2025.03.21
「おおきなわ」で“沖縄をもっと元気に!”琉球ゴールデンキングスが進める価値ある地域活動
――まずは、琉球ゴールデンキングスの“沖縄をもっと元気に!”という活動理念について聞かせてください。
仲間)「沖縄をもっと元気に!」が我々の活動理念ですが、特に強調したいのが、“もっと”という部分です。沖縄はよく「人々が温かい土地だよね」とか「楽しい場所だよね」と言われたりします。すでに元気な沖縄を、我々がスポーツを通して“もっと”元気にしたいという思いです。活動をやり続けること、そのすべてが結果的に沖縄を元気にするものだと考えています。
――2006年クラブ創設当初から様々な取り組みを行っていて、2015年に「おおきなわ」と名付けられました。取り組みの変化はありますか?
仲間)大きいのがキングスのマスコット「ゴーディ(2007年アメリカ生まれ沖縄育ちのバスケットボールの妖精)」の存在です。クラブ設立時には契約しておらず、迎え入れたのが2015年でした。シーズン中はどうしても選手の稼働が難しくなってしまうので、ゴーディを迎えて、活動の幅や回数をより増やせるようになったことが大きな変化の一つです。
――先日、岸本隆一選手には子どもたちに対して強い思いがあると伺いました。選手やスタッフの皆さんの意欲や熱量をどのように感じていますか?
仲間)僕らがB.LEAGUEでずっと断トツの集客数を誇れているのは、 “沖縄をもっと元気に!”という理念の下で活動してきたからだと自負しています。
僕ら地方のクラブにとって、それを継続することがとても大切で、その重要性を全社員・全選手が理解していることを強く感じています。「おおきなわ」は地域活動ですが、マーケティングの観点でも「幼稚園や小学校、老人会などのコミュニティにしっかりと入る」ことを大切にしています。結果として集客につながり事業拡大にもしっかりと繋がる。取り組みを通じて、地域活動の重要性を再認識しています。

岸本隆一選手の「勝負飯」が沖縄県内の小中学校の学校給食にて提供され、提供日に合わせて沖縄市内の山内中学校では、岸本選手から子どもたちへ向けたメッセージ動画が届けられた
――「おおきなわ」では、活動案を公募していますね。興味深いものも多いのではないでしょうか?
仲間)コロナ禍以前は、クラブとして考えたことを実行していたのですが、終息後、募集を開始しました。皆さんからのアイディアとしては、運動会やラジオ体操の参加など、それまでは考えもしなかった地域イベントへの出演依頼がすごく多いですね。地域の方々から「子どもたちを元気にしてほしい」「イベントを盛り上げてほしい」という声が想定以上に届いていることは、非常に嬉しいことです。立派なお祭りでなくても、「朝の集会に出てほしい」でも、それで元気になってくれるなら、喜んで行きたいと考えています。
喜屋武)地域ということでは、離島からのリクエストも多いです。基本的に私たちは県内のどこでも訪問しています。沖縄県全域の皆さまにキングスを身近に感じていただいていてとてもうれしいですね。

訪問先の施設でじゃんけん大会をするゴーディー

石垣市の児童養護施設でのゴーディー
――アイディアに触れる中で、新たな発想も生まれそうです。
仲間)そういう面もありますね。その中で、個人的にも子どもに向けた取り組みを推進したいと考えています。特に思い入れがあるのは、ホームタウンドリームプロジェクトですね。沖縄は県民所得が低く、一見明るくて元気な子どもたちにも、そうした背景を持つケースが多いんです。私自身も似たような環境で育ったこともあって、子どもたちに夢を持ってほしいという思いが強いです。
――お話にでた「ホームタウンドリームプロジェクト」では、具体的にどんな活動をしていますか?
仲間)これまでに、アメリカに子どもたちを連れていきプロスポーツを体験させる「ドリームスタディツアー」、「ドリームスタディドリル」の配布、沖縄市の子どもたちと一緒にキングスグッズを製作する活動を実施してきました。ドリームスタディドリルはキングスで作ったドリルを沖縄市内にある小学校3年生全員にプレゼントするものです。これをはじめて8年が経過したので、現在の高校1年生の世代までは私たちのドリルを経験したことになるわけですね。

キングスとグループ会社の沖縄アリーナ(株)が製作し、ホームタウン沖縄市内小学3年生全員に毎年寄贈している「ドリームスタディドリル」が今年も選手たちから直接届けられた
喜屋武)沖縄市の子どもたちと、実際に販売するキングスグッズを製作する取り組みは今回で2回目となりました。中学生が案出しから始めて、自らデザインを描き、キングスのグッズとして完成させ、販売体験までを行いました。キングスのホームゲームで沖縄市の魅力を発信する「Enjoy Okinawa City Day」の日には、アリーナにいる8,000人以上のお客様の前でグッズを紹介し、実際にアリーナショップ店頭に立って接客をしました。その売り上げを寄付させていただいて、子どもたちの学習や環境の整備に利用いただくという活動です。


仲間)こちらは沖縄市内の児童館に通う中で生まれた取り組みです。児童館は、学校に通うことが難しいと感じている子が集まる場所でもあります。館長さんから子どもたちに大きな経験をさせたいという思いを聞いていました。それを受けて、与那嶺翼(琉球U18ヘッドコーチ)と共に、子どもたちにやりたいことや将来の夢を聞いたんです。「お金持ちになりたい」「月に行きたい」など、おもしろい意見が出ましたが、そんな中で実現したのが、グッズを作る企画でした。児童館の先生は、しっかりできるのかと心配もしていましたが、子どもたちが最後までやり遂げました。人生でこのような経験ができることではなかなかないと思うので、子どもたちにとっても原体験を作れたかなと思います。

8,000人以上の観客を前にグッズを紹介したときの様子(左)

実際に店頭で接客を行った様子
――話は変わりますが、1月25日、26日は「Enjoy Okinawa City Day」が開催されました。「おおきなわ」として関わる部分も多かったのではないでしょうか?
仲間)「おおきなわ」にも様々な活動があって、地域の皆さまと一緒に街を盛り上げるのもその一つです。「キングス商店街」は商店街の皆さんが名付けてくれたものです。元々コザ商店街と言われている場所ですが、夜、シャッターが閉まると机と椅子が出て、居酒屋みたいになるんですよ。商店街をより盛り上げていくために、今回の「Enjoy Okinawa City Day」の開催に合わせてキングスからちょうちんを贈呈して灯してもらいました。

喜屋武)沖縄サントリーアリーナが中心となって地域を活性化するというのが目的としてあるんです。私たちが沖縄市の魅力をどんどん発信して市外、県外のお客さまに来て楽しんでもらい、地域の皆さんとの交流もできたら、もっといいなと思っています。「Enjoy Okinawa City Day」は以前は、沖縄サントリーアリーナに観戦に来たお客さまに沖縄市を発信することが中心となっていました。4回目となる今回は、初めて沖縄サントリーアリーナに隣接するコザ運動公園での「沖縄市産業まつり」や、コザ商店街での「キングス商店街ナイト」と同日開催し、まつり会場でのイベントやキングスのお客さまを送客することで盛り上げました。その効果もあり、「沖縄市産業まつり」では昨年を超える7万5,000人の来場者数となりました。「Enjoy Okinawa City Day」は2022年から毎年開催していますが、年々、沖縄市や商店街、地域の皆さまとの連携も広がり、相乗効果が生まれているように感じています。


――ありがとうございます。最後に、「おおきなわ」の活動でどんなことを実現させていきたいかを教えてください。
喜屋武)今季は500回の取り組みを行う事を目指しています。また今はホームタウンである沖縄市を中心に活動していますが、“おおきなわ(大きな輪)”という名前どおり、市外や離島でもより積極的に活動を行いたいと考えています。特に普段、沖縄サントリーアリーナに来られないような子どもたちにも何かができればと思います。いずれにせよ、冒頭でお話した“沖縄をもっと元気に”が原点なので、地域活動をもっと広げていきたいですね。
仲間)「おおきなわ」について、僕らは地域貢献活動とは言わず、地域活動と言っています。貢献しているかどうかは自分たちの判断ではないですから。中身どうこうよりは、やり続けることが大切だと考えています。自分たちクラブは、土台にファンがいなければ成立しません。ファンがいるからスポンサーも付き、グッズも売れ、経済も活性化されます。 スポーツクラブとしての使命を感じてやり続けたいと思っています。
先ほどもお伝えしたとおり、子どもたちに夢を描いてほしいのです。今3つの活動がある「ホームタウンドリームプロジェクト」の種類を増やしたいと考えています。そのためには、僕らのアイディアだけでは足りません。800社以上あるパートナー様や行政とタッグを組んで、課題を一つ一つ解決していきたいですね。

取材協力:Bリーグ
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記事提供:月刊バスケットボール