優勝へは「今月が山場」…“ナベタイム”で開幕連勝に貢献した渡邉裕規「このチャンスを絶対逃さない」
当たり出したら止まらない、通称“ナベタイム”がいきなりブレックスファンの心をつかんだ。
10月8日に行われたB1開幕節のGAME2、宇都宮ブレックスは群馬クレインサンダーズに77-63で勝利。新加入のD.J・ニュービルが両チーム最多となる20得点の活躍を見せたが、最もスポットライトを浴びたのは渡邉裕規だった。
この日の主役は第1クォーター中盤にコートイン。同クォーター残り3分25秒にコーナーの位置でニュービルからのパスを受けると、迷わず3ポイントシュートを放ち、決めた。
「1本目からシュートタッチがいいなっていう感覚はありましたね」
第1クォーター終盤には2本連続で3ポイントを沈めた。トップの位置から決めた3本目はやや体勢を崩していたが、それでも決めきった。
試合序盤の3連続3ポイントで流れを引き寄せたポイントガードは、約12分間のプレータイムで6本中5本の3ポイントをマーク。数的優位となった速攻の場面でもパスや2点ではなく、自らの長距離砲を選択して得点につなげ、最後まで“らしさ”を貫いた。
「あそこはレイアップにもいけるような状況だったんですけど、 今シーズンはああいうシュートを打っていくと決めているので、オープンになったらなるべく2ポイントよりも3ポイントを打てるようにしていきたいなと」
極端に言えば、渡邉の仕事は3ポイントを決めることではなく、打つことだ。
もちろん決めるに越したことはない。だが、宇都宮にとっては彼が3ポイントを打つことでリズムが生まれ、外れたとしても仲間がリバウンドに飛び込んで新たなチャンスを作ってくれる。
「練習でめちゃくちゃ入っていても、試合で入らない時もあります。そういう試合を何百試合も経験していますし、シュートというのは永遠に入り続けるわけではない」(渡邉)と言うように、すべてのシュートを決めるのは、ほぼ不可能に近い。そういった経験を踏まえたうえで、35歳のベテランは「試合になったら打つだけですし、打たないと入らない」と自らの役目を口にする。
佐々宜央ヘッドコーチは「ナベ自身、先週の練習では全然調子が良くなかった」と明かし、こう続けた。
「僕がナベにずっと言っているのは『(入るか入らないは)関係ないから、俺にあのシュート打てたよなって言わせるな。絶対に打ってこい』ってことです。これからも打ちきってほしいですし、シューターなのでどうしても波はありますけど、1本も打たないという試合がないように続いてほしいなと思います」
宇都宮は、2020-21シーズン以来となる開幕連勝スタートを切った。王者として挑んだ昨シーズンはチャンピオンシップ出場を逃し、渡邉は「本当に悔しかったですし、すごく切なくて、もう少しやりたかったなという気持ちになりました」と振り返る。だからこそ、今シーズンにかける意気込みは一層強く、もう一度頂点に立てるという感触もあると渡邉は言う。
「その経験を経ての新シーズンなのでモチベーションはもちろん高いです。そこ(優勝)に届くようなチームが出来上がりつつあると思うので、 このチャンスを絶対逃さないようにやっていきたい」
次節はアウェーでのアルバルク東京戦。昨シーズンは4連敗を喫した相手であり、3節以降も広島ドラゴンフライズ、茨城ロボッツ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズと昨シーズン苦戦を強いられた難敵との対戦が続く。
「昨シーズン叩きのめされたようなチームとの対戦が続くので、そこでちゃんと借りを返して今月どれくらいの勝率を残せるか。そこが今シーズンのスタートダッシュと、今後の自分たち動きに関わってくるので、本当に今月が勝負だなと思っています」
「今月が本当に山場」。3度目の頂点へ向けそう言いきった背番号13は、これからもチームに勇気を与える放物線を描き続ける。
取材・文=小沼克年