今季初の出場時間ゼロに奮起…苦境で輝いた“ゾーンバスター”「苦しい流れを変えられた」
◆■ 「僕の仕事はシュート」積極姿勢貫いた
得点が入らない苦しい時間帯、「ボールが来たら積極的に打つ」と気合を入れていた上澤俊喜が3ポイントシュートで嫌な流れを断ち切った。
広島ドラゴンフライズは6日、B1リーグ第10節で本拠地の広島サンプラザホールに京都ハンナリーズを迎え、83-70で勝利し2連勝を飾った。ベンチスタートだった上澤は約19分プレーし、3ポイントシュート3本を含む11得点を記録した。
28-23の5点リードで迎えた第2クォーター。広島は相手の守備に苦しんで立ち上がりからピタリと得点が止まり、その間に28-32と逆転を許していた。チームが放ったシュートはことごとく落ち、相手の得点だけが積み重なる苦しい展開だった。それでも上澤は、「僕の仕事はシュート。嫌な流れは気にせず、どんどん打っていこうと思っていた」と積極果敢な姿勢を貫いた。
第2クォーターに入って得点がないまま3分半が経過したとき、広島は攻撃時に船生誠也、ドウェイン・エバンス、上澤がボールを動かして相手のゾーンディフェンスを揺さぶる。最後は一瞬フリーになった上澤がエバンスからパスを受けて素早くシュート。第2クォーター最初の得点となる3ポイントが決まり、苦しい流れを断ち切った。
「相手が収縮させるようなゾーンをしていたので、ボールを回しながら、空いた隙があればどんどん打っていこうと思っていた。味方のクリエイトやパスがあったからこそ自分のタイミングでシュートを打てた」
その約4分後にも上澤が交代で入った直後に思い切り良く3ポイントシュートを決めて、広島は40-38と再逆転。チームの勢いを加速させて勝利に貢献した背番号10は、「持ち味の3ポイントで苦しい流れを変えられたのは良かった」と胸を張った。
◆■ 今季初のプレータイムなし「貢献しないと」
強い覚悟を持ってこの試合に入っていた。3日に行われた前節アルバルク東京戦の第2戦でチームが勝利した中、上澤は今シーズン初めて出番がなく危機感を募らせていた。
「(東京戦の)2戦目は出ていないし、1戦目も自分の思うようなプレーができなかった。崖っぷちってわけではないけど、今日はなんとしてもチームに貢献できるプレーをしないといけないという思いで臨んだ。A東京戦は特にディフェンスの部分でやられたので、(京都戦は)ディフェンスにフォーカスして入りました」
試合前にはカイル・ミリングHCが上澤の背中を押していた。「おそらく京都はゾーンを使ってくるから、トシ(上澤)の活躍が必要になってくるとゲーム前に話をしていた」と試合後の会見で明かしている。
その期待に応えた上澤は、「相手はゾーンの時間帯が多かったので、そこで得意な3ポイントを決められたのは良かった」と喜び、ミリングHCも「しっかりシュートを打ち切って、得点を取るという彼の役割をこなしてくれた。本当に“ゾーンバスター”という活躍をしてくれた」と称賛の言葉を口にした。
この試合では、15得点を決めた寺嶋良や19得点8リバウンドを記録したエバンスといったスタートメンバーだけではなく、上澤のようにベンチスタートだった選手たちの活躍も光った。
ミリングHCは、「ベンチメンバーがしっかり自分の役割を担ってくれている。今日も(アイザイア・)マーフィー、(中村)拓人、トシ(上澤俊喜)、そういったベンチメンバーがいい活躍をして勝利を収められた」と称えつつ、今後の連戦に向けて「勝つために全員が必要なので、全員で頑張っていきたい」とチーム一丸での戦いに意気込んだ。
上澤は今シーズンこれまでベンチスタートが続いているが、「バスケットはコートに立てる5人とベンチを含む12人全員の力が必要。僕は主にベンチからのスタートだけど、いかに流れを変えられるかというところで貢献したい」と力を込める。どんな状況でもコートに立てば積極果敢に戦う。そんな上澤の意思がまたチームを勢いづける。
取材・文=湊昂大