういった選手が集結すると、本当にタフなチームになると感じました。
――一緒にプレーしたい選手を教えてください。
ハレルソン 比江島慎(宇都宮ブレックス)選手、富樫勇樹(千葉ジェッツ)選手と一緒にプレーするのをとても楽しみにしています。2人とは長年にわたって何度も対戦していて、本当に素晴らしい選手だとわかっています。富樫選手は素晴らしいポイントカードで、比江島選手はパスもシュートもディフェンスもうまい選手。もちろん全員とプレーすることが楽しみですが、特にこの2人ですね。
――トム・ホーバスヘッドコーチとコミュニケーションを取る機会はありましたか?
ハレルソン まだ話していませんが、彼に会えるのも楽しみにしています。自分のことを選んでくれて、このように代表に入れたのはとても光栄なことです。目標や何が必要かという話をしたいと思っています。
――日本代表ではどのような部分で貢献できると考えていますか?
ハレルソン プロになってもう13年なので、自分の経験を活かしてチームに貢献したいです。リバウンド、ディフェンス、3ポイントシュートが自分の強みだと思っています。日本に来てから8年が経ちますが、その3つのことを主にやってきました。自分の持ち味に自信を持って、日本代表でも貢献したいです。
――日本代表チームはハレルソン選手の加入で、パリオリンピックに向けたメンバー争いがより激しくなってきます。ところで、オリンピックと言えば、アメリカ代表のドリームチームが思い浮かぶと思いますが。
ハレルソン 自分はドリームチームより、リディームチーム(※2004年のアテネオリンピックで金メダルを逃したことでつけられた名称)が印象的ですね。2008年の北京オリンピックで金メダルを取ったチームを見て、当時10代の自分は刺激を受けました。そこでいつかオリンピックに出場したいと思うようになりましたから。
――母国アメリカと対戦したい気持ちもあると思います。
ハレルソン もちろん。アメリカ代表は素晴らしい選手ばかりです。自分は残念ながらアメリカ代表に選ばれたことがないので、もし日本代表としてアメリカと対戦できたらとても光栄ですし、とてもうれしいです。
――マイアミ・ヒート時代にチームメートだったレブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)もパリオリンピック出場に前向きなようですね。
ハレルソン 彼と対戦できる機会があれば、すごくワクワクすると思います。ただ、試合が始まれば、そういったことを忘れていつもどおりプレーしますよ。
――佐賀バルーナーズでの今シーズンについても聞かせてください。ここまでの戦いぶりをどのように感じていますか?
ハレルソン ここ3週間ほどはコントロールができない部分もあって、少し苦しい状態でしたけど、チーム全員が自信を持っていると思います。これまでB1昇格1年目のチームがチャンピオンシップに出場したことはありません。チームにはいい選手、いいスタッフがそろっていて、バルーナーズファンも素晴らしいです。皆さんのためにもチャンピオンシップに出場できるように頑張ります。
――強豪ぞろいの西地区で戦っています。
ハレルソン どのチームも我々を見て、「楽に勝てる」と思わないはずです。我々は自分たちのスタイルに自信を持ってプレーすれば、トップレベルのチームにも勝てると思っています。これまでもいい勝負をして、最後までわからない試合をしてきましたから。トップレベルのチームに勝てるようになれば、チャンピオンシップ出場の可能性が高まると思っています。
――最後に日本代表合宿への意気込み、ファンへのメッセージをお願いします。
ハレルソン 合宿では自分がどのような人間なのか、どのような選手なのかを見せて、オフェンスでもディフェンスでもホーバスHCが必要とすることをやりたいです。私はファンの皆さん全員を愛しています。皆さんが自分のプレースタイルや自分のことを気に入って応援してくれていることに対して、本当に感謝しています。皆さんにはプレーで恩返ししたいです。日本代表のファン、バルーナーズのファン皆さんのサポートにお礼を申し上げたいです。