菊地祥平(越谷アルファーズ)にインタビュー——中盤戦・後半戦に向け今一度気を引き締めるベテランの思い
全日程の3分の1を終えたB2リーグの2023-24シーズンで、越谷アルファーズの調子が今一つ上がってきていない状況にやや意外な感覚を覚えているファンも多いのではないだろうか。特に12月に入ってからの直近3節は2勝4敗と厳しい流れ。師走のスタートとなった第10節(アルティーリ千葉とのホームシリーズ)のさなか、ベテランの菊地祥平にチームの現状と手応えを聞いた。
菊地は昨シーズンからチームに加わったスモールフォワードで、アルバルク東京時代にB1連覇を経験している。今シーズンの越谷では、日本人プレーヤーの中で唯一23試合すべてにスターターとして出場。平均5.1得点に3.1リバウンド、±がチーム2位の+5.5と堅実な数字を残している。安齋竜三HCの意図をコートで体現してゲームを作る、非常に重要な役割を担う存在だ。
B2東地区上位決戦の手応え
——まずは今日の試合(12月2日のGAME1、65-68で黒星)について総括をお願いします。
良し悪しがすごいはっきり出た試合で、前半の相手のビッグラインナップに対して、もう少し早く対応できていたら勝敗は変わっていたのかなという反省があります。選手個々もスタッフも反省や改善点があると思うので、明日はそれをしっかり体現してやりたいと思います。
——身長226cmのセンター、リュウ チュアンシンを含むアルティーリ千葉のスーパービッグラインナップに対するディフェンスは、中盤以降かなり効いていたように思いました。
バスケットはあくまで5人でやるスポーツなので、優先順位はどこなのか。確率論やチームの共通認識を含めて、明日彼のミドルが入った時にどうするかというのも踏まえて臨みます。予想していなかったわけではないですけど、思ったより(リュウを)長い時間使ってきたので、それに対してどうこちらがスカウティングするか。1-2本入れられたらきつくなるというよりは、そこでどういうディフェンスをするか、見ていただければと思います。
<筆者付記>
菊地の考察は、今後に向け非常に興味深いポイントだ。この試合で、リュウが最初にコートに入った第1Q残り4分12秒からいったん退いた第2Q残り8分32秒までに、越谷はA千葉に19-3のランを許した。この展開が勝負に大きく影響したのは間違いないが、A千葉のスーパービッグラインナップが圧倒的な存在感を示したのは、2試合を通じてこの時間帯だけだったのも事実だ。
GAME1の中盤以降でリュウが出場した時間帯では、越谷のゾーンディフェンスが奏功した。フィジカルな越谷のフロントラインに対し、高い位置でボールを持ったリュウがミドルレンジより長い距離のショットを狙い、それが入らず徐々に威力を失っていくような流れになっていた。
初見のスーパービッグラインナップに対する越谷の準備は、一定以上の効果を挙げたと言っていいだろう。両日とも2桁点差を引き離される場面があり、GAME2を80-81で落としたことを見ても、この部分以外で解決すべき問題が提示された対戦でもあった。しかし、少なくとも越谷は勝つためのフォーミュラを持って臨み、修正し、それは機能していたように見えた。A千葉にとって、この2試合は決して簡単な内容ではなかったはずだ。
チーム内の共通認識は一致し始めている
——アルファーズではベテランの果たす役割が大きいように感じますが、今日を含め、ここまでのご自分のプレーぶりにはどんな評価をしていますか? 例えば今日は±がチームトップの+14でした。
数字にはこだわっていないつもりです。決して(今の数字が)良いわけではないと思うし、ある意味では、やっぱりバスケットをする以上は数字にこだわるっていうのも大事だとは思うんですけど、自分の立場上そこばっかりにこだわってやっていたらチームに対する貢献は少なくなってくるので。そういった意味では、数字じゃないところでいかに竜三さんのバスケットを体現するかっていうところに、もうちょっと徹せられたらなと思っています。
今はそれをチームに浸透しきれていないというか…。今日で言うと出だしは良くて、悪くなった時に歯止めがきかない。そういった時に何をしなければいけないのか、いかに悪い状態を1~2ポゼッション早く止めるか、というところが浸透していないんです。
どうしても10点、15点とビハインドがついてしまう。それを止めるのが少しでも早かったら、今日はもっと良いバスケができたと思います。それがまだ浸透できていないっていうのは僕が責任を果たせていないから。数字どうこうというよりは結果として負けて、自分がチームにとってどのように足りなかったかということを優先的に考えてしまいます。チームとして勝たなければいけない試合を落としたというのは、僕の力不足が出たのかなと思います。
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——タフなシーズンで安齋HCも会見のたびに厳しいお話が多いですが、開幕からチーム力が上がっている手応えはありますか?
昨シーズンから、顔ぶれも外国籍プレーヤーも変わって、最初は手探り状態でした。コートに出た時に、今の強みはどこなのかという共通認識がそんなに高くなくて、3人はわかっているけど2人は違うみたいな。出ている5人の共通認識が一致していないとバラバラ感が出てしまったり。LJ(ピーク)というキープレーヤーはいるんですが、個で打開するっていうのはウチのバスケットではありません。
そのシチュエーションでコート上に出ているメンバーが、誰に聞いても今はここだよねっていうのが一致し始めているんですが、そこをまだ徹底できていません。それは練習でも試合でもそうです。今日も、それを徹底できたら勝ちきれる試合だったと思っています。そこはベテランの僕だったり喜多川(修平)だったりが、やっぱりもっと声に出して伝えていく必要がこれからもっとあるのかなと感じています。
——第4Qに勝ち切れない試合が何度かありますが、終盤にチャンスを逃してしまう部分にそうしたところが出てしまっているのでしょうか?
本当に強いチームはそんな場面でもう1本止めて、決めてというチームです。強いチーム同士の勝負は、最後のリバウンドを一つ獲れるか獲れないか、ディフェンスで止められるか止められないか。残り5分、残り2分を切ったところを強くプレーできたら勝てる試合はもっとあります。竜三さんも修平もそうですが、優勝を経験させてもらっているメンバーとして、そこをもっとシビアに伝えていかなければ。あそこで一つどうにかしていたらこちらに流れが来ていた…というところを決め切るチームは強い。学ばなければいけません。
——最後に、今シーズンのB2についてですが、とてもプレーのレベルが高くなっていると感じています。今後の展開など、どのように見通していますか?
日本代表があれだけ結果を出してくれて、バスケットが盛り上がって観客が圧倒的に増え、チームが使えるお金が増えてという流れですね。昔だったらワークアウト専属コーチなど考えられなかったし、外国人のレベルが上がり、それを経験して日本人選手のレベルも上がっています。
そんな中で、B2で勝てるチームではなくてB1に上がって勝てるチームを目指さなければ高が知れているということを、口酸っぱく言われています。B2で優勝しても、翌シーズン当たり前のごとくB2に落ちるようなバスケを目指したら…。今はその状態。もっと僕たちが本当にB1で勝てるチームを目指したら、B2の後半戦にかけては圧勝できるんじゃないかと考えています。竜三さんたちスタッフはそこを僕たちに落とし込んでくれているので、あとはやる側の意識の問題。もっと意識を高めて、B1に上がるだけではなくB1で通用するところに気持ちを持っていかないと。
結果が欲しいアルファーズ
念願のB1昇格を是が非でも実現したい越谷の今シーズンは、安齋HCがアドバイザーから立場を変えてチームを率い、喜多川、LJ、小寺ハミルトンゲイリーらタレントの補強を経て現在に至っている。12月16日・17日の第12節までを終えて14勝9敗(勝率.609)で東地区3位という現状は、相対的に悪くないとはいえ、このチームにとってはまずまずと言ってはならない成績だろう。
しかし、菊地の話を聞いた第10節のA千葉戦連敗は2試合とも3点差以内の大激戦で、熊本とのGAME1は両チームが100点を超えるオーバータイムの死闘を落とすという紙一重の黒星だった。たらればを言っても現実は変わらないが、もしもこれらの3試合で、わずか1つずつ、うまくいかなかったポゼッションを乗り切ることができていたら、シーズンの見え方は現状とは異なっていたかもしれない。
どこにも対抗できる力を示しながら勝ち切れないじれったさを、この先アルファーズははたして断ち切ることができるか。チームとしてもブースターとしても、ここは結果にこだわりたいところに違いない。
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