宇都宮との激闘を制した琉球ゴールデンキングス、岸本隆一が強調する姿勢「毎日ベストを尽くすことで良い積み重ねができる」
「今日負けたら、それこそ(精神的に)食らっちゃうなというのはありました」
琉球ゴールデンキングスは1月20日、ホームで宇都宮ブレックスと対戦。最後まで勝敗が分からない激闘となったが、ゴール下の争いでわずかに上回った琉球が68-66で競り勝った。
同点で第2クォーターを迎えると、宇都宮はグラント・ジェレットが内、外とバランス良く得点を挙げてチームを牽引。逆に琉球は、ゴール下でのシュートを決めきれないことでオフェンスがジリ貧となり、28-35で試合を折り返す。それでも後半に入ると、琉球はガード陣が前半に欠けていた積極的なドライブを仕掛けることでボールムーブが良くなり、48-48と追いついた。
第4クォーターに入ると、ここから宇都宮はDJ・ニュービル、比江島慎の2大エースの個人技で得点を重ねていくことで、残り6分で7点をリード。しかし、琉球はこの踏ん張り所でジャック・クーリー、アレン・ダーラムのインサイド陣がフィジカルの優位を生かした得点を重ねて追いつく。息詰まる攻防が続く中、琉球は残り30秒にダーラムのペイントアタックで2点を勝ち越す。そして残り18秒、宇都宮は竹内公輔がコーナースリーをミスするが、ニュービルがオフェンスリバウンドを取り、残り4秒に3ポイントシュートを放った
試合後、桶谷大ヘッドコーチが「最後、ニュービル選手に打たれた時、時間を見てあと何秒残ってどのプレーができるかなと考えていました。彼は決めてきますからね」と振り返った一撃が、惜しくも外れたことで琉球が辛くも勝利した。
琉球の中心選手である岸本隆一は、3ポイントシュート6本中4本成功を含む15得点をマーク。第4クォーター残り3分半から6得点と持ち前の勝負強さを発揮した。
「出だしで宇都宮に勢いをつけられたところはありましたけど、ディフェンスで崩れず最後に紙一重のところで、ウチが試合に勝てたと思います」。こう試合を総括した岸本だが、琉球は2024年に入ってから元旦の仙台89ERS、そして17日に行われた名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦と、接戦を続けて落としていた。だからこそ、難敵の宇都宮に競り勝てたこの1勝の意味の大きさを語る。
「今日負けたら、それこそ(精神的に)食らっちゃうなというのはありました。最終的にクロースゲームとなり、この試合をとれるのか、落とすのかは大きな違いがあると思いました」
桶谷ヘッドコーチも、「接戦のゲームに勝てたことで、自信を取り戻せます。ディフェンスが良い宇都宮さんに守り勝てたところは内容的にもプラスです」と続けた。
「明日は修正して、もう少し自分がハンドラーの部分で仕事をしないといけない」
仙台、名古屋D戦の負けも含め、この試合の前まで琉球は過去8試合で3勝5敗と大きく失速していた。東アジアスーパーリーグ(EASL)による平日の海外遠征に加え、週末はリーグ戦による過密日程のダメージがあり、故障者も増え心身ともにストレスを感じていた。それゆえに本来のプレーができないもどかしさがチームに蔓延していた。だからこそ桶谷ヘッドコーチは、この試合に向けてミーティングで選手たちに「一回、自分たちの置かれている立場を受け入れましょう」と伝えたという。
「自分たちはもっとできる。もっと勝てると思っていた。ただ、スケジュールはタフでこの前はEASLで台湾に行きました。オールスターで今村(佳太)、岸本は3日間イベントに出続けて、昨日練習しただけで今日の試合です。(同じくEASLに出ている)千葉Jさん以外のチームは、正直、僕らよりも練習ができている。自分たちにはチーム作りの時間が必要で、積み上げてきていくことにフォーカスしないといけない。この現状を受け入れてくれたと思います」
そして岸本も「言葉にしていなくても、昨シーズンに優勝したことは少なからず影響していたと思っています。いつもだったら勝てそうな試合に勝てなかったり、足踏みをしている感覚がありました」と、モヤモヤした思いがあったと明かす。
だが、指揮官の言葉を受け入れ、今は自分たちが何をやるべきなのか、あらためて足元をしっかり見つめることがチームとしてできつつあると岸本は語る。「自分たちがまず毎日ベストを尽くすこと。それができて、初めて良い積み重ねができることを再認識できました。もう一度、危機感を持って積み重ねていく。そこに意識を持っていきたいです」
目の前の試合に勝つことも大事だが、岸本はもっと先のこともしっかり見据えている。だからこそ、今日の自身のプレーにも満足していない。「シュートのところはチームの助けになれたと思いますが、僕のピック&ロールから合わせのプレーでダーラムが点を取れたような場面を増やしていかないといけないです。今村と松脇(圭志)はディフェンスで比江島選手、ニュービル選手を守って負担が大きいです。明日は修正して、もう少し自分がハンドラーの部分で仕事をしないといけないと感じています」。
宇都宮といえば、積極的にハードショウやブリッツを仕掛けるなど、様々な手段でハンドラーにプレッシャーをかけることを得意としている。それ故に岸本は「自分の成長を考えても、こういう相手だからこそチャレンジしていきたいと思います」と語った。
明日の試合では、リベンジを期す宇都宮が攻守でよりアグレッシブに仕掛けてくるのは容易に想像できる。そこで琉球が相手の圧力に負けず、今日のように我慢強く戦い続けられるのか。シーズン後半戦に向けて上昇気流に乗るためにも、勝つこと以上に内容が問われる一戦となりそうだ。