開幕節連勝でいきなりインパクトを残した長崎…『ヴェルカスタイル』を極めて上位を目指す
◆前田HCは手応えを感じつつ、反省を忘れず
チーム創設からストレートでB1昇格を果たした長崎ヴェルカの新たな歴史がスタートした。Bリーグ2023-24シーズンの開幕戦、ホームの長崎県立総合体育館にリーグ制覇をはじめ、いくつものタイトルを持つ千葉ジェッツを迎え、激闘を繰り広げた。
開幕前に電撃獲得し、出場が期待された馬場雄大はコンディション調整のため、コートには立つことはなかった。それでもチームには帯同して、満員となったアリーナに登場。ファン・ブースターからの歓声に笑顔で応えながら、試合中はベンチからチームメートを鼓舞した。
2戦連続でホーム史上最高入場者数を更新し、10月9日のGAME2には4035名の観衆が駆けつけたアリーナは熱気に満ち、汗が滴り落ちるほど。長崎は前日のB1での初勝利の勢いそのままに、この日もゲーム序盤から主導権を握っていく。
激しいチームディフェンスで相手のリズムを崩してボールを奪い、スピード感あふれるオフェンスで一気に相手ゴールに襲い掛かる。さらにはチーム全員が常に連動し続け、ペイントアタックやオープンでのアウトサイドシュートと多彩なオフェンスパターンで得点を重ねた。チーム全員が「ヴェルカスタイル」と解説する、観てみる者をワクワクさせるようなこのバスケットスタイルで千葉Jからリードを奪う。
しかし、千葉Jも負けていない。身体能力の高い外国籍選手たちがペイントエリアで躍動、さらに鋭いリングアタックからスコアで奪う。さらには「本当にいい意味で普通じゃない、すごいです」と千葉Jのジョン・パトリックヘッドコーチをして言わしめた、富樫勇樹が圧巻のスコアリング能力で応戦していった。ただ、終盤までクロスゲームの展開が続くものの、要所で3ポイントシュートが決まった長崎が逃げ切る形で勝利を収めた。
記念すべきB1での初カードを見事連勝で飾り、さらにはリーグ屈指の強豪である千葉Jからの勝利という衝撃をBリーグ全体に与えた結果となった長崎。今シーズンも非常にレベルの高い西地区の中での、今後の戦いを期待させる開幕戦となったに違いない。
長崎の前田健滋朗HCは、「何とか勝ち切れたことは非常に大きいし、(レギュラー)シーズン60試合が終わったときにこの勝利の意味が小さくないと感じています」と、勝利したことへの安堵と自分たちのスタイルへの一定の評価を語った。しかし、より成長してチーム戦術を極めていくことが必要だとも口にする。
「課題はリバウンド、ターンオーバー、個々のフロアでのポジショニング、ピック&ロールに対するディフェンス…など1つではありません。今後、ミーティングと練習をして改善していきます。ヴェルカスタイルをしっかり表現し続けることは大枠ではできつつありますが、より突き詰めていかないといけない。それがファン・ブースターが求めていることでもありますし、B1で勝っていく方法だと思います。この連勝は大きいですが、もう視線は次の試合に向いています」
◆外国籍主力2選手がファン・ブースターに感謝
3シーズンNBAでプレーし、オーストラリアリーグのNBLからやってきたジャレル・ブラントリーは得点はもちろん、味方を活かすアシストなどオールラウンドに活躍を見せた。「自分の名前が入ったタオルや顔を型取ったボードを掲げてくれたりして、素晴らしい雰囲気の中で試合を楽しむことができた」と笑顔で語った後に、チームのスタイルにフィットしていると自負するコメントを残した。
「チームが標榜しているスタイルの中で、『ハード』『アグレッシブ』『スピーディ』という部分は自分の特徴なのでフィットできていると思います。千葉Jのようなカルチャーがあるチームに連勝できたことはすごく大きな意味を持ちますが、シーズンは始まったばかり。最後にベストなバスケットを表現できるように成長し続けたいと思います」
そして、チーム創設以来、エースを務めるマット・ボンズはチームとして戦えたことに満足感を示した。
「相手も高いパフォーマンスを見せていて、その中でも自分たちはチーム一丸となってプレーでき、良い方向に進んで勝ち切れました。自分自身も持ち味でもあるアグレッシブにファイトしたプレーできたのも良かったと感じています。最高の雰囲気をファン・ブースターが作ってくれて、僕たちは強いチームで居続けられるので、このホームでの強さを今後も継続していきたいです」
長崎のファンはもちろんのこと、全国のブースターに魅了したヴェルカスタイル。B1に昇格していきなり披露したこのスタイルが60試合、コート上で表現できれば、驚くほどの結果が待っているかもしれない。
文=鳴神富一